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人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜  作者: 犬型大


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閑話・隣に立つと決めた日5

 ルフォンが戻り、村全体が安堵する裏でリュードは瀕死の重体に陥っていた。

 ひどい怪我を負った上に膨大な量の魔力を使い果たして非常に危険な状態だった。

 

 ヴェルデガーが回復魔法を使って処置をしたがそれでも足りず、リュードは村の医者のところまで運び込まれていた。

 本当ならリュードの面倒は自分で見たいヴェルデガーだったが治療は他の者に託してルーミオラの治療薬作りに入った。


 他にルーミオラの治療薬を作れる者はいない。

 ディグラ草のつぼみの消費期限が短くすぐにでも治療薬を作り始めねばいけなかったのだ。


 メーリエッヒはメーリエッヒであの子ならきっと大丈夫とヴェルデガーの心配を一蹴し、ルーミオラの看病を続けた。

 なのでリュードには責任を感じて号泣するルフォン付き添っていた。


 魔力が多すぎるリュードは無くなった魔力が回復し始めて容態が安定するまでに3日かかった。

 その後2日が経ちルーミオラの治療薬が完成した。


「まだ何回か薬を飲む必要があるとは思うけれどもう峠は越えた。大丈夫だろう」


 ちゃんと薬の効果は現れた。

 午前に薬を飲んだルーミオラは午後には起き上がれるようになっていた。


 ルーミオラの手を取ってウォーケックは何度も感謝と安堵の言葉を繰り返していた。


「もう、恥ずかしいじゃない。……それにあの子は?」


「ルフォンなら、俺たちの英雄のところさ」


 英雄とは。訳の分からないといった顔をするルーミオラにウォーケックは何が起きていたのか説明した。

 ツキベアグリーを倒して、ルフォンを救った当の本人はルーミオラの治療薬ができてからさらに2日後に目を覚ました。


 頭の中がボーッとしているのに、まるで何かに叩かれているかのようにガンガンとして気持ちが悪い。

 1週間ぶりに開かれた目は霞んでいてよく見えなかった。

 

 真っ白な天井を見ていると転生する前に戻ってきて事故のせいで病院に入院しているのだと、そんなことをリュードに思わせた。

 何回も瞬きして視界がしっかりと見え始める。

 

 同時に時間が経って頭も動き始めたのか思考がはっきりとしてきた。

 頭を傾けてみるとベッド横に黒い何かがいた。


 リュードが動いたことに気付いたのかベッドに突っ伏して寝ていたそれが頭を上げた。


「ああ! よかった、目を覚ました……」


 それはルフォンだった。

 よほど泣いたのか目が赤い。


 リュードが目を覚ましたことでルフォンの目に涙が溜まっていき、流れ出す。


「よかった……よかったよぅ……」


 ルフォンが泣いているので何か声でもかけてあげたいのに口の中がパサパサに乾燥していて喋れない。


「私のせいで、こんな怪我して、ごめんね。絶対怒って……るよね?」


 不安げな表情でリュードを見つめるルフォン。

 リュードが何も言わないことを怒っているのだと思い込んでいるがただ話せないだけである。


 今は話せないので行動で示すしかない。

 ずっと手を伸ばし、ルフォンの頬に触れるとビクッとルフォンが反応する。


 何も叩くつもりはない。

 親指でそっとルフォンの涙を拭って首を横に振る。

 

 出来るだけ柔らかい表情を意識してルフォンに微笑みかけてやる。

 ルフォンが何を思ってあんなことをしたのかリュードも理解している。

 

 ツキベアグリーがいたのは運が悪かっただけでしょうがないことである。

 怒ってないよ。


 行動で十分それを伝えられたと思う。

 リュードの優しい微笑みを見て、ルフォンの胸が高鳴った。


 涙を拭われたところから熱が広がり顔が熱くなる。

 何故なのか急にリュードの顔が見られなくてルフォンは顔をリュードから背けた。


「ルフォン」


「あ、う、うん、なーに?」


 不自然に顔を背けたままになるけれど今のルフォンにこの状態に対処する術はない。

 声を聞くだけでまた胸が大きく鼓動する。


「水を……くれないか?」


 何とか絞り出した言葉。

 

「み、水! 水、持ってくるね!」


 妙にメリハリがきいたというか、ギクシャクしたような動きでルフォンは水を取りに部屋を出ていった。

 程なくして部屋に戻ってきたのはルフォンではなく医者の男性だった。


「はい、水」


 水がなみなみと注がれたコップを受け取って一気に飲み干す。

 体に染み渡るようで水が美味しい。


 もう1杯水を入れてもらってそれも半分ほど一息に飲む。


「ぷはぁ……生き返るぅ!」


「ははっ、まだ様子見が必要だけどその分なら大丈夫そうだね」


 リュードの様子を見て医者が笑う。

 酒を飲んだおっさんのような、子供らしくない態度が面白かった。


「あの、ルフォンは?」


 少し落ち着いてきたリュードが医者の後ろを確認してみたりしたけれどルフォンはいなかった。

 水を頼んだのはルフォンになのに、どうして医者の方が来たのだろうか。


「ルフォンちゃんね……ちょっと今は君の両親でも呼びに行ってもらっているよ」


 リュードの質問に答えにくそうな医者。


『なんだかね、いきなり、シューナリュード君の顔が見られなくなっちゃったの! すっごい胸がドキドキして、顔が熱くて、私、変な病気かな……』


 水を取りに来たルフォンが医者に言った。

 医者でなくともすぐにその病気が何なのか分かった。

 

 病気であって病気でない。

 その病気については医者は専門外であるし、何か変なアドバイスもできないと思ってルフォンを使いにやった。


 水をもっていかせて2人きりにするか悩んだがルフォンに考える時間をあげたくてリュードの両親を呼びに行ってもらうことにした。

 ヴェルデガーとメーリエッヒはルフォンの知らせを聞いて飛んできた。


「このバカ息子!」


 言葉とは裏腹にメーリエッヒの抱擁は優しい。

 怪我をしたリュードをいたわって力をぬきながらもギュッと抱きしめる。


「ごめんなさい」


 気丈そうに振舞っていたメーリエッヒだったが内心心配でたまらなかった。

 リュードも恥ずかしいやら申し訳なくてバツが悪いやらでどんな表情をしていいか分からない。


 ヴェルデガーも叱ってやろうと思っていたけれど元気そうなリュードの姿を見てそんな気も失せた。


「無事目を覚ましてくれ良かったよ」


 部屋にはお隣さん一家も来ていた。

 すっかり回復したルーミオラはもう歩き回れるぐらいにもなっていたのである。


「ありがとう、シューナリュード君」


「ありがとう、話は聞いたわ」


 ウォーケックとルーミオラの2人が頭を下げ、後ろに隠れていたルフォンもあわせて頭を下げた。


「そんな、頭をあげてください……」


 大の大人に頭を下げられてどうしたらよいか分からない。


「いや、君は妻とルフォンの命の恩人だ。私たち人狼族は受けた恩を忘れず必ず返す。


 何にか望みがあったらいつでも言ってくれ。

 いつでも君の力になると誓おう」


「私と娘も同じよ」


「分かりました。ありがとうございます」


 変にいいですとかいうとめんどくさそうなので素直に受け入れておく。


「まあうちの娘をお嫁さんに欲しかったら私は恩とかなしに賛成だから言ってね」


「お母さん!」


「ルーミオラ!」


 ウインクしながら言ったルーミオラの言葉に反応して2人の悲鳴のような声が重なる。

 ルフォンの顔は真っ赤になっていた。


「ちゃんと本人の意思は尊重するわよ」


「そういうことじゃ……」


 リュードとルフォンの目が合う。

 ルフォンはすぐにルーミオラの後ろに隠れてしまいリュードは首をかしげる。


「ふふっ、本人の意思次第よ」


 この日以来お隣さんとの距離は縮まった。

 そして心情の変化があったルフォンはリュードについて回り、外にも積極的に出るようになった。


 ルフォンはリュードをリューちゃんと呼び、それに影響されるようにメーリエッヒとヴェルデガーもなぜかリューと呼ぶようになっていったのである。


 お嫁さん。

 その言葉はルフォンの頭の中で妙にこだましていた。

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