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占い師に会ったが、血気盛んだった!

 俺は紫色のレンガで出来た建物を見上げる。両脇にも建物があり、それらより小さい事から少し圧迫された印象を持つ。

 目の前にはドアがあり、すぐにでもノブを捻り、入る事が出来る状態だ。

 そのドアの上に少し風化し、所々色があせている黒色の木で出来た看板がある。

 看板には[罪占いの館]とかかれている。


 俺、強欲とか言われるのかな? あなたは罪な人ですね……は何かドラマっぽくなってしまうな。けちと言われれば悲しくなり、守銭奴と言われれば泣くかも知れない。俺自身、お金は大事だとは思うけどな? 


 そんなマイナス方面しか考えていない俺はノブに手を掛け、中へと入った。


 中は綺麗にされており、レンガの壁はさておき、木の床はぼろぼろではあるが、埃が積もっている訳でも鼠の死骸が転がっている訳でもない……ぼろぼろではあるが。


 今見た所の間取りは入ってすぐの所に上への階段と左に部屋、奥へ続く廊下があり、廊下にも左右に部屋がある様な感じだ。外から見たときはもっと狭いと思っていたが、以外に広いのだろうか?


 俺が入り、ドアがドアが閉まったのを聞いてか、廊下の奥から俺より年上であろう、十代後半位の女性が出てきた。


「いらっしゃい。何のご用かしら?」


 占いの館に入ったら用件を訊ねられた。おかしくね?


「ここで占いをしてくれると聞いたもので」


「ああ、占いね。分かったわ。じゃあ来てくれる?」


 少々不安になって来た。詐欺グループの根城に入ってしまった感。

 俺はその女性に連れられ、廊下にある部屋の一つに入る。その部屋は一つの丸机を挟む二つの丸椅子以外、外套を掛ける様な突起が壁にある位で、占いでは広さを必要としない為か少し手狭だ。片腕が完全に伸ばしきれない事から、幅一メートルが良いところだろう。


「そっち座ってねー。ういしょっと……」


 女性は俺が奥の椅子に座ったのを見て、机に直径三十センチ程の大玉の水晶を置き、自分も座る。


「それじゃ、何について占う?」


「……それは、何でも占えるって事ですか?」


「ええ。色々聞かせてもらうけどね」


 どうだろう? 占いと言うものはやはり情報から察してどうとも捉えられる様に結果を出すような紛い物なのだろうか? いや、魔法や精霊の存在があるこの世界。きっと本物の占いだろう。


「親の……両親と今、離れ離れになっていて、音信不通なんです。両親の居場所を占えますか?」


「そりゃなかなかに大変だろうね。良いよ。これからいくつか質問するから答えて」


「分かりました」

 

 ……ん? ちょっと待て? 良く考えれば、俺、母さんと父さんの事、名前と種族位しか知らない気がしてきた……。具体的な事を言われない事を願おう。


「そうだなぁ……じゃあまず、ご両親の名前を」


「父がジークで母がレティアです」


「ふむふむ……」


 俺が答えると少し顔をしかめ、水晶に手をかざす。俺には見えないが何かが見えるのだろう。きっと。


「目を閉じて、一番……今までで一番楽しかった、幸せだった事を思い浮かべて……」


 俺は言われた通り目を閉じて思い浮かべる。楽しかった、幸せだった事は日々の生活。とても充実していた日々。


「もう……良いよ」

 

 目を開けると占い師の女性は苦々しい顔をしていた。


「あの……どうかされましたか?」


「いや、何でもない」


 俺が訊くと、首を横に振るが、苦い顔はそのままだ。


「君のご両親の居場所だが、断片的な単語だからよく聞いてくれ。……『境界線』『里』『実り』『長』。それから……『大樹』だ。私はこれ以上助言をする事はしないし、詮索もしない。だが、一つだけ忠告……君、()()()()()()()


「……それは……いえ、ありがとうございました」


 おそらく何を訊いても俺は同じ質問を繰り返すだろう。それはここで打ち明けるべきではない。


「他にも何か占ってく?」


 その問いかけに俺は答える。


「いえ、正直占いは信じてませんから」


「……」


 俺の言葉に少し呆然としていた女性だったが、すぐに気を持ち直した様で、苦笑する。

 

「あはは。じゃあ、何で此処(占いの館)へ来たのかな?」


「これ」


 俺はアイテムボックスから一枚の紙を取りだし、見せる。


「ん? ここの地図かい? 確かにここを指しているみたいだけど……?」


「会いに来ました……居ますか? ()()()()()()()」 


 ――。


 場に一瞬の静寂が訪れる。

 

 俺としては素直に歓迎して欲しかったんだけど……そうもいかないか。


「……しっ!」


「おっと」


 短く吐き出された息と共に机に乗っていた水晶が顔目掛けて飛んでくる。三キロはあるだろう水晶玉が物凄い勢いで飛んで来た物だからつい、顔の前に手を出して受け止めてしまった。視界が奪われた事に少し焦りを感じ、すかさず、最大限の『レジスト』を全身に掛ける。


 パキン。


「……!?」


 鳩尾に鋭い衝撃が走ったのを感じ、水晶玉を掴む右手をおろす。


 薙刀だろうか? アイテムボックスから出したであろう長い棒の先端についている刃の部分が俺の腹に当たり、欠けていた。


「危ないじゃ無いですか。下手したら心臓ですよ? 死んでたかも知れませんね?」


 俺はお返しに水晶玉を全力で投げつける。


 咄嗟に屈もうとしたのだろうが、俺が机に押さえ込んだ薙刀に引っ掛かり、体勢を崩してしまう。

 ヤバイな……当たらないように投げた筈の水晶の真正面に入ってしまった。こうなったら魔法で破壊か阻止を……。


 と、俺が逡巡してしまったその時、横から手が伸びた。


「二人とも。危ないじゃ無いですかこんな狭い所で」


「ナイスタイミングです。タシューさん」


 さあ。本人も交え、色々弁明してもらおうか。


 

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