70.事件の真相
「そうか。つながっていたか!」
デウグルーブはイコルセンテからの報告を聞いていた。
「ああ。しかも二人で奴隷商館から出てきたところを見ると大分仲がいいようだ。大分踏み込んだ情報を持っている可能性が高いぞ」
イコルセンテはカイラ達の最近の行動を報告した。
「国際独立軍の軍事力が手に入れば世界征服だって可能になる。これは是が非にでも手に入れなければならない」
「だが、情報を手に入れたところでうちには国際独立軍を相手にできるだけの力なんかないぞ?」
「そんな力はこの世界を見渡しても持っているところはないだろうさ。しいて言うなら最強の龍種なら国際独立軍に勝てるだろうが、あれの目撃例は300年前にあるだけで最近は絶滅したまで言われているんだぞ」
「じゃあ尚更どうやってその力をもらうんだ?」
イコルセンテはデウグルーブに聞く。
「今、この国と国際独立軍は同盟関係にある。しかも国際独立軍自らが国連という縛りを作ってくれた。この国連は国際的な紛争を対話による解決を目指す組織らしい。しかも国際連合加盟国基本法の3条に(加盟国同士の紛争の解決は対話によるものとし戦争などの軍事行為は認めない。ただし防衛目的の軍事行為はこの限りでない。)という文言がある。それを決めたのは国際独立軍だ。自分らが決めた戦争禁止の法律を破ってこの国に戦争なんぞしかけたら国連は意味をなさなくなる。何しろ自分で決めたルールを自分らは守りませんっていうことを諸外国に宣伝することになるからな」
「つまりどういうことが言いたいんだ?」
「つまりだ。カイラ達を人質にして脅す。浅からぬ仲らしいからお人好しのサトウは情報を流すだろ。しかもカイラ達は国際独立軍と仲がいいだけで別に国際独立軍の兵士というわけでもなければ国連の職員でもない。ということは防衛目的に軍事行為には当てはまらないから向こうは何もできない。そうなれば話し合いを行うしか向こうには選択肢がないが、あいつはまだ若輩者。しかも外交の場に登場したのはつい最近だ。外交力があるとは思えん。それで言いくるめて兵器の設計図をもらう。そうすれば我々が力を持てるということだ」
「確かにそれだったら可能性がありそうだな」
「だろ?で、イコルセンテに頼みたいことがある」
「あぁ何でも言ってくれ」
「カイラ達を犯罪者に仕立て上げアウトバーナーの衛兵隊に捕らえさせてくれ」
「なかなか難しいことを言うな」
「出来ないか?」
「ちょっと時間をくれ」
イコルセンテはしばらく目を瞑り考えた。
「いい案を思いついた」
そしてイコルセンテとデウグルーブはニヤリと笑った。
こうしてカイラ達の緊急指名依頼の罠が始まるのであった。