始まり
えーっと、そうだな。
そう、まず僕の話は置いておいて、僕の父の話をしよう。
僕の父は警察官だった。
立派な警察官だ。なんで過去形かって?
父はもういない。殉職したからだ。
父は事件に巻き込まれ、人質を取った犯人に撃たれた。
「人質を解放しろ。さもなくば撃つ」
犯人が動いて、銃弾が一発。
銃声は一度だけだったように聞こえた。
違う、そして乾いた音がもう一発。
父の銃弾だ。
父と犯人は倒れた。共倒れだ。
めでたし、めでたし。
……まあ、そうはいかなかった。
犯人の弾は父に当たって、父の弾は人質に当たった。
それだけだ。
遺族から賠償を求められた。
でも父は不起訴になった。
当然だ。父は仕事をしただけなんだから。
父は何も悪くない。
僕は警察官になった。
身内に犯罪者がいれば、警察官にはなれない。
だから証明された。
父の判断が、死が正しかったこと。
あの日の銃声が、正しい音だったということが。
……そうだろ?
そうでなければ困る。
ある日。
僕は人質を取って建物に立てこもった犯人と対峙していた。
銃を持った犯人。怯えた人質。震える手。
見覚えのある光景だった。
僕は警察官だ。正しい側だ。
正しい側なら、迷う必要なんてない。
正義はいつだって簡単だ。
僕は何を考えていたんだろう。
父のことか。
人質のことか。
正義のことか。
犯人が動いて、銃口が動く。
乾いた音。三発だ。
足、腹、肺。激しい痛み。僕は撃たれたのか。
それから、目の前が真っ白になった。
光だった。
眩しいほどの光。
そして、僕は、どうやら死んだらしい。




