写真家に俺はなる!
アルトの要望は残念ながら叶えられそうにないが、引き続き俺は3枚目を読んでいく。
【アスタリオンさんの高い高いが高すぎる件について】
フィンとフィアがいつも公園でアスタリオンさんに遊んでもらっているのですが、先日高い高いをしてもらったところフィンは漏らして、フィアは失神して帰ってきました。
本人たちは怖かったけどまたやってもらいたいと言っており、母親としては危険なのでせめて高さ制限を設けて頂けると嬉しいです。遊んでもらっている手前私からは言いづらく、春樹様から一言言って頂けるとありがたいです。
「これはシルヴィアからだが、アスは加減を知らないのか全く。初めて聞いたぞ、高い高いが高すぎるなんて」
俺は最近元々使っていたスマホから乗り換えた魔導スマホでアスに電話を掛けた。
『どうしたのだ春樹よ』
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど、フィンとフィアを空高くまで飛ばしたの?」
人生で1度も言わなさそうなセリフだが、聞き方がこれしか思いつかなかった。
『うむ、子供は高い高いが好きだろう?悪魔の赤ん坊もこれをすると皆泣き止んでいた』
怖すぎて泣けないの間違いじゃないだろうか。というかそれは失神してるだろう。
「そうか……今後の高い高いはアスが頑張ってジャンプした高さぐらいまでにしておいてくれないか」
『む、それだと10メートルぐらいしか飛べないがいいのか?』
「それはだめだな。両足が怪我で重症な時ぐらいならどうだ?」
『それなら3メートルぐらいしか飛べないぞ』
それでも3メートルは飛べる身体能力に俺はもはや返す言葉が思いつかないが、3メートルぐらいならまだフィンとフィアも大丈夫だろう。今後はその高さで高い高いをしてくれると助かる。
電話を切った俺は既に3枚の要望でお腹いっぱいだがもう1枚残っている。
比較的何もありませんようにと祈りながら俺は4枚目を開いた。
【絵師を辞めます】
「もはや要望じゃなく、決意なんだが。……それにしてもこれは元王宮お抱え絵師のデュークだな」
デュークは従者の中で1番といっていいほどの自由人だ。
このユグドラシルに来て気付けばふらっとどこかに行き、いつの間にか帰ってきたと思ったらガンナーたちが専用に作ってくれた工房に引きこもる。
俺や他の従者たちもあまり顔を合わせたことがなく、てっきり引きこもって絵を描いているのかと思ったのだが……
「さて、何が書いてあることやら」
私は元お抱え絵師ですが、この箱庭に来て魔導スマホやカメラという文明の利器に出会い雷に打たれたような衝撃を受けました。
絵を何日もかけて描く時代は終わり、これからは1秒で美を切り取る時代です。
つきましては今後、子供たちの箱庭新聞の専属カメラマンとして活動したく、フィルム代や現像費を『領主の煩悩費』の予算から落としていただきたいのですがいかがでしょうか?
「おい、ちょっと待て。ツッコミたいところは何個かあるが領主の煩悩費とは何だ」
俺はセバスを問い詰めた。
「ジークと私で決定致しました。可愛いメイドを当てるためのオーダメイド品や、爆死するたびにオークションなどで買っているグラビアアイドルの写真集という物、これらは全てご主人様の煩悩費という名の経費で決済しております」
知らなかった……というかなぜグラビアアイドルの写真集を買っていることがバレているのだろうか。
それに俺はたまにしかネットオークションを使わないし、てっきり俺の小遣いから支払っていると思っていたのだが、その小遣いが裏では領主の煩悩費と呼ばれてることなど俺は知りたくなかった。
とりあえず俺はセバスにデュークの写真家としての活動を了承することの言伝を頼み、初めての意見箱確認作業を終えた。
何故か要望ではなく裏で領主の煩悩費というものがあることに俺はダメージを食らったが、毎週このような要望や意見が来るのだろうか……?
俺は胃が痛くなりそうな予感を感じながら、ポンコツハイエルフの昼寝場所を探す羽目になったのだった。




