65.男爵宮殿
ガラガラガラ
馬車はアウトバーナーへ向けて進む。
「「「「「「、、、」」」」」」
馬車の中の空気は地獄そのものだった。
誰も一言も発さない。
カイラは下を向いて黙っているし、ムルは窓の外を見つめていた。両親をネタに脅されたシルは蒼白としていた。
馬車が止る。
そして馬車の戸が開けられた。
「ついたぞ。降りろ」
「ここは?」
「アウトバーナー男爵の屋敷だ」
カイラが開けられた戸から外を見ると壮大な宮殿が広がっていた。
「えらく豪華な宮殿にお住まいなのね」
カイラが皮肉交じりに言った。
「黙って進め!」
カイラ達は衛兵に言われるまま屋敷を進む。
「ここで待て」
カイラ達が通されたのは天井が高く、部屋の正面に段差があり、まるで国王の謁見室のような造りをした部屋だった。
ガチャリ
カイラ達が入ってきた扉とはまた違う扉から豪華な服を着た小太りの男が部屋に入ってくる。
「アウトバーナー男爵のご到着である!」
扉の横に立っていた衛兵が声を張り上げた。
男はそのままカイラ達のいる床から階段を五段ほど登って椅子に腰かけカイラ達を見下ろした。
「私がアウトバーナー男爵家当主のデウグルーブ・アウトバーナーである。余は国際独立軍の情報を必要としていてな。報酬は弾むから話してくれんか」
「話すことはないわ」
男爵の話をカイラはきっぱりと断った。
「しょうがない。本当はこんなことはしたくなかったんだがね」
男爵はわざとらしく残念そうな顔をした。
「こちらには二人の人質がいることを忘れるなよ。それに時間はたっぷりとある。話したくなったら衛兵に言いたまえ。そこの三人を地下牢に連れてけ」
男爵は言い終わると衛兵に促しカイラ達を部屋から退出させた。
隣の部屋から別の男が部屋に入ってくる。
「いやーここまで物事がうまく運ぶとうれしいもんだな」
「まったくだ」
男爵は答えた。
男はここでの会話を盗み聞きしていたようだった。
「この作戦がうまくいけば国を乗っ取るどころかこの世界の王者になれる。こんなチャンスを逃す手はないだろう」
「そうだな弟よ。貴様をギルドの幹部にねじ込んだ事が功を奏したわ」
「ダンケもうまくやったようだし第一段階は成功だな。あとはカイラがどこまで情報を持っているかだ」
「ガジス国王も男爵家を見くびりすぎたな。この国は俺たちの物だ!」
「「ふはははは!」」
男二人は大きな声で笑った。




