71.仕上げ
「フハハハハ!順調だ!順調にここまで来た!」
デウグルーブは計画が始まった当初の事を思い出し笑う。
イコルセンテが思いついた作戦は緊急指名依頼を悪用した罠であった。
ダンケという人物はもちろん存在しない。
正体はアウトバーナーの衛兵隊に属する情報部の構成員であった。
その構成員にダンケという偽名を名乗らせてギルドに登録させたのである。
そこからは作戦通りに事は運んだ。
地下牢にはカイラ達三人が捕らえられ、さらには人質としてシルの両親も宮殿の一室に監禁されていた。
「あとは国際独立軍にコンタクトを取るのみだ」
「コンタクトはどうやってとるんだ?」
イコルセンテがデウグルーブに聞く。
「国際独立軍の本拠地に船を走らせてそのまま外交交渉に持ち込んじまおう。そうすれば向こう側は交渉カードがないまま交渉することになるから簡単な仕事になるだろう」
「なるほどな。確かにそうすればこちらの勝利は揺るぎないものになるな」
「「フフハハハ!」」
デウグルーブとイコルセンテは勝利を信じて疑わない。
そのせいで先ほどから笑みを浮かべっぱなしだったがこの笑みは翌日には消えることになる。
二人は自分たちの計画を推し進めるためにちょっと無理をしていた。
その最たる例がリーウェンの証書偽造である。
リーウェンの街中へアウトバーナーの衛兵を派遣するためには事前にリーウェン子爵の許可がいる。
しかしそんな許可が一日や二日で降りるはずがない。
そもそもカイラ達は不法行為をしていないので許可自体が下りない。
そこでデウグルーブはギルドの時と同じようにリーウェン子爵の領内の活動許可書を偽造しリーウェンの領内にアウトバーナーの衛兵を派遣したのである。
入る時に下っ端の衛兵にその偽造証書を見せればリーウェンの街に入れる。
そして出るときも確認はされるが街に入る時点で確認されているので厳重な検査は行われなかった。
そのため無許可でアウトバーナーの衛兵がリーウェン子爵領に侵入して活動することが出来たのである。
しかしここまで騒ぎが大きくなると子爵本人にも当然のように報告が上がる。
その時に「許可証なんぞ発行しとらんぞ!」とリーウェン子爵が言ったのでリーウェンでは大騒ぎになっていた。
こんなことはちょっと想像すれば簡単に思いつく話だが二人は目の前の成功に集中しすぎて周りが見えていなかった。
そして周囲の人間はギルドでさえ脅す男爵に逆らえるはずもなくアウトバーナーの暴走は止まらなかった。
しかし男爵家の兄弟はいまだに周りが見えておらず「どうやって交渉の場に国際独立軍を引きずり出すか」という問題に夢中である。
こうして激動の一夜が始まるのであった。




