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星屑採集士【夜空に溶けた願い】

「流れ星に三度願いを唱えれば、必ず叶う——」



人は古くから、そんな甘美な伝説を信じて夜空を見上げてきました

けれど、本当は少し違います



人々の切なる願いを叶えるのは


一瞬の光を放つ流れ星ではなく、夜空のベールからこぼれ落ちた「小さな星屑」なのです



ぼくは、その星屑たちを集める『星屑採集士』



誰にも知られることなく、静寂に包まれた夜の世界を彷徨います


露に濡れた草花の上、深い森のヴェールの中、そして月明かりを映す湖のほとり



地上に舞い降りた星屑たちは、眩しい朝日を浴びると、朝霧のように儚く消え去ってしまいます


だからこそ、夜が白み始める前に彼らを見つけ出し、優しく磨き上げ、再びあるべき夜空へと還してあげる


それが、ぼくの密やかな使命でした


あるビロードのように美しい夜のこと


私は、サファイアのように青白く透き通る、一粒の星屑を見つけました


そっと両手ですくい上げ、手のひらに乗せたその瞬間、鈴の音のような小さな声が心に響いたのです



「あなたの願いをひとつだけ叶えてあげましょう」



ぼくは思わず息をのみました。星屑は、儚い光を明滅させながら続けます


「——けれど、あなたの願いと引き換えに、私はもう二度と、あの美しい空へは帰れなくなるのです」


ぼくは押し黙りました


争いのない世界、病の癒やし、満ち足りた明日……


祈るべき願いなら、夜空の星の数ほど溢れてきます



しかし、この輝く一粒の星屑は、私の身勝手な願いの代償として、永遠に故郷である夜空を失ってしまう



ぼくは、冷たくも温かいその星屑を、愛おしむようにそっと包み込みました


「……あなたは、あの空へ帰りたい?」



静寂の中、星屑は私の手のひらで、小さく、けれど確かに震えました


「……うん」


その、かすかな響きだけで十分でした

私は両手を高く掲げ、祈りを込めて星屑を夜空へと放ちました


青白い光は音もなく天へと昇り、やがて銀河の瞬きの中へと、優しく溶け込んでいきました


その夜、世界にささやかな魔法が降りました


理由もなく、心温まる優しい夢を見た人々


いがみ合いを忘れて手を取り合った兄弟 


遠い日の記憶に目を細め、微笑んだお年寄り


そして、悲しみの涙を拭って前を向いた少女


ぼくは、誰もが望むような大きな願いは叶えませんでした



それでも、世界はほんの少しだけ、真珠のような優しさに包まれたのです


私は今宵も、星明かりを頼りに夜の野を歩きます


誰かの願いを叶えるためではありません


迷子になった星たちが、愛する帰る場所を永遠に失ってしまわないように


見上げれば、果てしない夜空


そこには今日も、帰りを待ちわびる星たちと、空へ還る時を待つ小さな光たちが息づいているのだから

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