27.帝国始動
「アバジュル海軍中将。国際独立軍とやらはどうであった」
アルトパキア帝国。
謁見の間にてアバジュル海軍中将は皇帝に報告を行っていた。
「はっ。国際独立軍は海域の見回り船を一隻も航行させておらず警備はザルと思われます。しかし非常に速く動力が不明な小型船舶を有しておりガレオン船との一騎打ちでは分が悪いかと。あと威力偵察を実施した際当船を発見した方法が不明です。見回り船がなくても何らかの方法で確認を行っていると考えた方が良いかもしれませんが初動は遅いです。最後に敵司令官に会いましたが非常に細身の男でこちらに対する対応も甘い男でした。戦争をしても外交圧力に屈するのではないかと愚考いたします」
「そうか。報告ご苦労。ところで国際独立軍と戦争を行って勝てるか?」
「そうですな。ガレオン船100隻ほど向かわせれば制圧可能でしょう。なんなら数の多さに驚いて相手は戦う前に降伏する可能性すらありえます」
「では、海軍は国際独立軍の制圧。陸軍はガジス王国を攻撃。この二作戦を同時進行しても問題はないか?」
「私は海軍の人間ですので陸軍の戦力まではわかりかねますが海軍は可能と考えます」
「そうか。では明日会議室で作戦会議を行う。陸海軍両方の総帥を呼んでおいてくれ」
「承知致しました。」
~翌日~
「それではガジス王国並びに国際独立軍の制圧作戦を立案する」
皇帝の一言によって始まった御前会議は帝国の重鎮たちが顔をそろえていた。
帝国陸軍総帥。帝国海軍総帥。帝国治安維持隊隊長。各大臣などである。
ちなみに帝国治安維持隊とは日本で言うところの警察のような役割をもった部隊であるが重武装しており戦力でもあった。皇帝は作戦を立案すると最初に述べていたが作戦自体はもうすでにできておりそれぞれの軍隊や大臣がその作戦が遂行できるかというのを判断するのがこの会議の主な目的である。
「それでは作戦を伝える。帝国陸軍はガジス王国を制圧。制圧完了後はガジス王国にとどまり支配下に置いて本国からの指令を待て。帝国海軍は国際独立軍の本拠地を襲撃。その後ガジス王国方向に進軍。艦砲射撃を実施し帝国陸軍を援助せよ。敵民間人が抵抗した場合は皆殺しにして構わん。治安維持部隊は帝都に待機し万が一軍が敗北した際の最終防衛ラインとする。以上。意見があるもの述べよ」
会議室が静まり返った。
「では作戦開始は三日後。以上解散」
帝国ではこの会議終了後から急速に戦時体制が敷かれ戦争ムードが高まっていった。
ガジス王国。国王執務室
「陛下!報告します。帝国陸軍が戦争を始める準備を開始したと国境の騎士団から報告が入りました!」
「やはり戦争を仕掛けてくるか!騎士団を帝国国境沿いに向かわせろ。あと国際独立軍にもこのことを知らせ援軍を要請しろ」
「直ちに!」
報告の騎士が執務室を出ていく。
ガジス王国はいつかは帝国が戦争を仕掛けてくるだろうと考えていたためにサトウと手を結んだのだが国王は正直なところ戦力としてはあまり考えておらず捨て石程度の認識であった。
それは帝国も同じで国際独立軍なぞ簡単に勝てると考えていたために海軍は国際独立軍とたたかった後に陸軍の支援という作戦が成り立ったのである。
しかし戦争開始と同時に帝国とガジス王国は知ることになる。
国際独立軍の恐ろしさを。そして圧倒的武力を。