第52話・すき焼きは高級料理ですか?
「えっ? 今日の給食、すき焼きだったの?」
膝の上に乗せたミウと雑談していたのだが、そこですき焼きの話が出てきた驚いた。
ちなみに、家ですき焼きを食べたのが昨日の夜。
「うん。実は献立表に書いてあったんだけど、そこまではよく見てなくて……」
「そ、そうか。それは悪かったな」
それは俺も盲点だった。
まあ、だからと言って給食の献立表を見ながら夕食を考えるなんていうことはしない。
プロだったらこういうところにも気を使うべきなのだけど。
正直、それをやるのはお金をもらっても大変。
なので「被ったらごめん」というスタイルでやっている。
さすがに昼夜続けて被ったというわけではないし、大丈夫だろう。
「そこまで気にしなくても大丈夫だよ、お兄ちゃん。それにおうちで作った方がおいしかったし」
「そう? すき焼きのたれは既製品だったんだけど……」
スーパーで普通に売っているやつである。
「そこはプロとして作れよ」と言われそうだけど、面倒だった。
最初から味が決まっているので調合で失敗するなんてこともないし。
調合で使った調味料が中途半端に残るということもない。
だから、俺がやったのは、具材を切って盛り付けた後に、すき焼きのたれを分量通りに入れただけ。
うん、誰でもできるね。
ちなみに、すき焼きのたれは今日の夕飯である肉じゃがにも使っている。
焼き肉のたれと同じように意外と万能なのだ。
ジャガイモの面取りはちょっと大変だったけど。
「素材が良かったんじゃない? それにいいお肉を使ってたんでしょ?」
「まあそうだな」
「それでさ。今日学校で、すき焼きの話になったんだけど。すき焼きってごちそうなの? ミウとしてはごちそうって感じだったんだけど、“家庭料理の1つだろ?”って言うクラスメイトもいて、どうなんだろう?と思って……」
「あー。確かに」
確かにミウのクラスメイトが言ったこともわかるし、ミウの言うこともわかる。
「俺も子供のころはごちそうだと思ってたけど、今は料理のレパートリーの1つっていう扱いだからなぁ。食べる場所や食材の質にもよると思うけど……」
「食べる場所と食材の質?」
「ミウの誕生日の日に行ったレストランで出てきたらごちそうになるだろうし、ファミレスとかのチェーン店で出されたものなら、普通の食事にならない? あとは、家庭で作ったものだとしても、牛肉じゃなくて豚肉や鶏肉を使ったすき焼きとか」
「言われてみればそうだね。でも、豚肉や鶏肉でもすき焼きなの?」
「豚肉は豚すき、とり肉はとりすきって呼ばれてたかな? どこのスーパーで見たのかは忘れたけど、たれのコーナーでその料理用のたれが売ってるのを見た」
「へー……」
たぶん前世のスーパーだと思うけど。
前世では豚すきかとりすきが基本だった。
牛肉だと高いし。
うちは祖父母と同居してたから家族が多いっていう事情もあったけど、質より量だったからね。
母親の意見で見た目は意識してたけど、味は大味が基本だったし。
「あとはステーキなんかもそうじゃない? 家で作るステーキとお店屋さんで食べるステーキは違うじゃん?」
「なるほど。でも、お兄ちゃん。お兄ちゃんが作る料理とかは下手すればお店屋さん以上だよ? この前、作ってもらったチキンステーキなんか皮の部分がカリカリだったじゃん? あれびっくりしたからね?」
「一応プロだからね」
手に職をつけるため、高校からそういう専門的なところで修業というか勉強していたからね。
それぐらいのことはできる。
ミウに食べさせるためなら手間のかかる下処理も面倒とは感じない。
前世の家族に対しては興味がなかったということもあるが、母親が光熱費のことを特に気にしていたんだよね。
だから、スーパーで買ってきたお惣菜やサラダとか、母親が作り置きしてた料理を皿に盛って完成というのが基本。
おかげで調理師免許を持っていたとしても実家ではあまり役に立たなかったのである。
まあ、俺も楽だったから特に気にしてなかったけど。
ちなみに、食事に関しては児童相談所や未成年後見人を務める弁護士からチェックが入ることがあるので、報告を兼ねて定期的に作った料理を写真に撮って報告書にまとめたりもしている。
さすがにミウとの関係は秘密にしているけどね。
「それとお兄ちゃん。昨日食べた牛肉なんだけど、A5の黒毛和牛はちょっとやり過ぎじゃない? いくら臨時収入があったからと言ってガンガン使うのは駄目だと思うよ?」
「でも、使わずに残していてもね。お金は天下の回りものだから、使うべき時に使わないと意味ないじゃん?」
「でも……」
「それに俺はミウの幸せそうな顔が見れて十分なんだ。だからそれでいいだろ?」
「お兄ちゃん――」
ミウの頭をとかすように撫でる。
この関係で十分だ。
まあ、ミウとはすでに肉体関係を持っているので行き着くところまで行きついているんだけど。
あとは結婚ぐらいかな?
子供は要らないけど、そういうことはしたいので避妊魔法の習得は必須と言えるだろう。
エロ同人のように1日中やってたい。
「ミウね。お兄ちゃんに返せるようなものなんてないんだよ? 処女もこの前あげちゃったし……」
「いいんだよこれで。ブラコンな妹には昔から憧れていたから」
「で、でもぉ……」
「俺が良いと言っているから良いの。わかった?」
「そっか。わかったよ。お兄ちゃん。じゃあ、これがお返しね?」
そう言ってミウがクルっと態勢を変えると抱き着いてきた。
この体位は色々とまずい気がするけど、まあいいや。
「ありがと」
そう言いながら俺もミウを抱きしめ返して頭にキスしておく。
「だ、だからお兄ちゃん。それはやりすぎだよぉ……」
「そう?」
今回が初めてと言うわけではないが、俺の胸に顔を埋めているミウの耳を赤くしながら言葉を返してきた。
まったく頭にキスしたぐらいで初心だなぁ。
「それとお兄ちゃん。すき焼きって結局のところ、ごちそうにもなる家庭料理でいいの?」
「まあ、そうなるかな?」
中途半端な答えだが、一番しっくりくる答えはそれだろう。




