59.鍛冶屋の親方
「私が、リーウェンに行く」
俺に言葉が伝わっていないと思ったのかセルアータは続けて言った。
「いやいやいや。なんでそんな話になるんだよ。これは国際独立軍の仕事であって国連が関与する事柄じゃない」
俺はセルアータに向かって言った。
「サトウ。自分の立場分かってる?」
「立場?」
「あなたは今国際独立軍のトップ。そんな人が戦場に行ったらダメ。死んだらどうするの?」
セルアータは俺の目を見て聞いてくる。
「そ、それは、、、」
「それにあなたが居なくなったら国連も無くなるよ?」
「じ、じゃあスヴェートも連れていくよ」
「スヴェートさんも国際独立軍に属してるんでしょ?」
「スヴェートも国際独立軍に属してるよ」
「じゃあダメ」
「なんでだよ!」
俺は焦りからなのか気が立ち始め声が大きくなっているのに気づいた。
「冷静に聞いて。今の話だとこれはガジス王国内の事件。他国がどうこう言う問題じゃない。それに」
セルアータはそこまで言うと俺の顔に自分の顔を近づけた。
「国際独立軍は軍隊なんでしょ。軍隊が他国の領内で国内紛争に関わったら戦争になるよ」
セルアータは言い終わると元の距離に戻った。
「だから私が行く。でも国連の職員として行くんじゃない。私個人が私用で行くの。」
「俺が私人として行くのは?」
俺は落ち着いた声色でセルアータに聞く。
「サトウがもし国王だとして戦いが起きている街に他国の軍司令官がいて「私用です」って言われて信用できるの?」
「、、、」
俺の口からは言葉が出てこなかった。
「でも私は国連のただの事務員。それにあなたと違って魔法も使えるからもしもの時は自己防衛できる。だから私が行くの」
セルアータの顔をからは強い意志が見て取れた。
「はぁ。わかったよ。俺の負け。セルアータには無線機をもって情報をこっちに流してもらう。それでいいね?」
セルアータはうなずいた。
「今港でミサイル艇が出航準備をしてる。それに乗ってリーウェンに行くんだ」
俺は言った。
「わかった」
セルアータが答える。
「最後に聞かせてくれ。なんでセルアータはそこまでするんだ?セルアータには何も得はないだろ?」
「私はサトウの奴隷。奴隷がご主人様を助けるのは当然」
セルアータはそれだけ言うと港へと足を向け行ってしまった。
「はぁ」
俺は大きくため息をつくと作戦情報室へ引き返すのだった。
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トンテンカン。トンテンカン
リズムよく鉄をたたく音が部屋に響き渡る。
「親方。お客ですよ」
「見てわからんのか。今は鉄を鍛えてんだ。話は後にしてくれ」
ここはデリュート村の唯一の鍛冶屋。
親方と呼ばれた男は無精ひげを生やし大きくがっしりとした体中に汗を滴らせていた。
「それがアウトバーナーの衛兵さんなんですよ。なんでも娘の事で話があるとか言ってます」
「シルがなんかしたのか!?」
親方と呼ばれた男は娘の話と分かるとすぐさま手を止め弟子の方へ向き直った。
「いや、細かくは何も。ただ父親を呼べと」
「なんでもっと早くシルの事だと言わねぇ!」
シルの父親は工房の入り口にいた弟子を押しのけ工房から店の方へと入っていく。
そこには衛兵が8人ほど来ていた。
「はるばるアウトバーナーからどのようなご用件で」
「貴様がガルだな。娘の事で話がある。アウトバーナーの領主の館まで同行してもらうぞ」
「娘が何かしたんですかい」
「細かい話は後だ。すぐに来い」
衛兵はそれだけ言うと店から出ていってしまった。




