夏祭りでの深刻な悩み
「それに関しては本当に申し訳ないとおもっているんだ。まさかガチャから若い女の子が出てこないなんて誰が予想出来ただろうか」
ハンスはまだ16歳、どちらかというと24歳の俺の方が焦っている。現実世界の方へ行けば出会いはあるのかもしれないが俺はこのユグドラシルで引きこもるつもりなんだ、出会いは必然とガチャ頼りになる。
それなのに今のところ既婚者のシルヴィアを除けばマーサとアリアナとフィアしかいないという現実だ。
「この夏祭りも好きな人と参加できたらなって考えてしまって、それで少し顔が暗く見えたのかもしれません。すみませんご主人様」
「俺もそんな青春みたいなことしてみたいよ」
「私もそのお話にまぜてくれませんか?」
イケメンハイエルフがこちらの話に参加したそうな目で見つめています!と、まあ冗談は置いておいて。
「エルは1000年以上も生きているんだ、恋愛なんかは上級者じゃないのか?イケメンだしモテるだろ?」
「魔法の理は500歳の時に全て理解しました。だけど恋というものが1000歳超えても理解できなくて」
めちゃくちゃ重症だった。
「多分恋ってさ理屈じゃないと思うんだよね」
「理屈ではない?」
「この人ともっと話したいとか、また会いたいとか、気付いたらその人のことばかり考えているとかそういう積み重ねじゃないかな」
エルが何かを真剣に考えている。
「その症状は聞いたことがあります。恋とは魅了魔法や呪いの一種ですか?」
「……エルディン様」
さすがにハンスも呆れ顔だ。エルがここまでポンコツだとは。
「昔、人族で魔法の技術が素晴らしい方がいて気になっていたのですがこれが恋だったのでしょうか」
「おっ!その人とはどうなったの?」
「その技術が気になり50年ほど研究していたらすでにいなくなってしまいました」
「ええ……ポンコツ……」
もうハンスのエルを見る目が可哀想な子供を見るような目だ。
「でも本で恋というものを勉強したこともあります」
「もう何も信用できないけど、とりあえず聞いてあげるよ。それを読んでなにがわかったの?」
「恋とは相手を独占したい感情、監禁すれば永遠の愛を誓い一生一緒にいれると」
「…………」
「恋敵は排除し、愛する者のためなら世界を滅ぼすと」
この人は魔王にでもなりたいのだろうか?
「誰ですかそんな本を仕入れたのは……」
「図書館で恋愛小説ランキング1位だと聞きました。最後まで離さない愛というタイトルでしたね」
名前からしてやばそうじゃん。
今度魔導図書館で俺が良さそうな恋愛小説を選んであげるべきだろうか。
「司書が胸キュンでおすすめと言っていたのですが」
「それは上級者向けですよ、エルディン様は初心者向けから読むべきですね」
そんな恋愛話をしていたら夏祭りもいい時間になっていた。
「お二人のおかげで少しはわかった気がします。これはお礼です」
エルが空を見上げながらボソッとつぶやくと花火が打ち上がった。
「綺麗だな……こういうのはさすが大賢者様ってことか」
他の住民たちもみんな花火を見ている。
ユグドラシル初めての夏祭りは大成功と言っても良さそうだ。
さて、そろそろ終わりかと思った時、碧がエリオットと一緒にどこかへ向かった。
兄貴や紗季さんは何が何だかわからない顔をしているが、俺もわかっていない。
戻ってきた碧が手に持っていたものは自由研究で作った安眠のオルゴールだった。
「お父さん、お母さん。これね僕がエリオットさんに教えてもらいながら作った自由研究。オルゴールなんだけど、赤ちゃんにはぐっすり眠れる効果と2人には疲労回復の効果があるんだって!提出が終わったら使ってくれると嬉しいなって……えへへ」
「っ、ぐすっ、碧そんなこと考えて」
「ありがとう碧、とても素敵な贈り物。私も嬉しくて泣きそうになったけど隣にすごい顔で泣いている人を見て涙が引っ込んでしまったわ」
もちろん俺も号泣。涙腺ゆるゆるなんだからだめだって言ったじゃん。
周りを見たらみんな号泣している。そうだここは涙腺ゆるゆるの中年や老人しかいないんだった、なんか俺も涙引っ込んだ。
こうして最後に花火や素敵なサプライズがあり無事ユグドラシルでの夏祭りが終了したのだった。




