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ゆるキャラはじめました  作者: 山下ひよ
25/27

【おまけ そのに】ニューカメ子目線

本編から半年後の話です。


 うちの名前は川島優花。

 地元の大阪の高校を卒業してすぐに、都会に憧れ東京に引っ越した。父親も母親も大反対やったから、半ば家出同然でした。

 せやけど、東京はうちに全然合わへんかった。就職した会社でも上手くいかなくなって一ヶ月でノイローゼになってやめてしまった。

 でも実家にはもう戻られへん。両親に「ほれ見てみぃ」なんて言われたら我慢できへん。


 どうしよう、どうしようと思ってたそんな時、関東に住んでるいとこのお姉ちゃんが顔を見に来てくれた!

 お姉ちゃんに泣きながら事情を話したら、ちょうど仕事に空きが出たからやってみる?って声かけてくれた。

 アルバイトやし、関東の端の方やから時給は安いけど、それでも良ければ紹介するよって。

 女神や! お姉ちゃん、女神や!

 私は詳しい話も聞かんとその案に飛び付いた。

 その時は思いもしてへんかった。

 まさかうちが、ゆるキャラの着ぐるみバイトをすることになろうとは。

 


 お姉ちゃんが働いてる会社は「天堂カメラ」っていう、うちでも知ってる大手。そこの広報での仕事を紹介されました。


 時給800円でもかまへん!

 着ぐるみバイトでも何でもやったる!

 他に道なんてないんやから!


 そう決意し、初出勤の日を迎えました。

 繁華街の大きなビル、その一フロアを借り上げているんやて。ホンマに大きな会社やなあ。

 ガラス張りのドアを開けると、いとこのお姉ちゃんがすぐ来てくれた。


「優花」

「お姉ちゃん!」


 お姉ちゃんの名前は藤井優里。ショートヘアーが似合うカッコいい出来る女性や! そしてうちの女神や!


「迷わなかった?」

「大丈夫。地図書いてもらってたし」

「そう、良かった」


 お姉ちゃんに案内されて会社の中を案内され、まずは人事の方と契約書を交わしました。

 ほおお、人事の時田さん、イケメンやなあ。


「優花。ちなみに時田は私の彼氏だから」

「へええ。…ええ!?」


 めちゃめちゃ驚いた。でもお似合いや! さすがうちのお姉ちゃん!

 時田さん、照れてはる。ええなあ。



 契約が終わったあと、お姉ちゃんから別の女の人を紹介されました。

 小柄ですごくきれいな人。この会社、顔で採用してるんか!?


「川島さん、初めまして。川島さんのサポートと研修を担当させていただく岬です」


 笑顔もきれいや。名刺に目を落とすと、そこには「広報部 岬ひまり」という名前。


「は、初めまして! 川島です! よろしくお願いします!」

「元気がいいですね!」


 岬さんは嬉しそうに握手をしてくれた。ええ匂いする!


「藤井さんのいとこさんなんですよね?」

「はい! お姉ちゃん、あ、えっと、藤井さん? の紹介で」

「お姉ちゃんでいいですよ。カメ子の仕事って大っぴらに募集できないから、基本的に紹介なんです」


 そりゃそうか。ゆるキャラの中身募集! なんていろいろぶち壊しやんな。

 うちらの様子を面白そうに見てたお姉ちゃんが、ここで驚きの一言を。


「優花。ひまりちゃんは先代カメ子だよ」

「ええっ!?」


 こんなきれいな人が、ゆるキャラの中の人! それ、もったいなくない!?


「ゆるキャラコンテストで二位を取ったり、カメ子を有名にした功績で、アルバイトから正社員になったんだよ」

「すごいですね! だからカメ子は引退したんですか?」

「あ、いえ、そのあともカメ子は続けてましたよ。ただ、やむ終えない事情で引退を余儀なくされまして」


 岬さんが困ったようにそんなことを言う。あれ、うちもしかして、聞いたらあかんこと聞いた?

 うちの目が助けを求めるようにお姉ちゃんに向くと、お姉ちゃんは笑い出した。え、何!?


「何て顔してるの。そんな深刻な話じゃないよ。ひまりちゃんが引退したのはね、赤ちゃんが出来たから」

「ああ何や、赤ちゃんかー。…ええ!?」


 まだ若いよね! 結婚してはるの!? あっ、左手薬指に指輪発見や!

 それによく見ると、お腹を締め付けないゆったりしたワンピースを着てはる。まだ全然膨らんでないけど、靴もぺたんこの履いてるし、ホンマに妊婦さんなんや!


「おめでとうございます!」

「ありがとうございます」


 岬さんは恥ずかしそうに返してくれた。この人めっちゃ可愛い!


「いやー、旦那さんが羨ましいですね!」

「ちょっと優花、その感想オッサンみたいだからやめなよ」


 お姉ちゃんに真顔で注意された。ちょっとショックや。


「カメ子の仕事は体力いるし、子どもたちは遠慮なくぶつかって来るから、さすがに妊婦さんには危ないんだよね」

「川島さんは体力も運動神経もいいって聞いたので、きっと子どもたちにも喜ばれるカメ子になりますよ」


 岬さん、何て優しい人なんや! 女神がもう一人いた!



 そのあとは三人で、ダンススタジオのような部屋に行きました。

 あっ、カメ子や! カメ子の着ぐるみが置いてある!

 お姉ちゃんに言われてから、ゆるキャラコンテストの動画をチェックしたから知ってる! 本物や!

 ていうか、あのコンテストで面白い動きをしていたのが隣にいる美人さんとは…。人生は予想外や。

 早速着せてもらいました。おお、結構大変や。しかも重い!

 そして動きづらくて視界も狭い。岬さん、これであんな動きしてたの!?

 ああ、でもええ匂いする。岬さんのフレグランス的なやつの匂いかな。

 二人にそう言うと、笑ってました。


「ちなみに、私が初めて来たときはお線香の香りでした」

「お線香!?」

「ああ、初代のおじいちゃんね」


 おじいちゃんやったの!? よくこんなん着てたな!

 と、そこで岬さんに言われました。


「カメ子は喋りませんから、気をつけて」


 はっ! そうや! 今の私はカメ子や!



 それからしばらく動きの練習をやらせてもらったんやけど、ホンマに大変やった。

 二十分ほどで頭を取ってもらうと、一気に涼しくなってほっとする。ああ、空気ってええなあ。

 お姉ちゃんに携帯扇風機を向けられながら、岬さんから注意事項を聞かされました。


 一つ、熱中症を防ぐために、普段から食事と睡眠には気を使うこと。

 一つ、体力作りをすること。

 一つ、「カメ子」になるのは一回三十分が体力的に限度と心得ること。

 一つ、三十分を越える前に限界を感じた場合は、近くにいるスタッフか広報の人間に「限界です」と伝えること。


 ハードな仕事やなあ、ゆるキャラって。

 この先、色んなゆるキャラ見るたびに「動きにくそう」とか「暑そう」とか「稼働範囲広くて羨ましい」とか「あっちは給料いくらやろ」とか思うんやろな。

 ああ、働くって大変や。

 せやけどやってやりましょう。

 もうやるしかないんです!

 うちは今日から、天堂カメ子や!



メインではありませんが、藤井さんと時田さんの関係がやっと書けて嬉しいです!

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