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白ぎつね  作者: 野ささげ
3/6

化け狐

挿絵をつけたぁい...

 夢から覚めた。

 寝転んだまま、どんな話だったか記憶を辿っても、曖昧になってどうにも思い出せない。まあ、夢というのは得てしてそんなものか。だが、ただ一つはっきりと言えるのは、それが酷く寂しいものだったということ。なぜ寂しかったのかといった、諸々のいきさつは全く見当がつかない。それなのに、漠然とした概念のみが、(われ)の頭に焼き付いている。


 それよりも。

 一体全体ここはどこなんだろうか。体を起こすのが面倒で、頭と目だけ動かして周りを見渡した。吾がいるのは洞窟の行き止まりの薄暗い所で、出口から朝日が差している。ここは吾の巣穴よりずっと広く、出口まで大体吾が歩いて五十歩ほどはある。どこからか水が染み出ているのか、ぽたぽたと雫の音が繰り返し響いて聞こえる。岩でできているからか、元居た巣穴よりも地面がなかなか冷たく感じた。

 こんな所吾は知らないぞ。まさか、さらわれたのか?いや、そうだとしたら、なぜ吾がこんなほら穴に一匹だけなのだ。それに、いくら眠り込んでいても誰かに触られればさすがに目を覚ます。いくら吾でもそこまで間抜けになった覚えは無い。ならば、吾が自らここへ来て、それを忘れているということか。そんな訳が無い。それこそとんだ大間抜けだ。駄目だ。寝起きで頭が回らない。どうしたものか。


 あ。一つ心当たりがある。輪廻。

 あの優しそうな顔の坊主が言っていたあれだ。確かに、もうそろそろ吾は死ぬと思っていた。それで、一度死んでここに生まれ変わったんだ。半信半疑だったが、輪廻は本当だったのか。いや、そうだとしても吾に前世の記憶があることとか吾が子ぎつねでないことは説明がつかないな。まあいいか。考えるのが面倒になった。生まれ変わったことにしておこう。これは第二の生ということだ。どんな顔か知らないが、一応仏様に感謝はしておくか。

 考えるのを止め、外に出てみたくなって、吾はようやく寝そべっていた体を起こそうとした。その時だった。吾はやはりとんだ大間抜けなのだろう。やっと、最も肝心なことに気が付いた。


 人の手。吾の前足が、人の手になっていた。

「は?......うわっ!」

 吾は困惑して出した自分の声に驚いてまた声を出した。

 人の声。吾の鳴き声が、人の声になっていた。何事かと、起き上がって自分の体を見下ろした。

 吾の体は、人の体になっていた。見たところ女の子供で、ぼろっちい着物を身に着けている。

「えぇぇぇぇぇぇ!!!」

 なんで?!吾、人になっちゃった?......


......やったぁぁぁぁぁ!!!仏様ありがとう!!!

 これでやっと、人にも狐にも相容れない孤独な生活とおさらばできる!......なんていう考えはこの後すぐに瓦解した。

 狐の耳と狐の尻尾。馴染み深いこいつらが、ちゃんと吾の体に生えていた。

「えぇ...」

 弾んでいた気分は急降下した。なんだこれ。化け狐か?前世の姿は、まあ毛色は珍しいが一応ただの狐だったのに、もっとひどい化け物じゃないか。仏様はなんてことしてくれるんだ。しかも、吾のぼさぼさで長い髪の毛は子供のくせに真っ白で、それが余計に吾のかつての姿を思い起こさせた。それだけでなく、吾の足はやはり具合が悪く、歩くのに苦労する。最悪だ。顔も知らないが、仏様というのはきっと大馬鹿者なんだろう。


「はぁ...」

 自然とため息が出る。色々疲れて腹が減った。洞窟を出て食い物を探すとしよう。祠の側での生活では、人に見られるのが余り気持ち良いものでは無かった。だが何もせずとも飯は食えた。だが今はそうはいかない。待てど暮らせど腹はすくのみだ。

 洞窟は森の中にあって、外に出ると風で葉っぱがすれ合う音や小鳥のさえずりが聞こえる。食べられそうな木の実を探して歩いてゆく。いくら子供の姿といっても、背は前より高くなったわけだから景色が随分違って見える。新鮮で面白いな。あと、高い所にも手が届くから、食い物は楽々と集めることができた。

 洞窟へと戻る時に、小さな湖を見つけた。喉が渇いていたんだ、丁度いい、水を飲もう。そう思って水面を覗きこむと、白髪と狐耳付きの吾の顔がゆらゆらと映って見えた。

「おぉ~」

 吾は中々可愛い顔をしていた。顔が良いに越したことはない。大人まで育ったら、男を誑かしてただ飯食らうなんてお茶の子さいさいだろう。へへ。


 洞窟に帰って、飯を食って落ち着いたところで考える。

 さてこれからどうしたものか。森を出て人里に繰り出しても、化け物と恐れられるだろう。それどころか殺されるかもしれない。足の遅い吾は一瞬でやられるだろう。そもそも、森を出るにはどちらへ進めばいいのか分からない。却下だ。

 では、ずっとこの森で暮らすか。そうもいかない。今は秋だから食い物がたくさん手に入るが、冬には何も無くなる。狐の頃は僅かな食い物でなんとか耐え抜いたが、またそれができる自信は無い。いずれ、人の住むところに出ていって食い物を調達しなければならなくなるだろう。......やだな。

読んでくれてありがとう!

次回、化け狐ちゃんいきなりピンチです。お楽しみに~

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