プロローグ
それは世界の常識を覆す『伝説の魔導具』
他国との国境近く、緊迫した前線基地の中で世界最高峰の斥候である男は届いたばかりの支給品を前に驚愕していた。
「おい……冗談だろ?この布切れが国家予算級の価値を持つ伝説の魔導具だというのか?」
男が手にしているのはどう見てもただの緑色のピチピチとした全身タイツ。
あろうことか、その股間部分には金色で『隠密』と刺繍されている。
あまりにもふざけた見た目だがそれを身に纏った瞬間、周囲の空間が変わった。
……そう、完全に気配が消えたのだ。
「な、何だよこの隠密は……!姿どころか存在そのものが世界の理から消去されたみたいだぞ!?」
「副隊長!きっとその股間部分の文字は着用者に『不審者として見られる社会的死』を乗り越えるための紋章に違いありません!」
「くっ、なんという過酷な試練を課す魔導具だ!だが、この圧倒的な性能……これを考えた者は一体どれほどの者なのだ……!」
その場にいる男たち全員が未知の創造主への恐怖と敬意に震えていた。
◆◆◆
その頃、現実世界を震撼させているとも知らない未知の創造主こと俺は……
「よっしゃあああ!黒毛和牛食べ比べセットが当たったぞ!」
屋敷の執務室で万歳三唱をしていた。
目の前に見えるのはブラック企業を辞めるきっかけとなったスキルのウィンドウ画面。
ユニークスキル【箱庭ガチャ】
これからも俺はこの箱庭の領主として可愛い女の子やメイドたちに囲まれ、のんびりスローライフをして暮らすんだ!
残業も理不尽な上司ももうどこにもいない!
「待ってろよ俺の可愛いメイドさんたち!煩悩全開で神引きしてやるからな!」
俺は最高の未来を確信しながら今日もガチャを引いていく。
このスキルが後に現実世界のパワーバランスを大崩壊させる始まりだとも知らずに。




