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百合転生〜絶対に落ちてくれないメイドの神作と、異世界で結婚を目指す!?〜  作者: 小坂あと


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勇者様、登場…?






 ギルドに到着してすぐ、神作は報酬を受け取りに行った。

 待ってる間、私はウェルカムドリンクを飲みつつ、なんとなくキャリカの姿を探した。彼女はいけ好かないやつだけど、暇潰しの相手にはちょうどよかったから。

 だけどいくら見回しても姿は無くて、もしかしたらもう来ないのかなー……だとしたら悪いことしちゃった、なんて落ち込んでいたら、


「……君、かわいいね」


 鋼鉄の鎧を身にまとった金髪の男が“いかにも”な言葉で声を掛けてきた。

 くだらないナンパは無視をしようと、グラスに口をつけて無反応を貫き通していると、男は肩を竦めてテーブルに手をついた。


「もしかして、この俺を知らない?」


 聞かれた質問には首を縦に動かすことで返せば、やれやれと言ったように目元を押さえた後で、仰々しく胸を張り腰に手を置く。


「俺の名は、フォルシュ・ダミアン。この世界の英雄――勇者さ」

「……勇者?」

「ようやく興味を持ってくれたみたいだね。嬉しいよ」


 彼自身に、というよりは“勇者”という単語に反応しただけなんだけど、何を勘違いしたのか嬉々として手を握られる。

 振り払うようにして手を離させ、それ以上は触られないよう腕を組んで顎に指を置いた。

 確か、勇者は神作のはず。……サンクチュアリで初の勇者だと祭り騒ぎだった事を忘れるはずもなく、じゃあ今目の前で勇者を名乗るこの男は…?と疑惑は膨らむ。

 もしかして、勇者はひとりじゃないとか?あくまでも役職だから、適性がある人間には何人でも振り分けられるのかも。テイマーだって、私だけじゃないもんね。

 だとしたら彼の言ってる事に間違いはなくて、あの後もう一人の勇者が誕生したと考えれば、何も不思議なことはない。


「それで?勇者様が、私になんの用かしら」

「話が早くて助かるよ。君をぜひ、俺のパーティに招待したいと思ってね。どうかな?」

「パーティ?」

「ああ。ギルドでは最大四人でクエストに出かける事ができるんだ。受けるたび人を集めるのは大変だからね、予め四人組を作ることが多いんだよ。そこに、君も加わってほしいんだ」

「悪いけど、私にはもう仲間がいるから。他を当たって」

「仲間って……あれだろ?メイド服を着た女」


 受付で話をしている神作の事を親指の先で雑に指した事もそうだけど、何よりも“あれ”扱いされたことに苛ついて口元を痙攣させる。


「君が望むなら、あの使用人も仲間に入れてやる。だから、俺のパーティに入らないか」

「結構です。だいたい、なんで私を誘うわけ?」

「それは、君が美しいからさ」

「は?」


 呆気にとられた私の手を取って、跪いた彼は手の甲に向かって唇を落とした。

 触れる前に引っ込めて、警戒心を高めて睨みつけたら、ダミアンは眉を垂らして微笑んだ。


「勇者のパーティに、華は必要不可欠だろ?この俺に相応しいのは、まさに君だと思って声を掛けたんだ」


 どこか上から目線な口説き文句をつらつらと並べられても、靡くわけがない。むしろくだらない理由に、呆れた吐息さえ出てくるくらいだった。

 どう断ろうか悩んでいたところへ神作が戻ってきて、彼女はダミアンと私を交互に見て小首を傾げていた。


「李瑠様、この方は」

「なんか……パーティに入らないかって誘われてて」

「なるほど。そういうことでしたか」


 いつでも庇えるようにか、私の肩に手を置いて僅かばかり警戒心を見せた神作に、ダミアンは誰が見ても爽やかな笑顔を見せる。


「俺の名はフォルシュ・ダミアン。ちょうど今、彼女をパーティに招待していたんだ」

「……そうですか」

「君も、仲間にしてやるよ。勇者のパーティになれるんだ、誇らしいだろ?」

「勇者?」

「ああ。つい最近、初の勇者が現れたって聞いてないか?ウォーリアル中、そのことで持ちきりだぞ」

「え?それって、かみ…」


 初の勇者は神作でしょ?と言おうとした私の口元を掌で覆って、自分の口元に人差し指を立てた神作は何を企んでいるのか。


「これはこれは、勇者様。お誘いいただき、光栄です」


 丁寧な動作でお辞儀をしたのを見て、ダミアンは満足げに口角をつり上げた。


「ぜひご一緒させてください」

「いいだろう。だが、お前はあくまでもおまけだ。くれぐれも足を引っ張るなよ」

「はぁ?ふざけ……んんぐ」

「はい。尽力致します」


 神作に対して随分と見下した態度を取るダミアンに文句のひとつでも言ってやろうかと口を開いたら、またやんわりと塞がれてしまった。

 ダミアンは承諾されたことに安心して「他の仲間を連れてくる」と一旦捌けた。

 その間に、いったい何を考えてるのか分からない神作に声をかける。


「ちょっと……いいの?あんなやつ仲間にしちゃって」

「せっかくですから。異世界交流といきましょう」


 どうしてか楽しそうに笑った顔を見て、神作がいいならいいか……という気分になっちゃって、流されるがままダミアンのパーティに加わった。

 他にもいると言っていた仲間は、屈強で傷だらけな肉体を持った坊主のドンと、気弱そうな少年のケン、このふたりだった。


「よ、よろしく…」

「女がふたりも入るとは……こいつは夜が楽しみだな」

「ドン、彼女には手を出すなよ」

「チッ……よろしくな、ダミアンの彼女さん」


 “彼女さん”、その一言に固まる。

 ちょっと……神作の前でそんなこと言わないでよ。と言いたいのに、相変わらず喋ろうとすると口元を押さえられて何も言えない。

 肝心の神作は、細目でにっこり笑いながらノーリアクションで何にも触れなかった。

 こちら側のただならぬ雰囲気を感じ取ったんだろう、ケンが情けなく眉を垂らしてオロオロと私達とダミアン達を何度も往復して見ていた。


 こうして始まった“異世界交流”は――お察しの通り、波乱の幕開けである。

 

 



 




 

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