第7話・妹のケアは大事
お風呂から上がった後は、ミウの体を拭いてパジャマに着替えさせた。
思わず押し倒しそうになったのは口が裂けても言えないけど、なんとか踏ん張った。
だから褒めて欲しい。
それから、母親が使っていたドレッサーの前に座らせ、ミウに聞きながらポンプボトルに入ったヘアオイルをその髪につける。
ミウの話では、ヘアオイルは通常の分量よりも少なめにつけるのがいいそう。
だから、ミウの場合はロングヘアだけど、セミロングの人がつける量と同じ量にしているそうだ。
最後の仕上げとして、目の粗いコーム(櫛)で優しくとかす。
うん、真っ黒な髪につやが出ていい感じだ。
「こんな感じかな?」
「お兄ちゃん、本当に初めてなの? お風呂でもそうだったんだけど、なんか妙にうまくない? お母さんよりも上手だよ? もしかして美容とかに興味あった?」
なんかミウに引かれてた。
「あんまりないかな? ただ、俺は肌が弱いから、髭を剃った後に肌荒れ防止用のクリームを顔につけたり、夏場に外で作業する際は日焼け止めをつけることがあったけど、それぐらいかな? あとは頭を冷やすのにドライヤーの冷風機能は使ってたけど……」
「そ、そうなんだ……」
ドライヤーを手に取って少し離してからそのスイッチを入れる。
「ういーん」
なんとなく効果音っぽいのを口に出しながらミウの髪を乾かす。
「何それお兄ちゃん?」
「ドライヤーの効果音的なやつ?」
ふと鏡に目をやると、そこには呆れたように笑うミウの顔が映っていた。
自然に笑えるほど回復したのだから問題はないはずだろう。
最後は冷風で仕上げて完成だ。
「じゃあ、ミウの部屋に運ぶね?」
「うんっ。あ、お兄ちゃん。私のヘアオイルとか忘れないでよ? 先にスキンケアしているから」
「わかった」
お姫様抱っこしてミウの部屋へと運んだ後、ヘアオイルなどを回収して持っていく。
そして、今度は散乱したバスタオルなどを片付けるために脱衣所やお風呂場の片付けに戻る。
ちょっと大変だがミウのためと思えば苦にならない。
(あっ――)
洗濯籠をのぞくと、一番上に白い下着が無造作に置かれていた。
思わず振り返って周囲を見るが誰もいない。
ごくりと唾をのむ。
ど、どうせ洗濯するからちょっとだけ借りてもいいよね?
(ごめんミウ。ちょっとだけ、ちょっとだけ借りるわ)
生まれて初めて妹をオカズにしてしまったが、過去一で出たのは内緒である。
――
「ごめんねお兄ちゃん。お風呂掃除とかもさせちゃって……」
なんだまだ寝てなかったのか。
ミウの部屋に戻ると、彼女から声をかけられた。
「大丈夫だ。それよりもミウの足は?」
「少しずつなら動くようになってきたから。もう少ししたら治るかも」
「そっか。じゃあ、それまで安静だな」
頭を軽く撫でる。
「そ、それでね。お兄ちゃんに頼みがあるんだけど、いい?」
「なんだ? 俺に出来ることならなんでもするぞ?」
「そのね? ご本を読んで欲しいの。眠くなるまで……」
「本か……」
「駄目?」
どことなく上目遣いで見てくるミウ。
その目は反則だと思う。
「駄目なわけではないけど、本を読むのが苦手でね。どの本?」
「ええとね。棚にあるライトノベルを……」
「ラノベかいっ」
思わずツッコミを入れてしまった。
まあ、中学生にもなって自分の部屋に絵本があると言う人の方は少ないだろう。
それからミウに頼まれたラノベを読むことになったのだが。
「ざまぁですわっ――」
まさかの悪役令嬢ものだった。
アニメ化されたものらしいが、女性向けと言う事情もあり、俺は知らなかったものだ。
もしかしたら前世にもあったかもしれない。
「ふふ。お兄ちゃんセリフ棒読みー」
「よせよ。コミュ障だから人前で読むのが苦手なんだよ。あ、コミュ障ってわかる?」
「うん。知ってるよ。それよりも早く続きを読んで、コミュ障のお兄ちゃん?」
「わかった。ベアトリーチェ、貴様――」
頑張ってラノベを読んでいたらミウがいつの間にか寝ていた。
ならここまででいいか。
俺もラノベを読むのを止めて布団をかぶり電気を消す。
本当だったら床で寝たいが、ミウがいつトイレに目を覚ますかわからない。
だから壁にもたれかかるように座って仮眠を取るしか方法がないのだ。
数日ぐらいなら大丈夫だろう。
これが毎日となると俺もちょっとキツイけど。
でも、かわいいミウのためだ。
これぐらいの無理はするべきだろう。
まあ、我慢できずにオカズに使ってしまったという後ろめたさもあるが。
(大丈夫だ。耐え忍ぶことは慣れている。名前の通りな――)




