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血の航海、鉄の証言

海都クナーに、またしても重苦しい報がもたらされた。


三ヶ月前にクナーを出港したスィニ商会の北海航路を巡る大規模船団が、海上で武装船団の襲撃を受けたという。到着地であるゴレ大陸・ロヴズ藩王国の港にたどり着いたのは、出発時の三分の一にも満たない数の船に過ぎなかった。


その報を受けて、クナーのギルド本部では緊急会議が開かれた。


「生存者の話では、襲撃は組織だった動きで、船団の航路を完全に読んでいたようです。使われたのは旧式の軍艦型船……おそらく、どこかの海賊勢力が再編されたものかと」


ギルドの調査員が報告を終えると、スィニ商会側の使者が重々しい面持ちで頷いた。


「我が商会でも、被害船の記録と通信文の解析を進めております。ですが、正直、ここまでの損害は想定しておりませんでした」


ロヴズ藩王国の冒険者ギルドも調査に加わり、襲撃犯の出自と戦術、被害状況の詳細な分析が行われているという。


エミリー・フラーはその報告を静かに聞いていた。あの時、ギルドから送り出した百名を超える冒険者たち。その多くが、今も生死不明のままだ。


「……我々は、失われた命のためにも、この件を曖昧にはできません」


ギルド代表者の言葉に、スィニ商会の使者も頷いた。


両者の協議の末、ギルドと商会は情報を統合した詳細な報告書を作成し、ロヴズ藩王国の宮殿に提出することが決定された。提出先は内務卿。北海航路の安全維持を国策として強く訴えるためである。


報告書には、以下の陳情が明記された:


・北海航路上における定期的な哨戒の実施


・武装勢力への討伐作戦の編成


・生存者の捜索および支援


・船団出発時の安全保障体制の見直し


スィニ商会とギルドの連名による陳情は、王国の大きな収入源である貿易を揺るがす事態として、王国上層部に大きな波紋を広げることになる。


クナーの港に立つエミリーは、遠く、波濤の向こうを見据えていた。


──また一つ、忘れてはならない責任が、肩にのしかかっていた。

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