↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dear you  作者: くらうでぃーれん
プロローグ
PR
1/26

 このお話は、3,4年前に書き上げ、後に手直しを加え二度にわたり新人賞に応募した作品です。1度目は一次落ち、2度目も二次であっさりと落ちてしまい、日の目をみることはありませんでした。

 二度目には選評を頂いたのですが、一言で言うと「ありきたり」と断じられてしまいました。

 ただ正直なところそれは自覚があり、「よくある話を自分が書いたらこうなります」というものを書きたかったのですが、当然というか限りなく素人の自分がやるにはあまりに早すぎたようです(そもそもの文章力については触れない方向で)。

 とはいえなんだかんだ、今でもこの作品の空気は自分で気に入っていたりします。決して明るくはなく、静かに沈み込みながらも暖かく包まれるような雰囲気をイメージして書いているのですが、少しでも伝えることができているでしょうか‥‥。

 わりとアホな作品ばかり投稿していますし、こういうのも書くんですよという自己紹介も兼ねてせっかくなのでこの場で投稿させていただこうと思いました。

 気になる部分はあれど、さすがに書き直す余裕もないので特には手を加えずそのまま投稿させていただこうと思います(多分書き直し始めたら止まらなくなって、特にラストはまるっと変えることになりそうなので‥‥)。

 一番近そうだったのでヒューマンドラマなんてオサレめいたジャンルを選択していますが、普段ジャンルとか気にしてないので自分でも良く分かってないですw そんな大層なお話でもないので気楽に読んでいただけたらと思います。

 

 出来るだけ多くの方に見ていただきたいので、隔日くらいのペースで更新していきたいと思っています。投稿し終えるのに少しばかり時間がかかるとは思いますが、最後まで読んでいただけると幸いです。


「それじゃあ今期のゼミはこれで終わり。単位、しっかり取ってくるように」


 ゼミの教授の言葉で、集まっていた6人の大学生たちはぞろぞろと研究室を後にした。

 この春から4年生になる男子学生3名、女子学生3名のゼミ生たちは、来週に控える期末試験をとりあえず頭の隅に追いやって、全員で夕食を食べに学校の近所の牛丼屋へと向かった。


 学年が学年だけに試験のことや就活のことも当然話題に上がるが、大半が四六時中真面目に勉学に励むことに抗う平均的な学生で構成されているため、話題の中心は日常的なくだらない話、そして今度みんなで行こうという飲み会の話題でもちきりだった。

 各々安い牛丼1杯で2時間近く粘り、店員にあからさまにイヤな顔をされ始めてようやく解散という運びとなった。


 6人中2人は原付のため早々にその場を後にし、残り4人もほとんどが帰り道の方向が違うため、互いに軽い言葉を交わしてそれぞれの帰路についた。唯一帰る方向が同じだった2人は、自転車を並べて商店街のアーケードの下をのんびりと走っていた。


幸一(こういち)くんは、これからどうするの?」


 少し控え目な、彼女自身の性格を表すようなどこか自信のなさげな声で、その女子学生は隣に並ぶ男子学生に声をかけた。彼女の言う「これから」とは今日この後の予定ではなく、卒業後の進路を指していることは幸一と呼ばれた彼には伝わったようだった。


「とりあえずバイトを続けて、それからはやっぱりまだ決まってないよ。相変わらず何がしたいか分からなくて」


幸一は困ったような笑顔を浮かべてそう答える。一見気にしていないようで、しかしその話題になるとわずかに声に頑なな硬さを帯びたことを、幸一は自覚していない。


愛衣(あい)ちゃんは、どうしようと思ってるの?」


 愛衣と呼ばれた少女は少し表情を落としてそれに答える。


「うん、色々考えてるけど、やっぱり公務員を本命で頑張ろうかなって、最近考え始めてるの。もう4年になるのに、こんな迷ってていいのかなあ」

「別にそれもいいと思うよ。言い方の問題かもしれないけど、柔軟な対応なんじゃない? 俺なんてそんなレベルですらないんだしさ。俺ももうちょっと柔らかい考え方ができればこんな悩んでないんだろうけど」


 幸一がどこか自嘲気味にそんなフォローを入れると、愛衣は少し慌てたようにあわあわと否定する。


「別に、幸一くんのことを悪く言ったわけじゃないよっ。というか、わたしとしてはそういう周囲に流されないっていうか、我が道を行くみたいな幸一くん、すごいと思うし」


 果たしてそれは褒め言葉なんだろうか。しかし愛衣に悪意がないことは見れば分かる。何とも言えない気持ちに苛まれながら、微妙な表情を押し隠して幸一はとりあえず「ありがとう」と返しておいた。


「就活してないのって、不安になったりはしない?」

「そりゃあなるよ。できることなら卒業までに何とかしたいとは思ってるし」

「そうなんだ。聞いておいてなんだけど、ちょっと意外。幸一くんっていつも飄々としてる感じするから」

「あー、それたまに言われるけど、多分細かいこと考えてないだけなんだよなあ」

「ふふ、そういう受け答えがそうなんだよ」

「そうなのかなあ」

「うん、きっとそう。あーあ、早く来年にならないかな。どうなるにしたって、就活ももう終わってるだろうし」

「俺もどうにかなってればいいけど。まあ、だからって今更適当はできないけどさ」


 そのままどこかのんびりとした会話を続け、やがて辿り着いた交差点。2人の帰り道はここからは別である。


「それじゃあ、また」

「うん。‥‥あ、あの、もし相談とかあったら、いつでも言ってね」

「ありがとう。その時はご飯でも食べながら話聞いてよ。もちろん俺のおごりで」

「うん。楽しみにしてる」


 少しおどけた口調でそう言って幸一は信号を渡り、愛衣はしばらく幸一の背中を眺めてから、道を曲がって少しだけ遠まわりになった帰路へと着いた。


×××


 先ほど交わされていた会話の通り、幸一は就職活動をしていない。しかしそれは就労意欲がないというわけではなく、ただ自分の進むべき道を見つけられていないからだった。

 働くのならば本当に自分がやりたいことを見つけ、それに従事したい。好きかどうかも分からないことに毎日の大半を割かれたくはない、というのが幸一の考え方だった。

 興味のある分野を見つけ、その中で自分なりに楽しいことを発見していくという、恐らく多くの学生がしているであろう就職先の探し方を良しとせず、より人生を有意義に過ごしたい。そうでなければ、生きるために働いているのか、働くために生きているのか分からない。そうなることが耐えられないと思っていた。


 とはいえ自分と考えの違う他人を責める気などは全く無く、あくまでそれは自分の考えとして受け止め、どちらかと言えば先程愛衣に話していたように、自分は異端であるという認識もある。

 だからそれが極端な考え方であることは幸一自身理解しているが、だからといって妥協してしまえば、自分の人生そのものを軽んじているような気がして許せないのだった。


 しかしその〝本当に自分のやりたいこと〟が幸一にはどうしても見つけることができず、そのため就職活動もなにもしないまま停滞という状況が続いていた。


 もちろん何の行動も起こさず漠然と何がしたいのだろうと考えているだけではなく、今に至るまでの大学生活で様々な経験を積んできていた。

 アルバイトでは飲食・レジ打ちといった基本的なものから、引越しのような肉体労働やイベントの裏方、チラシ配りなどの単純作業や一般の家々を訪問していくようなものまで、比較的短い期間で多種多様なアルバイトを行ってきた。


 その他にも電車を活用したり自転車であったりと手段は様々な旅行に出かけたり、色んなパートでバンド活動をしてみたり、1日中引きこもってひたすらゲームをやりこんでみたりと、謎のベクトルの努力をしたこともあった。とにかくどんなことでも、自分が打ち込めるものを見つけるために貪欲に未経験のことには手を出し、求めるべきものを捜し続けていた。


 インターンシップ(本格的な職場体験のようなもの)にも参加したし、企業説明会にも足を運び、企業の人にかなり踏み入った質問をしたりと、他の学生同様、もしくはそれ以上に一般企業への就職も真剣に考えていた。学校での単位も順調に取得しており、今回の試験をうまく乗り切れば必要な単位はゼミと最後の卒論だけとなる。


 しかしそれでも、幸一は生涯を費やすべき何かを見つけ出すことはできなかった。

 そのため幸一は多くの同級生が就活に打ち込むためにアルバイトを辞めていく時期になっても働き続け、ただひたすらに自分のやりたいことを探し続ける日々を送っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。