表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/106

アリスが、エリオットの部下? 名目上ねっ!

The Sky of Parts[07]

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

この物語は、軍事好きな筆者が作った育児モノ。


Web上での読みやすさ優先で、適当に改行などをいれたりしてあります。


【※かなりコメディ展開の回です】


「……ちっ。

 ほら……いえ。

 アリス様、閣下からの褒賞ほうしょうをお持ちしました」


「おお、ご苦労、ご苦労。

 タケ。

 それ、どこの階ぐらいから、タケ一人だけでエレベータをハシゴしてきたわけ?」


「お前には……貴女には、お教えできません。

 アリス様の権限は存じておりますが、タワー『スカイ・オブ・パーツ』内部の構造に関しては、回答を与えるわけにはいきませんので。

 あと、閣下からも念を押されていると思いますが、ルイーナ様を通して、このタワーや軍施設の情報を得る事は避けて頂きたい。

 お二人の会話や行動は、すべて録画させて頂いて、『sagacity』を使って検閲させて頂いています。

 軍事情報に該当する事項が含まれていた場合、閣下の判断によっては、今の地位を、ルイーナ様ともども剥奪される事になりかねません。後の処遇は、閣下のお慈悲をたまわれる事を願って……って、聞いてないな!

 で回すほど、そんなに大事か……自転車がっ!」


「うわっ。すげー! 母上、これが自転車!」


「でも、居住フロアから空中回廊までは階段しかない。

 VRゴーグルがあって、私は、足元に気をつけて歩いているから、何段あるか数えた事ないけど、自転車持ってあがるのは面倒だよな。医療班の軍人さんと言えども」


「……ああ。

 よく、分かってるじゃないかっ。

 帰りも、この竹内イチロウが、自転車をお持ち帰りだ!」


「タケ。まずくないか?

 エリオットのやつが将来介護になって、この上のヘリポートで病院へGOしたい時に、階段しかないなんて! しかも、ここからヘリポートまでも、まだまだ階段が続く。

 頑張れよ、竹内イチロウ。

 私も、ルイーナも、やつの介護などお断りだ! 書面は用意しないが、正当に放棄しておく。

 住宅の設計は、後先考えておかないと。

 私ら母子は、そのうち独立する予定なので、住居探しの参考にさせてもらう。

 だから、エリオットのやつには、言っておいたんだ! 失業する前に、条件の良い保険をさがしておけと」


「……なっ。

 誰が失業したと言うのだ! ……閣下の事を……仰っているおつもりですか? アリス……様?

 貴女によって、まんまと『仕事』を辞めさせられたから!」


「うん。そういう事。

 正確には、この天王寺アリスとルイーナの二人にだ。

 どうせ今も、監視カメラを通して聞いているだろうが、エリオットのやつに、余計な新しい『仕事』は探すなよと伝えておけ。

 軍を維持する事は、私とルイーナに任せておけばいい。

 ヤツは薄暗い部屋で、ブツブツ言いながら、書類にハンコを押して、だんだん窓際、壁際に机を追い込まれていけば良いんだ。

 あとは、私たちの食事の用意でもしていればいい。カッコ、『毒』は盛るな、カッコ閉じる」


「母上っ。オレ、早く自転車乗りたい!」


「アリス様。

 それにしても……なぜに、自転車をたまわりたいと思われたのですか?。

 ルイーナ様――アイドル『Lunaルナ』の活動で、今月も軍の支持率上昇。お二人ともお役目を果たされました。

 ですが、なぜに自転車?」


「うーん。

 インスタントコーヒーとか、健康器具とかも補充したかったんだが……たまには、ルイーナと遊ぶものでもいいかなって思って。

 それだけ。

 エリオットのやつに、自転車が欲しいと言ったら、『チューブ外して、タケの首でも絞めるつもりか?』って聞かれた。違うけど、その案をもらってもいいかと聞いたせいで、私の部屋への持ち帰りが制限された。

 自転車を天井から釣って、S缶やハンガーやクリップを吊り下げたかった。

 『Luna』のアイドル活動用の書類があふれている、あの狭くて限界を超えすぎてる部屋を、少しは広く使えると思ったのに。

 ……って、タケ!

 顔が段階的に、七色に変化して、最後は呆れた表情になったぞ!

 ん~。

 ルイーナが、本に出てきた、自転車を知らないと言うんだ……自転車は、通勤・通学にも便利だ。乗りこなしておいて、損はない!

 母親の私が、乗り方を教えてあげようと思って。

 あと二人乗り!

 これは、私がルイーナとやってみたかった。

 わくわく。

 ――私は、きっと、ルイーナよりは早く召されるはずだ……残念だけど。だから、可能な限り思い出は作ってあげたいじゃないか」


「うん。

 つうきん・つうがくに便利!

 オレも母上と、二人乗りっていうのやってみたい!」


「……ご冗談を。

 ルイーナ様が、軍務の一環として活動されている『Luna』は、エリオット・ジールゲン閣下直属の人物という事になっています。

 御子息ではなく――誰か、どこぞやの女が、虚言を駆使して、閣下を言い丸めたから……ちっ! 『これは親心からの提案であり申し入れだ!』とか余計な心情に訴えるような事を言いやがって……。

 『Luna』は、軍に大きく貢献ができる最重要人物としての位置づけで、略取りゃくしゅなどの対象にならないように、閣下専属の部隊によって、保護される管理対象です。

 学問の道に進まれるのは、たしかに良い事ですが、慰問先の軍施設内を含めて、お一人で他行たこうする事は、一切許可されておりません」


「移動中の車内からも何も見えないからツマラナイ。母上といろいろお喋りできるネタがいっぱい得られると思ったのに。

 母上は、前に悪いやつらにさらわれていて、危ないから外には出ない方がいいかもしれないけど、オレが見てきて、話してあげたかったな。

 ここに戻ってくるエレベータも含めて、父上とタケが常に一緒だし。

 グンムって今でもよく分かってないけど……父上がカッカなのは分かった……気がする?」


「ルイーナ様、お立場ご理解下さい」


「タケ。

 顔が、『本当にうまくやりやがって。ルイーナ様に何も悟られず、しかも身分を隠したまま、首尾よくタワーの外へ出せる環境を作りやがった、この女』になってるぞ。

 この天王寺アリスが、エリオットよりも優れていたという話。それだけだ。

 ね?」


「ふん……おぼえてろ。

 失脚して、ただの閣下に管轄される一人に戻った場合、再びこの竹内イチロウが、お前の与薬係よやくがかりになってやる……」


「よーし。ルイーナ自転車乗ろう。

 母さんと二人乗り。

 経路上に、邪魔っけな、胸糞が悪い事ばかり言う軍医がいた場合は、スピードアップするの。絶対にブレーキをかけてはダメ。

 いいかなぁ?

 直線は――ここからぎりぎり五十メートルはないと思うけど、あの角を曲がる時に、速度を保ったままだと、スリリングが味わえるはず。

 私たちのどちらか、あるいは両方が怪我した場合、たしかに痛いけど、タケが、エリオットに断罪される絶好の機会になるかもしれないので、恐れず曲がりましょう!」


「はーい。母上! 後ろに乗るね! これでいい?」


「あ。ルイーナ。さっき、タケがぐずぐずして、自転車持ってきてくれない間に、決めたあのフレーズを大きく叫んでみて。

 もう、本人には聞かれてしまった後だろうけど、タケの心に刺さって、抜けなくなるぐらい大きな声で。

 せーの!」


「父上は、世間でも、家庭でも、リサイクルすら不可能な不用品っ!」



* * * * *



「リリン、また見てるの? なんだっけ……えっと……ルナ……だっけ?

 こいつ軍のヤツなんじゃないの?」


「でも、すごくきれいな歌声。

 男の子なんだって!

 姿もすごくきれい。

 エルリーンもこの子、可愛いと思わない? うちのノアは、すごく好きって言ってくれた。

 九歳で、声変わり前だからなのか分からないけど、優し気な女声じょせいで歌えるみたい。歌詞も、曲も自分で作っているらしいわ。

 『Luna』の澄んだ心が伝わってくるよう――。

 最初は、軍のラジオ放送で歌っていたらしいけど……本当にその時は、情報なくて、性別すら不明だったみたいね。

 軍用車から音が漏れて、民間人にも人気が出た。希望を抱けるような歌が聴こえるって。

 軽い騒ぎになって、いえ、それなりに都では反響が大きかったらしいわ。

 で、エリオット・ジールゲン自身が事を制する事態にまで発展して、結局、軍が直接『Luna』を召し抱える形になったらしいわ。

 それで情報が出てきて、男の子だって分かったんだけど、それが逆にさらに人気に火をつけたらしいわ。

 軍施設の慰問はもちろん、民間人用の放送でも採用されて、その結果、良い形で軍の支持率が上昇して……エリオット・ジールゲンの恐怖政治の象徴でもあった、公開処刑が中止されるまでに至ったわ。

 それは、とても素敵な事。過去は、消せないかもしれないけど……。

 この子ね。軍の施設で出生して、お父さんとお母さんは、いないんだって」


「あっ……そっか。

 それで、リリン。

 ノアには、リリンがいるけど……」


「うん。軍の施設内で生まれた子供って、それなりにいると思うの。

 行方不明になっている軍師殿も、息子さんを、軍の施設に残してきてしまったって言っていたでしょ……。

 ノアの父とは、焼け落ちる街で出会って、あの人に助けられた。そして、軍の施設内で暮らすことになった。

 でも、とても良い人だったの。

 ダノンのお母さん、亡くなったミューリーさんに助けられる形で、妊娠中だった私は、軍の施設の外に出てしまったけど――あの人に会えるなら、また会いたいわ。

 ノアの顔を見せてあげたい。

 愛してくれたあなたとの間に生まれた、息子がこんなに大きくなったよって言いたいの。

 だから、武力や暴力ではなく、歌の力で、『Luna』の歌声で、いつか、あの人に会える日が来るんじゃないかって。

 ノアをお父さんに会わせてあげられる日が来るんじゃないかって……あ。

 ごめん、エルリーン!」


「ううん。いいさ。

 あたしには、父親代わりを名乗ってくれるジーン叔父さんもいる。みんなもいる。

 しっかし……この『Luna』ってヤツさぁ、男なんだろ?

 ダメだろ。

 これじゃ!

 髪長っ。

 あたしよりも長いんじゃないか? 今回、結構伸ばしたんだよ。本当は肩の上がいいのにさ。

 赤い髪に、青い瞳。頬がぷくっと丸い顔して、たしかに女っぽいな。

 九歳なんだろ?

 背がちょっと低くないか? 毎日、外へ出て、自然の風や光に当たるのを怠って生活してきたんじゃないか? 牛乳飲んだって、大きくはなれないんだからな……って、それは、親から引き継いだ何かだから……触れてはダメか。

 うーん。

 着てる服は、こいつの趣味なのかね?

 リボンかよと思うような飾りのついた上着に、半ズボン。この半ズボンが、ふわっとしてるから、女に見えるんじゃないか?

 半ズボンの上にも、透明な布みたいなの巻いてるし。

 あたしも、半ズボンは好きだけど、もっとピッチリしたの選ばないと!

 上着だって、女のあたしでもランニングシャツでいいかなって思うのに……でも、もう十一歳なんだから、それはもうやめて、袖のある服を着なさいって、ジーン叔父さんに言われたところだった。

 こいつ、髪型もセットしてるのか知らないけど……髪飾りまでつけてるし。

 男は、もっとワイルドさが必要だろっ」


「彼のプロデューサーが選んでいるみたいよ。

 衣装もだけど、細かな演出まで担当してるみたい。

 公式ブログの運営、プロモーションビデオの作成まで、一人でこなしているらしいわ。

 きっと、軍の関係者で、何か機密があるんだと思う。ブログやプロモビデオも、応援メッセージを送る事はできるけど、絶対に返信はない。一方的な配信になっているみたい。あと、顔は絶対に出さないみたいね。

 プロデューサーAT」


―今さらだからこそ登場人物―


天王寺アリス(一人称『私』)……軍を倒し、息子を取り戻そうとしているシングルマザー。


エリオット(一人称『僕』)……軍のトップ。武力行使による悪政を行う支配者。アリスの未婚の夫で、大学時代の後輩でもある。


ルイーナ(一人称『ボク』→『オレ』)……アリスとエリオットの息子。『Luna』という名で活動する事も。


竹内イチロウ(一人称『私』)……タケ。竹内一浪。エリオットの側近の軍医の男性。


エルリーン(一人称『あたし』)……反乱組織の女の子。非戦闘員。


ダノン(一人称『俺』)……母の跡を継いで、反乱組織のリーダーになった男性。


ジーン(一人称『おれ』)……エルリーンの叔父で、反乱組織の一員。


リリン(一人称『私』)……反乱組織の台所仕事をしている女性。ノアという名の息子がいる。


ミューリー(一人称『私』)……故人。ダノンの母で、反乱組織の前のリーダー。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ