伝説のツルハシ
「春樹、こっちの梱包は終わったぞ」
「私の方もこれで全部終わりました」
俺たちは今、売れた商品の梱包作業をしていた。正直初めての出品だし開始価格も高めに設定したことでそこまで期待していなかったのだがほとんどが売れてしまった。
それは嬉しくていいことなんだが……
「ずっと気になっていたんだけど、そのアスが付けている兎耳カチューシャは何?」
「次、エリーが販売しようとしている商品の効果を確認中だ。俊敏上昇の効果がつく」
そんな真面目な顔して言われても兎耳カチューシャが気になって全く内容が入ってこない。
「それでエルは……?」
「これはローブの背中に漢字の刺繍を入れた商品です。ちなみに私の背中には『社畜』と入っていて、効果は魔力消費半減、疲労軽減、持久力上昇です」
それ完全に長時間労働仕様になってるよ……
あれ、うちの箱庭って結局ブラック企業だったのかな?
いや、そんなことはないと信じたい。
「他にも『魔王』や『勇者』などを製作中とのことです」
ここまできたら吹っ切れてシリーズ化するのもありだと思えてきた。
名前はそうだな……厨二病シリーズってところか?今度エリーに厨二病っぽい商品を作って販売してもらおう。眼帯とか包帯とか。
「それにしてもミスリルの剣1本で8000万か……良くて5000万ぐらいかと思っていたんだが」
「ああ、我らもそれぐらいかと思っていたのだがな。想像より高く売れた」
中級ポーションは普通のだと1本5万円程で10本セット50万円で売れるのだが、エリオットが作ったのは80万円で売れた。
上級ポーションに関しては欠損すら治る代物だからか1本50万円で5本セット250万円もするのだが倍の500万円で売れたのだ。
さずかに俺たちもニヤケが止まらない。
魔導パーカーと魔導ジャージを数着だけ残し、他は全て完売。これなら第2弾目を用意出来次第売っても大丈夫そうだなと準備を始める俺たちだった。
「セバス、これみんなへの売上。両替所で両替してきたからみんなに渡してきてくれる?」
「かしこまりました。それとガンナー様とエリオット様が新しい革命的な商品を思い付いたとかで1週間程籠るとのことです。何かあれば工房の方まで来て欲しいとのことでした」
ええ……?2人でゲームしてたんじゃないの?
革命的って言ってることがちょっと怖いけど、とりあえず1週間待ってみるか。
「それでこれは何なんだ?」
1週間が経ち、俺はエリオットの研究所に来ていた。
「これはツルハシじゃ!」
それは見ればわかる。わかるけど君たち2人がただのツルハシを作るとは思えないんだよ。
「領主様から頂いたあのゲーム、あれは素晴らしいです!私たちはまだ未熟だったと教えられました……」
「……は?」
ゲームが素晴らしいことは認めるがなにを勘違いしたら自分たちが未熟だと思い込むのだ。
「わしたちはあのゲームでこの箱庭を再現して、今後どこに何を建築するかなど話しおったんじゃが、素材を集めるのが大変でなあ」
「ええ、やはりゲームでも現実と一緒で地道にやっていくしかないと思っていたのですが、あのエンチャントという付与をするようになってから効率が早くなったのです!」
「わしもツルハシに付与をするのは当たり前だと思っておった。だがそれはあくまでも重量軽減や破壊不可などの効果じゃ。それなのに効率強化に幸運だと……?」
「私たちはビビッときましたね。求めていたのはこれだと!効率強化で掘る速度があがり、少量しか採れない鉱石も幸運で増える。これは売れると!」
「ああ、冒険者や鉱夫だけじゃなく斧に付与すれば木こりにも売れるぞ!がはは!」
ゲームの武器を真似して作れちゃうのがこいつらのすごいところなんだよな……
ただ楽しんでくれればいいと思って渡したゲームがまさかこんなことになるなんて。
でも実際にこれは革命的なアイテムだよな。
ミスリルとかだって倍に増えたりするかもしれないんだから。だが今はそれよりも……
「お前たちは風呂に入れ!」
この1週間、工房と研究所に籠りきりだったのだろう。2人から臭いがぷんぷんしている。
「うっ、そういえば風呂に入るのを忘れておったわい」
「私もです……」
ちゃんとしないとゲーム没収するからな!と言うと急いで温泉に向かった2人だった。




