面接で大切なのは、未来予測だろう! 後編
次!
「はい! ヨルル・バーンです! はい! 好きな者はレトきゅんです!」
「お、おう……」
元気があるのは良いことだ。普通、自己紹介で話す好きな物は者になっている。
「全力でレトきゅんを応援します!」
いや、応援されても……。
次!
「ルル・ドーン! レトきゅん万ざ――」
「……」
次ぃ!
「ローズ・ガーン! レ――」
「……」
次ぃ……はちょっと待って――。
漫画かよ!? 漫画なのかよ!? バーン、ドーン、ガーンって漫画かよ! 擬音にも程があるだろ!
ふぅ……よし、心を入れ換えて次ぃっ!
「……レ」
「……?」
「…………」
「あの、自己紹介……」
「……」
バタリ。
誰かー!? 名前も言えないまま、倒れちゃったよ!? だ、大丈夫だよね?
次!
「……」
バタリ……。
次!
「し、失礼します!」
次の少女は二人を引きずって帰って行く。よし、次会った時に訊ねよう。自分のアピールを置いて倒れた二人を労れる優しい点は大いに評価出来る。あれ? 引きずるのは労ると言うのだろうか?
……次! 最後!
「はい。長井 凜です! 調合は始めたばかりですが、筋は良いと言われた事があります! 後、回復魔法使えます!」
本当に、何やってんだよお前ら。
「面白そうだから合格。んじゃクラスの顔合わせも兼ねて、今から行くか」
「え、今からですか……?」
「私はいつでも良いです」
トリン君は躊躇うが凜は普通に了承してしまった。多分授業の事を忘れていないトリン君が正しいだろう。
「そうだな……授業があったな。それじゃ授業が終わるタイミングでまた来るから」
「あ、了解です。ありがとうございます」
「はい」
俺は歩いて帰る事にした。
「ぁ、レト君おはよぅ。どっか行ってたの?」
「ああ、昨日言ってた助手の募集にな」
俺が教室に入ると、まだ少し眠そうなアリスに声を掛けられる。
現在教室にはアリス、ドラヴィス、和樹と姉妹が居た。
アリスは精霊魔法の練習? をしていた様で、机の上に乗っていた、くまのぬいぐるみが片腕を挙げてこちらに挨拶してくるので、俺も片手を挙げて返す。
和樹は読書中で姉妹は観察中。え、何をって? 勿論和樹だよ爆発しろコノヤロー。
ドラヴィスは机に水っぽい粘土を乗せて……え、陶芸?
今更だがこのクラス、統率がとれてないな……。
そしていくら放任主義なフェーン先生でも流石にもうちょっと授業とかイベントを企画して欲しいものだ。なるべく学園内で……。
「やっぱり凄いねーレト君は」
アリスがそう言って微笑む。俺は自分の席――前列の左端に一度座り、後ろに座るアリスの方へ腰を捻る。
「何が?」
「色々だよ? する事成す事、私には到底出来ない所とか……魔法も上手だし。私とは大違いだよ」
「そうか? それを言ったら俺だってアリスの精霊魔法とか真似出来ないし……あれだな、敵の魔法は大きく見えるって奴だな。うん」
隣の芝、魔法バージョンである。タシューさんがよく言ってた。
「ふふっ。私はレト君の敵じゃないですよ」
少し眠くなって来た。昨日『強欲の書』で小説を検索して読み耽ってしまったからかも知れない。
アリスの机の上に目を向けると、くまさんがシャドーボクシングのようにパンチやキックを宙に向けて放っていたので、試しに手を向けると、手を的にしてパンチやキックがポフポフ当たる。
「眠い。平和だ」
「そうだねー。あ、そういえばレト君」
「ん?」
アリスが俺の服を指差して言う。
「制服新しいの貰ってたけど、白衣は着るんだね。似合ってるけど」
「ありがと。まぁ俺自身気に入ったし、調合の時とかこの方が安全だろ? それも何となくではあるんだが……はぁーふぁ」
「はぁぅ」
俺が欠伸をするとアリスもつられて小さく欠伸をする。
「眠いな」
「良いお天気だからねー。ぽかぽか」
確かに窓側の俺やアリスが座る席は日の光が良く当たり、眠くなる。そして、俺は未だくまさんにぽかぽかやられてる。
「……このまま寝そうだから眠気覚ましにこの前言ってたアリスの魔法の訓練でもするか?」
「ぅん……」
アリス、もう寝てたのか。
「別に無理にやらなくても良いよ?」
「やるぅ……」
俺が席を立つと、アリスも立ち上がる。
運動場か他の教室か屋上か……教室で良いか。
俺は隣の教室に入る。アリスも続いて入って来る。
「……何しよう?」
「私に聞かれても……」
即興でするべきじゃなかったか……そうだな……前の詠唱の事もあるから理論的な所から教えてくか……。
俺は備え付けられている黒板に向く。チョークを一瞬探すが、見当たらないので、実演も兼ねて、無詠唱で出した『アース・ボール』から魔力操作で毛糸玉のように線を出して黒板を這わせる。
「おぉー」
「先ず、前提としてだが、俺が教えるのは魔法の種類や詠唱を除き、俺流の方法だ。俺が出来てもアリスや他の人に実証出来る事は確実では無い」
まぁ当然なのだが。教科書なんて気にしてたらアリスが魔法を覚えられる筈がないのだから。
「――という前提の元、今、俺と同じ様に魔法を使えるレベルにならなければ魔法は出来ない」
「……?」
「えっとだな……山。うん、山があるとして――」
黒板に這わせる土で山を形作る。次に『ウォーター・ボール』を出して、山の頂きから流れるように水を這わせる。
黒板から離れることは無いが、流れる水の勢いで超ミニ山の斜面が少しずつ削れる。小学校で誰もが習うであろう、川の成り立ちである。
「これが川だな。この山はアリス自身の素質と仮定して、川の水は魔法の方向性としよう。そしてこの水が行き着いたそこを海……いや、湖として考えて、この湖が魔法の種類だ。火、水、土、風、闇、光、無属性が含まれる属性魔法が主だ。そして稀に精霊魔法や固有魔法の湖を持つ人がいる。一応言っておくが、この湖が使える魔法に相当する。つまり、アリスは水源から精霊魔法の湖へ力が働いていると考えれる訳だ」
「ふむふむ」
俺が、これまたアースボールから棒を出して、要所要所で指す。アリスは端から机と椅子を持って来て、そこに座り、アイテムボックスからノートを取り出して、メモしている。
「個人で使える魔法は決まっている。と、魔法書等で見たり聞いたりした事はあると思うが、それは違う。二種類の魔法が使える人は二つの、三種類の魔法が使える人は三つの湖を持っていて、そこへ流れ込む川を持っている……っと、これは流石に平面じゃ難しいな……」
俺はアース・ボールに魔力を追加して大きくし、教室の地面に山になるように置いた後、上からウォーター・ボールの水を流す。ここで変に流れないのは勿論、俺が魔力操作で操っているからである。
「同じ場所に水が通り続けると、それだけ山が削れるだろ? そうすると他に分岐しにくくなる。多くの川――分岐を作るには、流れが穏やかであまり削れていない時に、意識して水の流れを変えなければいけない。最初に少しでも分岐出来れば後はそこへ水が流れる」
「うん……? 流れが穏やかな時って、子供の頃って事?」
「そう、正解だ」
俺は一度水を回収し、山を元の形へ戻す。
「成長につれて、体内の魔力量が増えて勢いが増す。最初から使える魔法は決まっていると言われているのも相まって、余計に発現した魔法へ力を注ぎ勝ちなんだろうな。後、子供の頃と言っても、意識出来るかが肝だから難しい所ではあるな……」
「……てことは私はもう精霊魔法への川が深いから他の魔法は使えないって事?」
「いや、それが出来なければ教えようとは思っていない。俺がアリスへ教えるのは、『魔力操作』だ」




