土くれ
「(~~~)」
※こんな感じでカギカッコのなかにカッコがあるのはしゃべっていることが分からないという意味です。分かりづらくてすみません。多分これからたくさん出てくると思います。
眩しくて目が覚めた。窓から暖かい日が差し込んで、吾を穏やかに照らしている。気持ちのいい朝だ。
......ん?
......窓から?
「うわっ!!」
どこだここは!吾は洞窟で暮らしていたはずじゃ、
「あ、」
そうか。洞窟を出て熊に襲われて、それで、女が来て、
ドタドタドタドタ!
そのとき、天井の上から階段を駆け下りる音が聞こえた。
冷や汗が流れた。吾は狐の化物で、相手はあの巨大な熊をも殺した正しく化物。まずい、逃げなければ。
寝台から転げ落ち、足の痛みにうめき声をあげながらも、吾はこの小部屋の扉を開くことに成功した。ここは突き当りだったようで、廊下は真っすぐに玄関の扉へつながっている。十歩ほどだろうか。一歩、二歩、三歩とがくがくしながら歩き、四歩目を踏み出そうとして、転んだ。
「うぎゃ!」
更には、階段を下りきった女が、いつのまにか吾の目の前にいた。
終わった。
這いずるように元居た部屋へ逃げ込もうとして、もちろんその女に捕まった。
「(あ、こら!おとなしくして!)」
女が何か喋ったが、お構いなしに爪を立てて引っかきまくる。なお効いている様子は全くない。
女は吾を強く抱きしめた。そして背中を優しく叩いた。
とん、とん、とん、とん。
次第に体から力が抜けていき、頭がぼーっとしてきた。そのまま吾はかかえられて、部屋に連れ戻された。
今、吾は寝台の上に座らされている。いつの間にか体を動かすのがだるい。気分が悪くて吐きそうだ。女は吾の左手首と寝台の柱を細い布の切れ端で結び付けた。結び方が随分緩いが、この女はこれで逃げられまいとでも思っているのか、部屋を出ていった。しかし、ずっと体が重くて逃げだす気は失せている。
よくよく考えれば、この女は吾を熊から助けているのだ。吾は気絶していたのだから、やろうと思えばいつでも殺せたはずだ。それなのに吾は目覚めた時、寝台の上にいた。要するに、この女は今の所安全だということだ。大人しくしておこう。さっきまではどうかしていた。
女はすぐに戻ってきた。器を持っている。気のせいか、ふわりといい香りがした。女は寝台に腰かけた。そういえば、女は吾の見たことが無い服を着ている。黒い衣装で、まるで喪服のようだ。器にあったのは、丸く平らで小さな土くれだった。どことなく甘い匂いがする。女はその土くれを一つつまんで、吾の口もとに差し出してきた。これは食べられるのだろうか。
小さく口を開き、土くれをかじった。
「甘い...」
甘い。落ち着くようないい香りもする。思ったよりサクサクしていてうまい。
女は首をかしげて何か呟き、もう一つ差し出した。またかじった。うまい。誰かに食い物を貰うのは久しぶりで、懐かしい気持ちになった。
おいしい土くれを二人で黙々と食べた。器がからになったとき、女はおもむろに話しかけた。
「(ところであなた、お名前は?)」
吾は首を傾げた。薄々気づいていたが、やはり言葉が通じていない。どうしたものか。
「くいもの、ありがとう」
女もまた首を傾げた。少し考えるようなそぶりを見せた後、女は自らを指して「よよ」と言った。これは......名前だろうか。吾が「よよ」と言うと、女は嬉しそうな顔をした。どうやらこの女の名はよよと言うらしい。
よよは、次に吾を指した。きっと吾の名前を聞いているのだろう。困ったぞ。当然吾には名前が無いから答えられない。黙っていると、よよは困った顔をした。よよは、よよを指して「よよ」と言い、寝台を指して「べっど」と言い、扉を指して「どわ」と言い、最後に吾を指した。吾は答える代わりに首を横に振った。
よよは考え込み、また部屋を出たのち、紙切れと筆と墨を持って来た。これまた変な見た目で、筆には羽がついている。そもそも目覚めた時からこの部屋には見慣れないものだらけだが。よよは紙に狐の絵を描いた。それを指してよよは吾を見た。「きつね」と答えると、よよは頷く。次に吾を指すが、また吾は首を横に振る。
よよはまた考え込み、何かひらめいたのかぱんっと手を叩き、吾を指して「きき」と言った。きつねだからききか?安直すぎないか?安直すぎるが、可愛い名前だと思った。吾はまだ重い腕を動かし、吾を指して「きき」と言った。よよは吾をぎゅっと抱きしめた。嬉しそうに何度も「きき」と呼びかける。
吾の名前はきき。吾の名前はきき。頭の中で繰り返した。
名前をゲットしました。キキちゃんです。可愛いね。近頃忙しく、というか年中忙しく、おまけに文章力が乏しいのであまりぽんぽん投稿できないのですが、月に一回は必ず更新するので気長に待っていてください。
ところで私ロリ狐大好き人間なんですが、なろうでオススメの狐っ子のお話があったら教えてくれると嬉しいです。




