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ALC0296⇔私達、街中を聞き込みに回りました

 

 次の日の早朝、私達はまず『旅の話術士』についての聞き込みを開始した。


 一番新しい情報では、ここ《レイムドルグ》のカジノでの目撃情報がルーファスの元に届けられていたらしいのだが、それから既に数日が経過してしまっている。

 

 道化師のようなダボダボの派手な服に大きな帽子。

 背丈格好には特徴が見られないが、頬に大きな『傷』があるらしい。

 噂では凶悪なモンスターをテイムする時に傷つけられたと言われているが、詳細は不明。

 また彼が持っている『能力』も色々と噂はされているが、信憑性に欠ける物ばかりで何が真実なのかさえも分らない状況であるらしい。



「はぁ……。結構姿だけは見たことがあるっていう人達は多いんだけど、肝心な『行方』となると誰も『知らない』の一点張りなのね……」


 深く溜息を付きながら大通りの隅でしゃがみ込み、うな垂れる私。


「ああ。旅の話術士の野郎も目立った格好をしてやがるみたいだからな。なのに足取りを追おうとすると、忽然と姿を消しやがる……。今までも何度も良い所まで追い詰めたと思ったら、いつの間にか『痕跡』すらさっぱりと無くなってやがったし……」


 ゼギルが私の横で同じ様に屈みこみ文句を垂れる。


「……それもおかしな話よね。いくら他者を欺く事に慣れている奴だったとしても、『痕跡を無くす』って言うのは一体どういう事なのかしら」


 それではまるで『幽霊』ではないか。

 突然現れたかと思えば、すぐにその存在を消し、また別の所に現れる。

 そして目撃者は道化師の格好をした人物の事は覚えているが、足取りを知っている人物は一人もいない。


「そう言えば前回、レミルさんが同行した時も何だか良く分らない事を仰ってましたわね……。確か、旅の話術士を・・・・・・見失う直前の・・・・・・記憶がおかしい・・・・・・・、とかなんとか……」


 アーネルは店の前に置いてある小さな椅子に腰掛けそう話し出す。


「記憶がおかしい……?」


 なんだろう。一体どういう意味なのだろうか。

 何か記憶に働きかける魔法でも掛けられたのか?

 しかし話術士は魔法は使えなかった筈……。

 ならば何かのアイテムか?

 記憶に働きかけるアイテムなんてあったっけ……?


「まあ、取り敢えずルーファス様が町長から詳しい話を聞いて来るまでは、俺達は足を使って聞き込みを続けるしかねぇだろ。昼んなったら留守番してるケリーの分の食糧を買って行ってやって、飯を喰ったらまた計画を練るしかねぇんじゃねえか?」


 ゼギルが尻の埃を払いながらも立ち上がりそう言う。


「……まあ、確かにそれしか無いわね。もう一度街を隈無く探してみましょう。まだ見落としがあるかも知れないし」


 私も続いて立ち上がり、軽く腕や膝のスジを伸ばし柔軟する。

 意外に聞き込みってしんどいんだなぁ、と改めて感じる私。


「今度は市場の方面から聞いて回りましょうか。お昼前ですし、結構人がいるでしょうから」


 アーネルの提案に賛成した私達は大通りの東に位置する大きな市場へと向う。





◆◇◆◇





 しばらくしルーファスが町長の元から戻り、一旦宿に引き上げた私達。


「くっそぅ……収穫ゼロじゃないのよ……。もう足がぱんぱーん」


 そのままベッドへとダイブする私。


「おつかれさま、さなえ。ぼくが、あしをもんでやる」


 くまごろうと一緒に留守番をしていたケリーがうつ伏せになった私の上に乗り、ふくらはぎをマッサージしてくれる。


「う……おお! ケリー君上手! うわ、超気持ち良い……」


 程良い力でパンパンになったふくらはぎを揉んでくれるケリー。

 こいつぁ、良い旦那様になるぞ。


「はは、疲れただろう、サナエ。悪かったね。聞き込みの方に協力して貰っちゃって」


 両手に資料をどっさりと抱え込んだルーファスが爽やかにそう言った。


「うわ、何その資料の山は……」


 テーブルに所狭しと置かれた資料の山。

 アーネルは邪魔にならない様に、皆の分の珈琲を淹れている最中だ。


「ああ、全て『旅の話術士』に関する資料さ。目撃証言から今までに奴が関わってきたであろう事件やその危険性に関する考察、この国だけじゃない、全世界規模での奴に関する情報だ」


 そのうちの一つを広げるルーファス。


「例えばこれだ。奴は世界中の国からマークされていた危険人物だったのに、四大伯爵家は完全に奴の事はノーマークだった・・・・・・・・。おかしいとは思わないかい? 既にハクナ族が我々の国に移民して来た時には旅の話術士は世界的にも有名な人物だったんだよ。なのに僕達はそのことに・・・・・気付く事も無く・・・・・・・彼の嘘の通訳を・・・・・・・そのまま丸飲みし・・・・・・・・ハクナ族を・・・・・迫害し続けた・・・・・・」 


 ルーファスが私に示した一枚の紙は『世界政府公認』のマークがついている手配書だった。

 要は『旅の話術士』は『世界的犯罪者』だという事なのだろう。

 確かにそれだけの有名人がふらっと私達の街に現れ、ハクナ族の通訳を買って出、しかもその契約の場に居合わせた四大伯爵家が誰もその事に・・・・・・気付かなかった・・・・・・・というのはおかしな話だ。


「でも『話術士』っていう職業は皆、口が上手く回る職業の人達なんでしょう? 上手い事誘導させて、自分の正体を隠し、交渉する事くらいなら出来るんじゃないのかしら」


 様々な言語を使いこなす職業であるなら、言葉のマジックを上手く使い人を騙す事も容易いのでは無いかと推察した私だったが……。


「それは僕も考えたさ。しかし奴の場合はそれでは説明がつかない事・・・・・・・・を山の様にやってのけているんだ。それがこれら『資料の山』さ」


 今にも崩れそうな山を指しながらそう言うルーファス。

 でも何かが引っ掛かる私。


(……この異世界の人間には説明がつかない事・・・・・・・・……。それってまるで……)


 そう。

 それらはまさしく今の私と同じ現象とも言えるのだ。

 『医療』と『薬剤』について、この世界で『説明がつく』人物は私しか存在しない。

 ならば『旅の話術士』がしている事は……?


 一つ一つがパズルのピースの様に繋がって行く。


 何故、奴はハクナ族が飢えている事を街の住人に知られないという『自信』があったのか。

 何故、奴は幽霊の様に神出鬼没で行方を眩ませる事に長けているのか。

 何故、奴を寸前まで追い詰めると直前の記憶が曖昧になるのか。

 何故、奴は世界政府に追われる身でありながら、四大伯爵家に自身の正体を隠し通す事が出来たのか。


(……まさか……そんな事って……)


 私の脳裏に一つの『可能性』が浮かぶ。

 しかし『それ』ならば全ての説明がつく。

 

 

 そして、もし『そう』だとしたならば――。




 ――『奴』に私の存在が・・・・・気付かれたら・・・・・・容赦無く私を・・・・・・殺しに掛かって・・・・・・・来るのだろう・・・・・・



















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