表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

79/106

ルイーナ、この手を握りなさい

The Sky of Parts[28]

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

この物語は、軍事好きな筆者が作った育児モノ。


【!】『対話体小説』の読みにくさを軽減させる為、独自の「改行ルール」、「句点くてんルール」を使っています。


「あれ?

 ルイ、共同の風呂を使ったのか。今の部屋、風呂あるんだろ」


「エルリーンは、今からお風呂?

 ……別に、母上とオレは、共同風呂に行くのを遠慮する必要はないし。

 部屋にあるっていってもシャワールームだけ。やっぱり湯船ゆぶねで、足を伸ばしたい」


「まあ、たしかに。その方が疲れがとれる。

 うん。

 あたしは、今からお風呂。

 あ。

 明日は、学校休みだし、たくさん遊ぼう。

 ルイ……歌の意味、ありがとう。話すのつらいところもあったのに」


「ううん。

 エルリーン。

 オレこそ、話を聞いてくれてありがとう。

 結局、父親とは、今日も口をきいていないけど、同じ部屋にいたくない程、嫌じゃなかった。

 というか、珍しく向こうから話しかけてこなかった。

 ここに母上と一緒にやってきてから、あの手、この手で、オレの心をこじ開けようとしてきていて……正直、鬱陶うっとうしかった。

 今日は、二人きりになってしまった時も、あいつは、ファッション雑誌を、読みふけっていた」


「ふーん。そっか。

 ま。

 とりあえず、文句たらたら言いながら、ルイがたった一人の父親が好きっていうのは、よく分かったから――話しかけてやれよ。

 気が向いたらでいいからさ。

 ――あたしの事は、本当に心配いらない。

 しかし、言い方が悪かったらごめんだけど、同情したくなるようなルイの人生を流しつつ、あいつへの苦情を垂れ流しつつ、世界のみんなが望んだように、あいつから権力を奪いつつ、やっぱり親が大好きね。

 これって、あれだわ。

 ホームビデオ」


「は?」


「他人のお宅の動画ってヤツ。

 食堂でご飯食べながら、たまに、ぼけーと見てると面白い。あれの流れだ」


「えっと……ん?

 エルリーン……?」


「他人の家の事情とか見てると、へぇ~って思うじゃないか。

 まさか、エリオット・ジールゲンの秘密のご家庭事情が、報じられる日が来るなんて――で、世界中の人々が驚いて、ルイを応援したくなってしまったんじゃないか?」


「……は?

 まさか……そんな、バカな事」


「ま。

 ルイの想いが、あいつから権力を取り上げて、戦争を休止させたんだ。

 あっと……そういえば、最初にルイが、この基地にきた頃に、あたしがうっかり言っちゃった事、れてもいいかな?」


「あれかな……腕を振り上げて、下すやつ……」


「そう……ルイが、Lunaの歌声が、それを止めたんだ。

 最初の奇跡。

 ルイは、世界のみんなの希望に、その時、すでになっていたんだ。だから、自信を持ってほしい」


「……自信。

 そ、そういえば、エルリーン。

 惚れ直してくれた……ご褒美をもらう件……あれでいい?」


「あ……ああ。いいよ!

 ちょっと、びっくりしたけど。

 最初が、いきなり、みんなの前がいいって。

 うん。

 でも、少し時間があるから――カカシか何かで練習して、備えておくよ……うん」


「カ、カカシ……そ、それなら、いや、なんでもない。

 エルリーン、顔が真っ赤だよ。

 お風呂入る前なのに……そういえば、お風呂か……いや、なんでもない!」


「ルイだって、顔赤いぞっ。

 うん。

 でも、今すぐ――と思っていたから、ちょっとざんね……いや、なんでもない」


「……じらし成功かな。

 いや、なんでもない! エルリーン、また明日ね!」



* * * * *



「ふはー。

 いいお風呂だ。やっぱり湯船ゆぶねで足を伸ばすと最高だ!」


「私も、本当にそう思うわ、エルリーン。

 ふはー」


「うわっ! 軍師殿……いつの間に!

 いいのか。

 女湯だから、女性の軍師殿がいて、驚くのは失礼すぎる。ごめんなさい」


「いいわよ。

 私は、エルリーンを驚かすつもりで、作戦を立てて近づいてきたから――貴女は、見事に天王寺アリスの作戦にはまったの!

 えっへん!」


「そっか。

 あー。

 でも、軍師殿と、一緒にお風呂に入るのって、小さい頃以来。

 前の基地とは、違う場所だけど、昔は、よくこうやって、裸の付き合いをしたもんだ。

 ふはーん。

 あ。

 そっか、ルイと結婚したら、本当に軍師殿が、おかあさんになってくれるんだ。

 不思議だな。

 小さい頃、どうにかして軍師殿に、おかあさんになってほしくて、アレコレしたんだけど、ことごとく失敗してたっけ。

 で、最後にあたしが捨て台詞みたいに、『じゃあ、あたしが、軍師殿の息子を助け出して、そいつと結婚するっ!』って。

 ……あはは。

 マジ現実になってしまいましたなのか……意外と、忘れてた……はは」


「あったわね。そんな事。

 エルリーン、大丈夫?

 本当に、ルイーナのお嫁さんになってくれる?

 世界レベルで知られているけど、我が家……とは、呼びたくないな、エリオットの奴は、天王寺家の人間じゃないから。

 まあ、それは、今は置いておこう。

 父親は、あいつですけど、ルイーナが相手でいい?

 将来、子供ができると、どうにも、あいつが入ってきてしまうけど――」


「二歳の頃のお風呂上がりのルイのパジャマ姿が、可愛くてさぁ。

 肩上の赤髪が、まだ乾ききっていないんだ。

 それが、すごく愛らしくて――あんな子供が、手に入るのかなぁ。

 楽しみだなぁ。

 えへっ。

 もらった写真データを眺めながら、ついついニヤニヤしちゃうんだよな。えへっ」


「二歳の頃のルイーナの写真データ?

 ……『三十二等兵』め。

 私の可愛いエルリーンを、密かに買収しているな……」


「そういえばさ、軍師殿。

 やっぱり、うちの父さんは、知ってたの? その……あの……軍師殿とあいつの関係」


「……知っていた、みたいね。

 あの人とミューリーに、閉じ込められていた軍事施設から、助け出してもらったから――タケと私の会話を聞いていれば、それとなく分かってしまうはず」


「そっか」


「ま。

 貴女のお父さんにやられて逃げ出す、不様ぶざまな竹内イチロウの姿を、ご想像下さい」


「はは。

 ザマぁみろだな。整髪料のにおい振りまくスーツにネクタイ野郎っ」


「ありがとう、エルリーン。本当に、私の娘になってくれて――」


「うん。おかあさん」


「ちゃんと、ルイーナの口から、正式に婚約して下さいって言わせるつもりだから。

 覚悟して待っていてね」


「覚悟って、へへ。

 うん。

 あたし、覚悟して、楽しみに待ってる」



* * * * *



「夜風が気持ちいいの? ルイーナ」


「あ、母上。うん、ちょっと眠れなくて――。

 母上、その黄色いパジャマ、似合ってる。可愛い」


「ルイーナの薄青いパジャマ姿も可愛いわ。

 父さんと二人で、部屋にいるのが嫌だった? 母さんが、お風呂に行っていなかったから」


「……母上は、あの人の事を、そう呼んで違和感ないの?」


「ん?

 ああ……ずっと名前で――エリオットって呼んでいたから。

 うーん。

 たしかに、『父さん』って呼ぶ方が、他人行儀かも。

 初めて会って、名前を聞いてから、エリオットは、ずっとエリオットだったから」


「母上、自分の事を『母さん』って言うじゃない。

 オレに、本当はそう呼んでほしい?

 『母上』って呼び方は、あの人に言われて、そう思い込んでいただけだから」


「自分で、自分を呼ぶ時に、『母上』なんていうのは、私は、仰々(ぎょうぎょう)しいって思うの。

 だから、『母さん』。

 ――でも、ルイーナに呼んでもらうなら、『母上』の方がいいかな。

 タワー『スカイ・オブ・パーツ』に、強制連行された時ではあったけど、ルイーナの口から最初に呼んでもらったのが、『母上』だったから。

 それからも、ずっと、そう呼んでもらっているし。

 今さら変えられると、母さんも心の準備ができないかも……さっき、会話上で『母さん』って言われて、ドキドキしちゃった。

 ドキドキ」


「あははは。

 ふざけた事を言いながら、ニヤニヤする時の母上の顔も、大好き。

 じゃあ、『母さん』っていうのは、オレも、母上にイタズラしようと思った時に、使う事にするよ!

 へへん。

 オレ、すっごく、すっごく、イタズラ大好きだから」


「ルイーナは、イタズラっ子ね。

 そんな、イタズラっ子なルイーナに、天王寺アリスから任務を与えます!」


「え? なになに? 楽しそうな事なの」


「うん。ルイーナ、耳を貸して――」


「――えっと……母上っ!

 それって。

 み、みんなをだませって事?

 その……あの……エルリーンも!

 ダノンさんも。

 ……あの人すらも。

 タ、タケと手を組んだって……え……え……!」


「そう。その通り。

 素敵じゃない。

 この天王寺アリスの息子が、すべてを制するって――ダノンには、悪いけど、手駒になってもらう。

 軍のバックアップも、あなたが世界の支配者になるのならば、必ず必要だから。

 ね?」


「軍のバックアップって……え?

 あの……母上っ!

 だって、戦争を終わらせるって話で……あれ……母上っ!」


「ルイーナ。

 私の計画、今のあなたは遂行したいでしょ――ふふ。

 しばらく前から、あなたの心に芽生えていた支配欲にも似た感情、母さんが、満たしてあげるわ」


「でも……は、母上……オ、オレ……エルリーンに、そんな事……」


「できるでしょ?

 母さんが、お願いしているんだから。

 ふふ。

 でもね、ルイーナ。

 あなたは、みずからの手で、すべてを成し遂げたいと思うはず。さあ、母さんと手を組みなさい。とても、魅力的な案でしょ?」


「あ……でも、この基地のみんなを……タケに頼んで、軍を出撃させるって……母上。

 オレ……オレっ!」


「ルイーナ。

 結果だけを見なさい。

 過程ではなく、得られる結末を見つめなさい。

 わき上がる欲望を、抑えつける事はないわ。

 母さんの案に対し、拒否は許さない。

 さあ。

 お返事してちょうだい。

 作戦に、参加してくれるわね?」


「……は、はい。母上。

 断固、拒否できません……」


「ふふ。

 よく言えました。

 ルイーナ。

 明日の朝、朝食後に決行するわ。軍の方で、陽動作戦が実行され、基地から対象外の人間がすべていなくなる手はずよ。

 ダノンはもちろん、エリオットすらも欺騙ぎへんの対象。

 ふふふふふ。

 みんな、この天王寺アリスに、たばかられるのよ!」


「ほ、本当にタケと手を組んだんだ……母上は、あの人と一緒にいたけど……いつか、復讐してやるつもりだったんだね」


「当然っ!

 エリオットめ、この天王寺アリスを敵に回した事、後悔するといいわっ!

 あはははははっ。

 ルイーナだって、エリオットには、怨みがいっぱいあるでしょ。

 母さんと共に、奴が、不様ぶざまに倒されている様子を眺めてやりましょう!」


「そ、その為に、ダノンさんを手駒として使うって言うの!

 オレ、できるかな……いや、でも、欲望を満たせる……ううっ。

 みんな、ごめんっ!」


「母さん配下のルイーナ。

 よく聞きなさい。

 攻略対象の中には、エリオットもいるわ。

 今回は、徹底的で完璧な、心理制圧を速やかに成功させる必要があるのは、理解できたでしょ。

 火器類を使用するつもりはないけど、制圧射撃作戦を実行するような――敵が、冷静に行動できなくなる、絶え間ない牽制けんせいが必要。

 その上で、反撃を許さない事が重要よ。

 そのように行動する必要があるわ」


「……YES、母上」


「ふふ。

 いくさというのは、ただ単に、力をもって制圧すれば良いってものではないわ。

 討ち取る事が重要な時もあるけど――こちらの都合が良いように精神的に支配して、条件をのませ、降伏を余儀なくさせる!

 こうする事によって、そのの有利を勝ち取るの!

 敵の行動を阻害しながら、作戦をこなすというのは、たまを、ただ命中させるよりも、難しいと思うわ。

 ルイーナ。

 あなたに、その覚悟があるかしら?」


「は、はい……母上の為に。そ、そして、オレの為に!」


「ルイーナ。期待しているわよ。

 ふふふ。

 ――これ。

 手渡しておくわ。

 できたら、エリオットのいないところで、開けた方がいいと思う。

 この紙袋の中身に目を通し終わったら、部屋のベッドの下にでも置いておいて。

 母さんが、回収しておく。

 ああっと。

 タケから受け取っているものもあるの。

 それは、明日の朝、渡すわ。

 ダノンに使ってもらうつもり。

 効果は……ふふ……事前に確認済なの!

 天王寺アリスとダノン・イレンズが、旧知きゅうちの仲だからこそ、試す事ができた。

 あはははははっ。

 もちろん分かっていると思うけど、他言無用で、よろしく頼むわ」


「い、YES、母上!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ