アースドラゴン
「ココとリズはハーピィの相手を、フローラとフィオナはあたしとアースドラゴンを倒すよ」
「「「「了解!」」」」
クーリカは怒り心頭のアースドラゴンを見て、また魔人族の女が召喚したハーピィを見て指示を出した。
「ココ、リズ。あの魔物は強い、無理するんじゃないよ」
「わかってるにゃん!」
「(こくこく)」
ココもリズもアースドラゴンの相手は無理でもハーピィ相手に遅れは取らない。例え強化されていようと簡単に負けはしないし負けるつもりもない。
役に立たないとフラストレーションを溜め込んでた2人はやる気満々でハーピィに向かって行った。
「フィオナ!?」
「あ?」
ドッゴーン!!!
油断のし過ぎである。フィオナは容赦なくアースドラゴンに叩きつけられ壁に吹っ飛ばされた。
即死である。
普通なら、だが。
「オラーッ! いってーな! ん? あれ?痛くない?」
瓦礫の下敷きになったフィオナが豪快に瓦礫を吹き飛ばしながら立ち上がる。アースドラゴンの突進を喰らいながらもメイド服には汚れ一つなくフィオナの身体には軽い切り傷があるだけだった。
「大丈夫なのフィオナ!?」
慌ててフィオナに駆け寄るフローラとアースドラゴンと対峙するクーリカ。
「ああ? なんか平気だ。これがメイド服の効果?」
よく見れば切り傷が自然治癒ではあり得ない速度で後一つ残さず治っていく。明らかに異常な光景だった。
「え? まじ?」
「まじなようね」
クーリカもフィオナが無事だった事を確認して胸を撫で下ろす。そして同時に自分達の主人に深く心酔する。これ程高価なマジックアイテムを簡単に自分達に託して頂けた事を、そしてそれに応える為に全力で尽くす事を再度深く認識した。
異常種。それもアースドラゴンが異常種となればその脅威は計り知れない。
ドラゴン自体人間が手を出していい存在ではないのだ。生物としての格が違うのだ。
まともにぶつかって戦えるのはAランククラスの冒険者の実力を持つ者ぐらいだろう。
その点で言えばアイン達はその実力を備えていたと言える。これがアースドラゴンでなかったならまだ戦い様はあっただろう。如何に身体能力が上がろうとアイン達の攻撃は通った筈だからだ。
しかしながらアースドラゴンは別だった。このドラゴンは硬い以外にこれといって特徴の無い至って無害な魔物なのだ。Aランク指定されているのは戦えば危険度はAランクは有ると言う事なのだが基本的に温和な性格の魔物故に一部の素材が欲しいとかの依頼でしかまず討伐依頼は出る事がない。
空も飛べない、ブレスも吐けない、ないない尽くしのドラゴンだがその鱗は硬い。それはもう本当に硬い。
硬さだけならSクラスの魔物なのだ。
それだけのドラゴンが異常種として進化された。特化した長所は更に強化されたのだ。硬さだけならSSクラスと言えるかも知らない絶対強度を誇る化物だ。最早聖剣を抜かなければ傷ひとつつける事叶わない鉄壁の鎧を纏うドラゴンを誰が倒せると言うのか。
だが今回ばかりは相性が悪過ぎた。相手は聖剣に匹敵する武器を当たり前の様に持っていたからだ。
「オラッ!」
ブシュッー!!!
「グオォォォッ!!」
「ハァッ!」
ブッシュー!!!
「グオォォォォォォッ!?」
「セイッ!」
ブッシュッシュッー!!!
「グオォォォォォォォォンッ!?」
自らが誇った鉄壁の守りとは何だったのか?
硬い筈の鱗がバターの様に切り裂かれ涙目状態のアースドラゴンに出来る事など元から腕を振り回すか体当たりくらいしか無いのだ。圧倒的な体格差と硬さが武器で有るにもかかわらず長所が一切通用しない相手をあてがわれてアースドラゴンに出来る事は悲鳴をあげて逃げる事だけだった。
勿論やる気満々でご主人様にいい所を見せる為に気合を入れてるクーリカ達がこれ程わかりやすい功績を持った獲物を逃す筈も無い。
「こいつ鈍臭いしデカイだけだな。鱗だって柔らかいし」
グガァッ!?
「そうね、大きいだけのトカゲで助かったわ」
グアァッ!?
「さっさと調理するぞ。ゴブリン以下のドラゴンに手を焼いていたらご主人様に怒られてしまう」
グガァ!? ・・・ゥ・・・ァ・・・
「もう、嫌なこと思い出させないでよクーリカ」
「そうだぜ、まぁご主人様はカッコよかったけどな」
「ええ、だって私のご主人様だもの」
グ・・ァ・・・。
フローラ達の惚気を聴きながら全く相手にもされずに息を引き取ったアースドラゴンは各種素材とお肉を落としてこの世を去る事になった。
「ドロップ回収っと」
仲間達の命の掛かった状況で呑気にアイテムを回収する暇なぞ普通は無いのだがドラゴンのドロップは冒険者に取って魅力的過ぎた。まだリョウに価値観を完全に破壊されてない状態のクーリカ達は天秤にかけるでもなく貴重な時間を消費していたのだ。
しかしそれも仕方ないと言える。目の前に金貨何千枚の価値のあるものがあれば拾うのが世の常であろう。
頭の中ではご主人様になでなでしてもらえるとむふふな妄想を膨らませていた。
そんな時
「ぐあっ!?」
「「「!?」」」
ビクンッ!?
獣耳娘達の獣耳が捉えたのは仲間の冒険者のリーダー達だった。どうやら状況は随分切羽詰まった状態のようだ。
「ココとリズは?」
居た。まだ戦ってる。だが状況はヤバそうだ。
「フローラ、フィオナ。助けに行くよ!」
「「了解!」」
そしてブルーフォレストは颯爽と駆け付けて現れた。魔人族の女の目の前に。




