転生少年は世界に惑う(後)
早く進めたいけど、どうにも文が出ないわ、あれも入れようこうしようと、グダグダしてしまいました。
サブタイトルは、前と後に分けました。
ここはおそらくレストラン的な場所なのだろう。
壁には、メニューらしきもの。
「ううう……」
俺は、分からない文字と格闘していた。
◇◇◇
「おーい、レジナー! 水三つ頼むわー!」
先程の男が、大声をあげる。
「アンタ、昼間っから飲み会でもするつもりー?」
「ちげぇよ! 普通の水だよ、今朝の奴らと俺の分!」
カウンターから水らしきものをトレイに載せた女性が、今俺達が座っているテーブルへ、近寄ってくる。
「何かを頼んだのか?」
色々考えたまま、なんとなく口から出た言葉。その言葉のおかげで俺の疑惑は、ほぼ確証へと変わった。
男と少女は、こちらを見てきょとんとしていたのだ。数秒後には、やらかしてしまった時に感じる恥ずかしさと、言葉が通じないという疎外感と焦りが頭を埋め尽くしていた。
(どうすればいい? 今の言葉は、ここでは煽りとかの意味では無いよな……?)
頭を抱える俺に、少女が何かを言っていたが、やはり理解はできなかった。
「あなたは……人間では無いのですか?」
◇◇◇
反応を返さない俺を見て、顔を合わせる2人。
「もしかしたら、呪いか何かなのでしょうか……」
少女が何かを言い、こちらへ向き直る。
『デマトラ』
「どうですか? 喋ってみてください」
「え…? 今なんて」
今の言葉、デマトラ。その後の言葉はさっぱりだったが、これだけははっきりと聞き取れる言葉だった。なにより、その単語を俺は知って――
「呪いの類いでは無いと……ではやはり、人間ではないのでしょうか」
いや、知らない……ハズだ。デマトラなんて初めて聞いた、と思う。
『エニフ・オアオフィオ』
「そりゃ何の魔法なんだ?」
「あぁ、えっと――」
何だって?
「魔法……?」
「そうです、魔法ですよ。 良かった、やっと話が通じますね」
魔法……! 魔法がある!? そして、ちゃんと理解できる!
「そ、そうだな。 なんで通じなかったんだろう」
「? あなたが人間じゃないからでしょう?」
ちょっとまってくれ。
「俺が人間じゃない?」
「だって言葉、通じませんでしたよね?」
確かに理解はできなかったが……。いやそんなまさか。
「ち、違う国の言葉とか……」
「違う国の、言葉? どういう意味です?」
「まさか、人間の言葉はこれだけ……なのか?」
「何だよ、他にあるってのか?」
俺の中では微かに残っていた、ここが異世界ではないという考えの最後の砦が今、粉々に砕け散るのであった。
◇◇◇
「大事な話してるみたいだけど、注文は水だけなのかい?」
先程の女性がいつの間にか、テーブルの傍におり、俺達の前に水を置きながら、男に注文を尋ねていた。
「あぁ、すまねぇ。ピグマール肉焼き頼むわ。三つ」
「アンタ、いっつもそれだねぇ。飽きないの?」
「うるせぇ。嬢ちゃんが腹空かせてっから出来るだけ速くな」
「うぅ……」
男の言葉に顔を赤らめる少女。魔法とかいうから、冷たい魔女的なやつかと思っていたが、結構そうではないらしい。
「で、だ。人間っぽ過ぎるから忘れかけてたが……お前、何者だ?」
「何者って、そんな俺は人間……」
「嘘を吐くな」
「吐いてない! ……多分」
そう。ここは異世界で、俺は多分、転生か召喚をされたのだと思う。その際に、別の種族なりに変わってしまっていたという可能性も無い訳ではないのだ。
だけど、自分の手や足を見る限りでは、鋭利な爪は無いし、水かきもない。俺が18年間見てきたものとほぼ同じである。さっきはもしや、と考えてしまったが、目の前の二人が人間だというならば、おそらく俺も人間のはずだ。
と、そこで、こちらをじっと見つめていた少女が口を開く。
「どうやら、嘘は言っていないようですね」
「そうだな、じゃあお前が人間だとして、だ。何故俺達の言葉が分からなかった? 読み書きならまだしも、話すら出来ないなんてまともじゃねぇ」
「その事なんだが……異世界転生、もしくは異世界召喚って言葉はあるか?」
やっと意思疎通の図れた黒谷。
次回はもうちょっと動きがある……といいな。