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22.告白

「似合わないのは承知してる。五子の俺がまさか公爵位を継ぐことになるとは思ってもいなかったしな。でも、これで父さんの無念も晴らせるんじゃないかと考えて、継ぐことにしたんだ」


「似合わなくなんかないよ! ペールなら、きっと上手くやれると思う」


 リヒーナにはそれが確信できた。


「だといいけどな。それで、返事は?」

「え?」


「俺のところに来い。いいだろ?」


 ペールの視線と言葉がまっすぐリヒーナへ届く。

 その言葉に、心臓が跳ねる。


「わたしでいいの?」 

「よくなかったらこんなこといわないさ。俺と一緒にバロウに行こう。もちろんルッチェも一緒にな。俺はルッチェの腕もかってるんだ」


 ペールの言葉は、すごく嬉しい。でも――。


「ひとつだけ確認させて」

「なに?」


「それは、本当にわたしたちの演奏を聴いて決めてくれたことなの? もしペールが、わたしたちの能力じゃなくて、事情を慮ってそういってくれてるんなら、わたしは受けることができないよ」


「リヒーナ……」

「だから、正直にいってほしいの」


 リヒーナが真剣に訊いているのに、ペールはぷっと吹き出した。


「さっきの俺の話を聞いてなかったのか? もちろん、演奏を聴いた上で決めたんだ。俺の宮廷におまえたちの音がほしい。技術的な面ではまだまだ未熟な部分が多いから、その点は、しっかり練習を重ねてもらうことになるけどな。わかったか?」 


「本当に?」

「ああ、本当だ」


 深く頷くペールの様子を見て、リヒーナはようやく信じる気になった。


「わかったよ。ありがとう、ペール。わたし、バロウへ行く! ……ルッチェにも教えてあげなきゃ!」


 宮廷音楽家になれるだけじゃなく、これからもペールと一緒にいられる。

 そんな夢のような話があるわけないと疑ってしまったけれど、信じてもいいんだ!


 リヒーナは嬉しさのあまり、思わずペールに抱き着く。


「リヒーナ!?」

「ありがとう」     


 ペールの胸に顔をうずめたままもう一度お礼をいうと、優しく頭をなでられた。


「俺の宮廷だ、誰にも文句はいわせない。だからリヒーナ、もしそうしたいのなら、髪を伸ばしてもいいんだぞ」


「え?」


 思いがけない言葉に、顔を上げる。


「短い髪もいいと思うけど、リヒーナは長い髪も似合うから、さ」


 鼻の先をぽりぽりと掻きながら、ペールがリヒーナから目を逸らしつついう。


 まさかリヒーナの髪のことまで気にかけてくれているなんて思わなくて、でもそんな優しさがすごく嬉しい。

 しかも照れている風なペールの様子がなんだか愛しくて、リヒーナはペールの背中に回した手にぎゅっと力をこめて抱き占めた。


「ありがとう。大好きだよ!」


「……俺も好きだよ。リヒーナのシャルマイが」

「え!! シャルマイだけ?」


 シャルマイだけでも好きになってもらえたら嬉しいけど、でも、でも……。

 と心の中でもやもや考えていると、ペールがくすりと笑みを零した。


「あと、リヒーナのことも」


 まるでおまけみたいにつけ足された。

 もう! と、思わずとがりそうになった唇に、そっと柔らかいものが触れる。


 え!? ええっ!?


「リヒーナが好きだ」 


 不意打ちのキスと、耳元で囁かれた甘い声に、リヒーナの思考は完全に停止してしまうのだった。


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