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高位錬金術。

本日より『黒龍の里』編を始めます。よろしくです~<(_ _)>

 ジョニーは融真の攻撃を躱し、巧く転がって逃げた。融真の両腕から絶え間なく猛烈な熱気が放出されている。融真のスキル『メルトフィーバー』の効果だ。


 両腕だけから熱気が放出されているいうのに周囲の温度が上がってくるのが分かる。


「…全く、厄介なスキルだな…」


 地面を転がって逃げるジョニーが呟く。逃げるジョニーを追撃する融真。しかし、接近しようとした融真が突然、声を上げて身を翻した。


「…うォッ、オォォッ…!!」


 追撃しようとした融真の足を止めたのはジョニーのスキル『マリオネスブラッド』の硬化だ。小範囲で地面から鋭く赤黒い剣山が飛び出していた。


 次々と小範囲で融真を追うように剣山が飛び出す。それをジョニーと同じく転がって避けると剣山を殴りつける融真。瞬間、赤黒い剣山が溶けた。


 周囲に次々と飛び出す剣山を溶かしてジョニーに迫る融真。しかし、マリオネスブラッドの気化攻撃によってあと一歩のところで動けなくなった融真はがっくりと膝を付いた。


「そこまでじゃ!!お互いスキルを解除するでなっ!!」


 フィーちゃんの号令で、二人はスキルを解除する。今回の対戦はジョニー勝利で終わった。これで戦績は五分五分になったようだ。


 地球での父さんの葬式を終えて、館に戻ってきた俺達は対戦する二人を敷地の二段目の広場からそれを見ていた。同じく、クレア、キャサリン、クライ、キース、レイザ、アマナも見ている。


 キースによると一戦目は融真の熱波攻撃で融真の勝ち。二戦目は熱さでやられる前に硬化で足止めからの液化で融真が動けなくなりジョニーの勝ち。


 そこからお互いの攻撃を読み合い、お互い勝ちを取って二勝二敗になったようだ。ちょうど昼時と言う事もあり、治療と昼食の為にフィーちゃんと融真、ジョニーが上がってきた。


 融真とジョニーの治療を終わらせた俺達は館に戻って昼食にする。セーナさんもお休みの日だったので皆がいる時に父親が亡くなった事を話した。


「…旦那、残念だったな…」


 融真のお悔みに続き、皆がお悔やみを伝えてくれた。


「…人間いつかは死ぬからな。覚悟はしてたよ。ただ…」


 俺はスキルが不発に終わった事と地球でのスキル素粒子が足りなかった事を話した。


「…どんなに強くても肝心な時に大事な事を忘れてたら意味がない…父さんを助ける事が出来なかったのが少し辛いとこだ…」


 そう言いつつ、俺はセーナさんに奥さん役として一緒に来て貰った事へのお礼を伝えた。


「…セーナさん、ありがとうございました。父さんは気付いてたかもだけど、最後に嘘でも家族がいるって伝えられたから良かったです…」


 そう言いながら俺は頭を下げた。


「いえいえ、わたしも母さんを助けて頂いてますし、少しでもお役に立てたなら幸いですよ」

「そう言って頂けると助かります」


 しんみりした話はここまでにしておいて今後の予定について話し合う。融真とジョニー、キース達は格闘技や武術訓練と言う事で逸鉄に来て貰う予定だ。


 その辺りは既にウィルザーに話しているので近いうちに来てくれるだろう。融真もジョニーもざっくりだが限定的な範囲でスキルを発動できるようになっている。後は体術を覚えてスキルと連動させる事が出来れば更に強くなれるだろう。


 他のメンバーの戦闘訓練についてはフィーちゃんに任せればいいだろう。ついでにアマナ、レイザ、キャサリンにリックの訓練と世話も頼んだ。リックについては午前中のみ戦闘訓練、午後は休息時間と夕方にはレーナさん指導の下、食材の処理を覚えて貰う。


 その間に俺とエイムは青龍爺さんに会いに行かなければならない。それとは別に、リベルト、フラム、クレア、エイム、ティーちゃんとシーちゃん、椿姫と共に東鳳での大法要に参加する予定だ。


 その後はクレアの訓練状況にもよるが黒龍の里へ向かう事にした。


 セーナさんはいつも通り仕事に行って貰いつつ、レーナさんと共にラニエとシスター、孤児達を迎え入れる準備をして貰う。


 使用人、徒弟、料理人、庭師などは館の一段下にある宿舎を使って貰う。既に宿舎はオランデール伯爵が手配してくれた業者によって整備は終わっていた。


 取り敢えずの方針は決まったので翌日から各々、活動して貰う事にした。



 昼食の後、皆を訓練に送り出して俺達は館の地下二階にいた。俺とクレア、ティーちゃんとシーちゃん、リーちゃん、椿姫は館の地下二階で悩んでいた。


 鬼哭が消滅したせいなのか椿姫が『鬼椿』に戻れなくなってしまったのだ…。刀に戻れないと椿姫は移動出来ない。しかも更に困った事に椿姫自身の移動可能範囲がこの館とその周辺しかないという事だ。


 このままでは東鳳での大法要に連れて行く事が出来ない。皆で何とか解決法を探していたその時、地下二階フロアをトコトコ散策していたフラムを見守っていたリーちゃんがアッと声を上げた。


「ティーさまっ!!フラムですよ!!フラム!!」


 そう叫びながら飛んで来たリーちゃんの言葉に皆、疑問の表情だ。


「リーよ、もっと具体的に説明するのだ。『フラム』だけでは何も解らぬであろう?」


 クレアに突っ込まれたリーちゃんが改めて説明を始めた。


「フラムはアンソニーの身体の一部から生まれています。同じ方法で椿姫のホムンクルスを作ってそこに魂を定着させましょう。原理としてはフラムの時と同じです。妖精族の高位錬金術の技術なら出来ると思います」


 リーちゃんが提案したのは花の精霊フローレンスと同じ方式だ。椿姫の『器』となるホムンクルスを作り、そこに椿姫の魂を定着させるのだ。


「…ふむ。そうじゃな。その方法があったのぅ…。しかしホムンクルスを作る為には近しい人間、親族の細胞を培養する必要があるんじゃ」


 続けてティーちゃんが説明してくれた。


「より近い親族の細胞でホムンクルスを培養せんと魂が定着せんからのぅ」

「フラムはフローレンスが花の魂とその細胞をアンソニーに送り込んで生まれてましゅ。椿姫のホムンクルスはアマルのおじさんに髪の毛貰えば細胞を培養出来るんじゃないでしゅか?」

「そうだね。その方法で行けるならアマルさんの髪の毛かアマダ王の遺髪とかがあればベストじゃない?」

 

 俺の言葉にティーちゃんが頷く。


「そうじゃな。それがあれば一番じゃな。リベルトに確認を取って貰った方が良いじゃろう」


 と言う事で俺はすぐに東鳳に転移した。ちょうどヒスイ城の中でアマルとリベルトが話していたので椿姫のホムンクルスを作る件を話した。


「…ふむ、そう言う事ならば…」


 そう言うとアマルは懐を探り筆の先くらいの白い髪の束を取り出した。


「これは兄上がキヒダに毒殺された際、側にいたわたしが逃げる前に斬り落としたものです。これをお使い下さい。そして椿にお伝え下さい。再び、会えるのを待っていると…」

「…えぇ、必ず伝えますよ。では失礼します…」


 俺は遺髪をアイテムボックスに入れるとすぐに館に戻り、アマルからの伝言を椿姫に伝えた。


≪…わざわざありがとうごさいます。父上の遺髪があったのですね…?≫

「えぇ、アマルさんから預かってきました」


 俺はティーちゃんにアマダ王の遺髪を渡す。


「実父の遺髪があったか!!これならうまくいくじゃろ!!」

≪どうかよろしくお願いします!!≫


 椿姫がティーちゃんとシーちゃん、リーちゃんに頭を下げる。


「うむ、わたしらに任せるんじゃ」

「すぐに移動できるようにして上げましゅからね」


 そう言いつつ、シーちゃんが椿姫の足をぽんぽんする。その傍でティーちゃんが俺が出しっぱにしていた妖刀、鬼椿を拾い上げた。


「…次はこの刀じゃな」

「なんだ?ティーよ。もうその刀に力はないのであろう?どうするのだ?」


 地下二階を歩いて周るフラムに付いていたクレアがフラムを抱っこして戻ってくる。


「この刀にはまだ浮かばれない魂が(くすぶ)っておるんじゃ。魂を供養して改めて『名』を付けた方が良いじゃろう」


 ティーちゃんがそう言うので外に出て刀の中濃魂の供養をする事にした。


「ところでアーキンドー一家はどこにいるの?」


 俺が聞くと椿姫が答えてくれた。


 アーキンドー一家はただでここに住まわせて貰っているからと言う事で親子三人で館の敷地を見回っているそうだw


 どうやらこの前のランディの一件で不審者の侵入などを警戒しているらしい。不審者を発見次第、一家が視えるクライかアマナに連絡が行くようになっているようだ。


 まだ妖精達の不審者追い出しシステムが完成していないので助かるは助かるんだが…。


「別にそんな事、気にしなくていいのにw律儀な人達…いや、幽霊だなw」


 一家が何をしているのか分かったので俺達は上に戻り、外で刀に燻る魂の供養をする事にした。



 俺達は正門のすぐそばの庭にある噴水跡を使って供養する事にした。館の近くでやって火事になったら嫌だからねw


 その点、ここは石畳が多い。噴水跡を祭壇のように見立てて刀を置く。みんなが訓練を止めてなんだなんだと集まって来た。


「…旦那、何やってんだ?」


 一番近い場所でフィーちゃんと共に訓練していた融真とジョニーが寄ってくる。その後、俺達に気が付いて皆が集まった所で俺が説明した。


「皆、これから刀の供養するけど気にしないで訓練続けてくれ。ちょっと煙たくなるかもだけどw」


 俺の説明の間にティーちゃんとシーちゃん、リーちゃんが薪を取り出して組み上げて準備する。


「…刀を供養してどうするんだ?その刀、念でも籠ってるのか?」


 ジョニーに問われて今までの経緯を話した。


「…ふーん。それで供養するのか…それだとただの刀になっちまうんじゃねーか?」

「いや、供養した後に俺が改めて名前を付けるんだよ。俺、ネーミングセンス皆無だけどなw」


 俺の言葉に皆が笑う。そんな皆をフィーちゃんが追い立てる。


「ほれほれっ、おんしらは訓練の続きじゃ!!今度、魔界で武闘大会やるからの。おんしらもわっちがエントリーしといてやったでな?じゃからしっかり訓練するんじゃっ!!」


 フィーちゃんの言葉に皆、キョトンとする。


「えッ?ちびっこ魔皇…アタシらそんな事一言も聞いてないんスけどォ~…」


 キャサリンが呟くとフィーちゃんがジロリとキャサリンを見上げる。


「おんしらは『魔障気』を使えるようになったというだけじゃ。それを無意識に自在に使えるようにしなければ戦闘では使えんからの?」


 フィーちゃんの話に皆が目を合わせる。


「まぁ、良いんじゃないか?魔族と闘えば魔障気に付いてもより理解が進むかもしれないしな…」

「そうですね。自分の実力を知る為にも強い方達と闘うのは有意義かと思いますよ」


 キースの言葉に同調するクライ。


「アーッハッハーッ!!そうだな!!わたしも魔界大陸に興味があるからな!!わたしも共に行くぞ!!ちびっこ魔皇よ!!」


 皆で話していると突然、そこに逸鉄が現れた。

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