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自分でも

 僕とクリスタル・ゴーレムの魔力のつながりが切れたのを感じる。

透明に輝いていた体ははただの土くれへと戻り、形も崩れて地面に還っていった。

さっきまで雷撃を受け止めていたゴーレムがあった場所には土の小山だけが残されている。

 魔力の調整が困難なためか、ストーン・ゴーレムよりも持続時間が短いらしい。まだまだ課題が多い魔法だな。

 ゼクスとの戦闘が終わり、周囲にマリグネも獣の気配もしないので僕はほっと一息つく。

真っ二つになったゼクスの亡骸からマリグネ・ケルンを探し出し、血を軽く下草の葉でぬぐった後布ごしに拾い上げてザックの中の水筒の水で洗い流す。

 僕は黒いマリグネ・ケルンを大切にザックの中にしまった。

「これからどうする?」

 僕はスクールカースト最下位としての分をわきまえ、アプフェルの意見を聞くことにした。

 だがアプフェルは呆けたような目で僕を見たまま返事しない。

「アプフェル?」

 僕がもう一度呼びかけるとアプフェルはやっと我に返ったように顔を上げた。

「あ、ああ、これからですわね」

 アプフェルは再びイェーガ―家の紋章が刻まれた懐中時計を取りだすと、時刻を確認した。

「そろそろ帰らないと集合時間に遅れてしまいますわね!」

 なんだかアクセントがおかしい。

「ローデリヒ、なら帰ろうか」

「もちろんだ。騎士たる者、五分前行動くらいできなくては」

 剣にべったりと付着したゼクスの血と脂を布でぬぐい、鞘に納めながら答えた。

「じゃあツィトローネ。そういうことでいい?」

 だがツィトローネは僕のことを気味が悪いような、警戒するような目で見ていた。

 彼女のこんな目を見たのは初めてで、少し怖い。

 クリスタル・ゴーレムを使ったことが悪かったのだろうとはなんとなくわかるのだけれど、それがどうしてかまではわからなかった。

 困惑していると、ツィトローネの方から口を開く。

「ラッテ君、あなたは、何者?」

「何者って……」

 ツィトローネの質問の意味がわからない。見た目に何か変なところがあるだろうか?

「僕はただの、男爵風情だよ」

 とりあえずいつもの答えを返しておいた。

 だがツィトローネは、眉根を寄せて不機嫌な感じになって言った。

「冗談、言わないで。クリスタルなんて希少な鉱物、に魔力を通すなんて、並の魔法の使い手じゃ、決してできない芸当。希少な鉱物、たとえば、金に魔力を通すのが、困難だから錬金術師という、レアな職業があるくらい。鉄に魔力を通すのが、困難だから名だたる鍛冶師が、打った剣には万金の価値がある」

「金や鉄に魔力を通して、それが持続できれば金貨や剣として扱えるから、魔法使いとして一流だろうね。でも見ての通り、僕は水晶にほんの短時間しか魔力を通せなかった」

「あなたは、いつもそう。なんで、卑下ばかりする」

「簡単だよ」

 風が木々の間を通り抜け、いくつか木の葉が舞った。

 その時の僕は、自分でもわかるくらいに哀しい目をしていたと思う。

 今までの経験がフラッシュバックして、口の中を噛んでそれに耐えた。血の香りが嫌な記憶を少しだけ紛らわせてくれる。

「高望みすると、ろくなことがないからだよ」

 僕は集合地の方を向き、そっけなく告げる。

「それより、そろそろ集合時間だ。もう帰ろう」

 僕は彼らの返事も聞かずに、帰り道を歩き始めた。

 みんな、何も言い返さずに黙ってついてくる。

 自分でも嫌な対応をしているな、と思う。でも、止められなかった。


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