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サバイバル学習、五日目!

 俺は目を醒ます。……と、言っても意識がはっきりするだけで、目蓋一つ動かせない。

 夢か? 一瞬そう思えたが、微かに顔に当たる風や匂い、音から夢ではなく現実だと分かる。頭や手、脚には葉っぱのような物が擦れる触感があるが、こちらも動かない。おそらく地面に寝そべっているのだろう。

 

 何も出来ないので、眠りにつこうか少し迷っていると、俺が作った小屋の扉が開く音だろうか? キィ……と少し聞こえた。


 「アリスちゃん、レト君はどう?」


 ロイルの声が近づいて来る。

 

 「ぅん……まだ目を覚ましてないよ」


 アリスの声がすぐ隣で聞こえる。少し眠そうな声からも、昼寝――今が昼とは限らないが――を取っていたのだろう。


 「大樹の木陰に移動させた僕が言うのも何だけど、やっぱり小屋の中に運んだ方がいいかな?」


 「うん……そうしよう。私もちょっと頭痛いから入る」


 風に当たりすぎたのかなぁと、アリスが言う。


 しばらく、引きずられる体の心地よさと共に耳を澄ました。会話の内容から察するに俺が倒れて木陰に移されて半日ほど、今は夕方に差し掛かろうかといった所らしい。


 意識を失ったのは早朝なので、半日も気を失っていたのか……。

 そう思った俺は、ふと、最後に見たステータスを思い出す。MPが大きくマイナスの領域に入っていた。マイナス自体、その表現が有ることすら俺は知らなかったが、残りMPが一度に減ったり零に近づけば貧血のようにくらくらするなど、まぁ殆ど貧血に近い症状が起こる。

 今回もその延長なのだろうが、半日もの間気を失っていて、現在も意識は回復するも、体は動かせず、舌や唇を動かす事が出来ず、コミュニケーションが取れないのは全くもって酷い。


 俺には今回の原因に一つ、心当たりがある。それはつい昨日手に入れたニュークスの素材の事だ。


 あれは、性質として昼間は保存に倍の魔力が必要、と『強欲の書』にあった。……つまりはそういう事だ。


 俺の『アイテムボックス』だが、最後に容量を拡張したのは二、三年ほど前だった筈だ。数週間、授業で使う魔力を残してひたすら拡張に使っていた。収納できるスペースも日々備蓄が増えるポーションを入れても体育館ほどまで拡げた。しかし、足一本が家サイズのニュークスではギリギリ。倍だと……納得だな。


 しかし、マイナスの時点でアイテムボックスが拡張出来なくて飛び出るって事ではないのか……うん。一つ身をもって勉強になった。


 因みに、父さんは机三つ分、母さんは倉庫一つ分、タシューさんは闘技場一つ分まで拡げているらしい。母さんは園芸や野菜の保管等に使っているらしいが、父さんでも必要なときにしか大きくしないとの事なので、いかにタシューさんが魔力を費やしたのか……今となってはとても尊敬できる。



 しばらく、アリスとロイルの雑談――魔法の事しかなかったが――を聞きながら魔力操作を試みる。マイナスの域からは脱したようで、少し反応があった。俺はその魔力を口に動かし、唇や舌を自由にする。しかし、すぐに無くなってしまいそうな程、微々たる量しか回復していないので、会話する余裕などない。


 「『……ァイテム・ボックス』」


 と、掠れた声で口に回復薬のビンを出し、中身を飲み込む。出来るだけ消耗せずに行った一連の動作だが、それでも、もう強化出来る魔力は無くなって、口から、カラン……と、音をたてて空になったビンがこぼれ落ちる。アリス、ロイルがこちらを振り向いた時には、俺の意識は再び、闇の中へと落ちて行った後だった。



 


 気がつけば朝だった。


 体調は元通りになり、体も自由に動く。

 俺は立って伸びをするが、丸一日動いていなかったからか目がチカチカして、足元も覚束ない。


 窓から外を見ると既に日が上がっており、外から二人の声が聞こえて来る。


 「っと、その前に――」


 俺は外に出ようとするが、先にステータスの確認をしようと、踏みとどまる。


 「『ステータス』」


 ――――――――――


 姓:アルトレア 名:レト 年齢 13


 HP 3000/3000 MP 6000/6000


 体力 950

 筋力 1000

 魔力 2200

 敏捷 1180

 技能 1000

 物理耐性 960

 魔法耐性 1650


 スキル  自動HP回復(中)・自動MP回復(大)・痛覚軽減(大)・魔力操作(使用魔力軽減(特大)・パワー・レジスト)


 固有魔法 強欲の書・討伐の書


 称号 転生者


 ――――――――――


 予想通り、大幅に上昇していた。MPは千五百も上昇しているし、魔力や魔法耐性、筋力や体力も大幅に上がっている。

 そして、一番驚いたのが自動MP回復が中から大へ変わっているところだ。


 討伐の書にはニュークスの文字、そして魔法系が上昇のボーナスだった。



 それらを確認し終えた俺はまだ少しふらつく足取りで外へ出る。


 「おはよ……なにしてんだ……って!? なにしてんだよ!」


 ドアを開け、外の光景へと目を写すと、おそらく頑張っておこしたであろう焚き火が他に集めていたであろう枝の山に燃え広がり、大炎上してあたふたしている二人の姿があった。俺はすぐに『ウォーター・ボール』で、辺りの火を鎮火する。


 「レト君! 良かったぁ……ありがとう!」


 「レト君、無事そうで良かった……ずっと目を覚まさなかったから安心したよ」


 と、二人が駆け寄って来る。


 「うん、なんとかな……で、何しようとしてたんだ?」


 「ぅ……」

 

 「いや……その、レト君みたいに何かしらご飯でも作ろうかと火をおこしたまでは良かったんだけど、料理を作るにしても材料が無いのに気がついて、目を話した隙に……」

 

 まあ、そんなとこかと思ってた。


 「はぁ……いいよ、別に。俺が作るから」


 「ご、ごめんねレト君。私にも何か手伝える……?」


 「ああ、それだったら僕も……」


 「ならアリスは火の加減を見といてくれ」

 

 「はい」


 俺は焚き火……というよりはキャンプファイヤー跡を組み立て直して、火をつけて、水を入れた鍋を置く。


 「んで、ロイルは薪になりそうな枝、取って来てくれるか?」


 「分かった」 

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