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その26

もう夜も遅いので、今日はうちに泊まって明日サルン家に帰る事にした。


「ベッド1つしかないから、フィーダが床で寝てよ」


「えぇ!?ラルーのお師匠のベッドがあっただろう?」


「先生の物は思い出すと悲しくなるから、必要なもの以外は全部、教会に寄附したの」


「マジでか…。本当にそーゆー所はオフクロそっくりだな!んじゃ、今日は、久しぶりに姉弟仲良く1つのベッドで寝るか!」


「あんた、本気で言ってるの?シングルベッドに大人二人なんて無理よ!!しかも、お互い、いい大人なんだから。絶対ダメ!」


「詰めれば大丈夫だって!」


そう言って、フィーダが無理矢理ベッドに入ってくる。


「あんたはレディのベッドに潜りこんで!!クラスが見たら殺されるわよ」


「きっと、ベイルにもね!

しかーし、ここにはクラスもいなけりゃ、ベイルもいない!俺はゆっくり柔らかいベッドで寝れるんだな!つか、狭いな。もうちょっと詰めれない?」


「落ちるつーの!あんた、やっぱり床で寝なさいよ」


「しょーがねーな、んじゃこうすれば文句ないよな?」


ぐいっとフィーダが私を抱き寄せ、腕枕をして反対の手は私の腰を抱いた。


「ちょっとフィーダ!近い、近いわよ!気持ち悪いわね!!!!」


「何いまさら照れてるの?昔はよく抱き合って寝たぢゃん!誰かと一緒に寝るって安心しない?暖かいしさ」


「昔は子供だったのよ、今は大人でしょ!しかも、いい年した姉弟が抱き合って眠るって気持ち悪い以外ないから!とゆー事で、フィーダ離しなさい!・・・フィーダ?」


フィーダを見るとスゥスゥと寝息を立てていた。


目を閉じて3秒で寝るとは、お前はの●太か!?

しかも、なんかこいつ・・・なんつーの?慣れてる?腕枕するのも凄い慣れた手つきだったよね…

人には男作らないよう言っておいて自分は遊び歩くとは、いい度胸じゃねぇーかぁ…


すやすや寝ているフィーダの鼻の穴に指を突っ込みんでやった。すると「プハー、プハー、」と激しくブサイクな顔で口から呼吸を始めた。


「ぷっっ!バカ面!」


フィーダのバカ面ですっかり戦意を無くしてしまい、仕方なくあきらめて、フィーダの顔を観察した。


昔の可愛かった顔は、今ではおじーさまに似た精悍な顔となっていたが父様譲りの垂れ目な所は昔から変わらない。そこがチャーミングだと婦女子達からは絶大な人気を得ていた。


クラスも成長と共に母様に似た美形になり、サルン家のクラスとフィーダと言えば誰もが「あの美形のハーフエルフ兄弟ね」とわかる程、若い娘さんから人気を博していた。


一方の私は、地味な顔から一転して美しくなった!


・・・っていう「みにくいあひるの子」的な奇跡なんかは起こらず、未だ地味な顔立ちだ。しかも、コンプレックスの元凶の赤毛は、益々濃くなり、今では深紅の色になってしまい、非常に目立つ。

一度、薬品で金髪にできないか試してみたが、どんな強い薬を持ってしても深紅の髪色は変わらなかった。今は髪を顎のラインで切りボブヘアーにして少しでも目立たない努力はしている。


しかも、瞳の色は、両目とも紫だったのに、まだパチーノにいた頃、魔法をつかってアレルギーに効く目薬の開発をしていて、動物実験が嫌だった私は、自分の体で実験を試みていた。

その時、作った目薬を右目に点眼してみたら、ものの見事に失敗していたらしく、右目だけが灰色へと変わってしまった。


なんとか元の色に戻せないか色々と試してみたが、一向に戻る気配がなかった。

セドリック先生の弟子になった後は、先生と二人で研究の間に元の色に戻す方法を模索した。


ある日、昔の文献を調べていると魔法を使いその影響が副作用として術者に跳ね返った場合、その魔法の副作用は一生モノで消えないという驚くべき事情を知った。



マジっすか…いや、本当にマジっすか……

誰かウソって言ってぇぇぇ!


三日三晩、私は泣いた。しかし、泣いた所で状況は全く変わらない。誰のせいでもなく、自分自身が行った結果なので、仕方なく自分の容姿を受け入れ今に至る。



思えば、子供の時に大人になったら赤毛から茶色の髪になるかも!とか、いつか美人になりたいと思って夢を抱いていたが、体が成長してみると、子供の時に願った事は気持ちいいくらいに叶えられなかった。


こんなにも叶わないのは、返って清々しい程。


でも、容姿への願望とは反対に薬学に興味を持ってから、家族の理解をもらい、やりたい事に没頭し、憧れの先生の弟子になれて、その技術と意思を継ぎ、薬を媒体にして人から必要とされる存在になれた。

私は、この仕事に対してやりたいと思った事は、色々つまづきながらもなんとか叶えられている。


悪い事もあったが、今のところ、これまでの私の人生に満足しているし、今の安定した生活が大好きだ。


そうして、毎日穏やかな気持ちで過ごしていたのに、今更ベイルとシャランに会って心を乱されたくはない。


しかも向こうは、私がこんな気持ちを抱いているとは全く思っていない事も知っている。

それだけに逢いたくない気持ちが強くなってしまう。しかし、家族が私の事を心配しているのも知ってる。


揺れ動く気持ちは、どうすればいいのかわからずに悶々と時間だけが過ぎていった。


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