後始末
「今回も俺の負けか」
アルベルト先輩は皮一枚残して倒れなかった丸太を見てあっけらかんと呟いていた。
「いえ、今回は僕も危なかったです」
ローデリヒはわずかに曲がってしまった剣を見ながら嘆息していた。
一方、アルベルト先輩の剣は折れず曲がらずのままだった。
剣の状態から見ればアルベルト先輩の勝利だ。剣の巨大さと足腰の力を剣に伝える技術の賜物だろう。
競技の勝敗を分けたのは微妙な手の内の差か。
「剣で打ち合う勝負なら先輩が勝ったこともありましたしね」
「ふん、四分六で俺の負け越しだ」
ローデリヒもアルベルト先輩も、全てを出しつくしたのかすっきりとした表情だ。
「今回もローデリヒ選手の勝利です! 皆さま、惜しみのない拍手を!」
スヴェンの声と共に、会場から割れるような拍手が送られた。中には感極まって涙している人もいる。
ローデリヒ達は観客席に向かって深く礼をすると剣を鞘に納めて会場を後にした。
「アース・ゴーレム」
僕は樫の魔法杖を振るい、ゴーレムを生成する。それをローデリヒたちが切った丸太の方へ向かわせた。
後片付けは僕の仕事だ。
ゴーレムは力が強いのでこういった重量物を運搬する仕事にはうってつけだ。僕の背丈ほどのゴーレムが真っ二つになった丸太を転がし、荷車の前まで運んだ後、なんとか持ちあげて乗せる。アルベルト先輩が切りそこなった丸太を押してへし折り、二つにして同じように運ぶ。
ヴァイス山での一件以降、魔力の相性がいいヴァイス山の中でなくても時々はストーン・ゴーレムが創れるようにはなってきたが、まだ成功確率が高くないので無難にアース・ゴーレムにしておいた。
もちろん僕に拍手が送られることはない。
小柄なゴーレムたちが黙々と材木を運ぶ様は、船着き場や建築現場で腰を曲げて汗水たらして荷物を運搬する人夫のようでしかない。
割れんばかりの拍手と共に会場を去るローデリヒ達を尻目に後片付けにいそしむと、なんだか落ち込んでくる。彼らと自分の住む世界が違うと、まざまざと認識させられる。
かたや金色の剣を手にあらゆるものを切り裂く。
僕は地味な色のゴーレムを使って後片付け。
僕に対してはせいぜい父上の商会の関連の人、作業員の人が声援を送ってくれるくらいだ。建築や土木の世界で、ゴーレムが人の手では運べない荷物を運び、人の手で細かい作業を行なうという分業制が多く取られている。
ゴーレムのない職場では人の手で重量物を運ばねばならないため、労災も増えてしまうので危険な仕事を請け負ってくれるゴーレムはありがたい存在らしい。
今までは知識としてしか知らなかったけど、こうして自分の魔法を大人に受け入れて、認めてもらうのは嬉しい。
一応は自分も人の役に立てているから、これでいい。
高望みすると碌なことはなかった。




