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童顔魔術師との邂逅

「やぁ、殿下。さっそく見つけましたか。ふふふ、絶対いると思ったんですよね~。僕の勘もたいしたものだな」

 庭の片隅でしゃがんでいる王子の背後から現れたのは、ローブ姿の背の高い影だった。くせの強い黒髪をだらりと伸ばし、全身灰色の服に緑の瞳が鮮やかである。年の頃は十代半ばに見えるが、ここに来て3年経つのに、いっかな成長した感じがしない。

「あ、童顔の魔術師さま……」

「何それ。初対面で酷くない?」

「申し訳ございません、つい」

「これでも25なんだけど!」

「えっ」

 見えない。ぜんぜん見えない。だいたい、25でこの態度はない。王子殿下の前だというのに、言動が雑すぎるのではないのか。リリアナの心の声が聞こえたのか、魔術師は実に機嫌が悪そうに言った。

「何でそこまで驚くんだよ。ほんのちょっと顔立ちが若いぐらいで。この妖精め。僕はアドリアン・ターナー、将来有望なエリート魔術師だよ。そっちは?」

「リリアナですわ、魔術師さま」

「じゃあリリアナ、殿下のご友人になった記念に、なんか食ってけばいいよ。何がいい? もう指先が消えかかってるぞ」

 アドリアンと名乗った魔術師は、妖精めなどといいながら、リリアナを見下しているわけではなさそうであった。それに、妖精について多少の知識はあるようでもある。リリアナたち妖精は、一定の存在力を摂取し続けないと、人間に姿を現し続けることはできない。だから何か食べろというのだ。

「何がいい? 宝石も多少は用意できるが」

 存在力を、もっとも効率よく摂取できるのは、実は宝石・鉱石の類いなのだ。本当に、この童顔魔術師はよく知っている。リリアナにしてみれば、少々気味が悪い。魔術師の力は、妖精にはまったく影響を与えないので、お互い不干渉が基本なのだ。どこからこのような知識を仕入れたのだろうか。

「宝石だなんて。そんなに要りませんわ」

 宝石の粉を、ほんのひとつまみだけでも、普段リリアナが摂取している量の一年分くらいはある。妖精の社会では、余分な存在力は身を滅ぼすというくらいだ、多すぎても逆に迷惑だ。まぁ、なかにはそれが好きなものもいるようだが。

 この答えは、魔術師の好みに沿っていたようである。偉そうにニヤニヤ笑っている。意味が分かって言っているのだろう。まったく、どれだけ妖精知識を溜め込んでいるのだか。

「ふん、悪くないね、実に悪くない」

 そうこうしているうちに、リリアナは、腕まで色が薄れて見えなくなってきた。魔術師はともかく、王子さまが動揺してちょっと泣きそうになっている。見えなくなるだけで、消えるわけではないのだが、説明がちょっとむずかしい。リリアナは、お言葉に甘えて角砂糖をひとつ、頂くことにした。

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