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閑話 アリスの絵本 後編

 「こちらこそお手柔らかに……」


 そう言って、レト君は奥の方へ歩いて行きました。

 一回戦目でキューテちゃんと戦っていたレト君は凄く強かったのだと思います。ただ、私なんかとはとてもかけ離れていて、これから試合だ、というあまり実感が湧きません。

 くまさんに頼りきっているからでしょうか?

 でも、私は出来る限りのMPをくまさんに渡しました。

 少し、渡しすぎてしまって、目がチカチカして脚もふらふらします。けど、レト君は私の魔法を見たいと言ってくれたので、ここで倒れる訳にはいきません。


 フェーン先生の開始の合図が既にあった様で、レト君が少しずつ近寄って来るかと思うと、気がつけばすぐ目の前までヒュンと跳んで来ていました。私は慌てて、


 「精霊魔法……神霊・九十九神」


 と、くまさんを起こします。


 レト君は起き上がったくまさんを見て、びっくりして少し固まってましたが、ギギギと顔をこちらに向けて、


 「なぁ、アリス……これ、少し精霊魔法と違うのは気のせいか?」


 と、聞いてきましたが、その動きが面白くて少し笑っちゃいました。くまさんが私の方を見て、ビシッと右腕をもふもふの頭に乗せて敬礼してレト君の方へ向かう。くまさんはレト君の顔に向かってパンチするけど、レト君が凄い反応でさっとよけて、更にくまさんの追撃を凄い風の魔法で避けます。私とだいぶ距離が空いたけど、レト君は大声で、


 「あの針、死なないよな!?」


 と、私に問いかけて来ます。そういえば、くまさんをもらった時に中の綿に紛れて針が入っていて、チクッと手に刺さった時、しばらく手が痺れたのを覚えています。

 お裁縫は得意ではなくて取り出そうにも取り出せなくて放って居ましたが、くまさんが自分で私に刺さらない様にしてくれていたのでしょうか?


 私が大丈夫だと返事をすると、くまさんが怒ってぴょんぴょんしているのが見えます。私の精霊魔法では行動範囲が決まっていて、そこから出ると渡した魔力が減って行くのです。何もしなかったらあまり減りませんが、動けば動くほど激しく減ってしまうので、くまさんは何も出来ず、ジタバタしています。


 その後、くまさんが掴まれ、行動範囲外に連れて行かれ、更に魔力を吸収してしまう結界にくまさんに渡した魔力を吸われて、私は降参するしかありませんでした。


 ずるいです……なんかずるいです。


 私はレト君に文句を言って居ましたが、数秒後には何故かとっても口角が緩んでいました。


 何故でしょう? でも、胸の辺りがふわふわしていい気持ちです。


 

 夜、私の部屋に戻って、棚にくまさんを置いて、パジャマに着替えて、ベッドに潜って、近くの魔術具で明かりを消します。

 いつもならすぐに眠れますが、今日はあまり眠くありません。

 

 私は体を起こして、明かりをつけて、『アイテム・ボックス(本棚)』から絵本を取り出します。


 小さい頃からずっと読んでいるこの絵本はお母さんにもらった物です。




 ――あるところに一人の魔法使いさんが居ました。

 ――魔法使いさんはずっと一人で旅をしていました。

 ――するとある村にたどり着きます。

 ――村は家や井戸や畑を荒らされていました。

 ――魔法使いさんは困っている村の人に話を聞くより速く新しい家を造り、井戸を直し、畑に恵みを与えました。

 ――村の人はそれに感謝しました。魔法使いさんは村の人に訳を聞きます。

 ――曰くそれは魔物の仕業でした。

 ――それを聞いた魔法使いさんは村に囲いを造り、魔物が入って来れない様にしました。

 ――村の人は更に感謝して魔法使いさんを持て成そうとしました。

 ――しかし魔法使いさんは既に村を離れていました。

 ――魔法使いさんはずっと一人で旅をしていました。

 ――するとある村にたどり着きます。

 

 そんな風に延々と魔法使いさんは人々の悩みを解決するのです。私は殆ど暗記していますが、何度も読み返せばその時その時の私の気持ちで受け取り方も想像する人物像も変わるのです。


 その後も、火で、水で、風で、土で、闇で、光で――様々な悩みを持った人々に魔法使いさんは会い、それを助けます。魔法使いさんは一切見返りを求めませんでした。

 

 ――魔法使いさんはずっと一人で旅をしていました。

 ――するとある村にたどり着きます。

 ――村は家や井戸や畑を荒らされていました。

 ――魔法使いさんは困っている村の人に話を聞くより速く新しい家を造り、井戸を直し、畑に恵みを与えました。

 ――村の人はそれに感謝しました。魔法使いさんは村の人に訳を聞きます。

 ――曰くそれは憎悪の仕業でした。その村は飢えてはいませんでしたが、怠惰や嫉妬故に他の村を襲い、その仕返しをされたと言うのです。

 ――それを聞いた魔法使いさんは多大な見返りを要求しました。

 ――村の人はその見返りを魔法使いさんに与える為、武器を売り、畑を耕しました。

 ――魔法使いさんは旅を止め、その村に留まりました……。


 物語を読み終わる頃には決まって少し眠くなります。でも、今度はもうちょっと起きていたい気持ちになりました。

 私は大きめのメモ帳を取り出して開きます。

 今日から日記でも書こうと思ったからです。


 

 こうして日記を書くのは初めてで、どうまとめて良いか分からなくて数ページ分使っちゃったけど、ここで今日の日記を終える事にしようと思います。

 いつまで続けられるか分からないけど、日記――あ、絵も書いたから絵日記か――は続けていきたいです。

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