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屋敷のメイド娘たち2

 イヴside




 ん〜、眠いよぅ〜。


 昨日は遅くなったもんなぁ。ナニをしてたとか言わないよ?


 でもそれは私だけでなく横に並ぶシャルロッテさんやセリーナさん、セレーナさんとサラも同じだ。昨日はずっと一緒にいたからね。でもなんでリアさんはなんともないの?あの人はよく分からない。


「みなさん、良いですね。メイドたる者常にお淑やかで上品な振る舞いを心掛けなさい、寝不足で目にクマを作るなど以ての外です」


 うるさいよぅ、昨日1番盛り上がってたのあんたじゃんか、このドスケベメイドめ。


 私が小声で言うとみんなうんうんと頷いてた。みんな考える事は一緒だね。


 朝礼を終えて直ぐに厨房に入る、今日は私とサラの当番だ。いつ何処を任されても構わないようにという心構えから、私達メイドはローテーションを組んで毎日違う作業を行なっている。


 リョウ様が食べるんだしとっても美味しいご飯を作らなくちゃ。朝から旦那様にご飯を作るって、なんか新婚さんみたい。えへへ〜。


「ちょっとイヴ、あんた何へらへら笑ってんのよ」


「だってリョウ様にご飯作るのってなんだか新婚さんみたいでしょ?」


「いや、ただの給仕だから。妻じゃないから、そして私のご主人様だから」


 もぅ、サラは絶対引かないからなぁ。何がご主人様よ、私の旦那様なのに。(妄想だけどさ)


 でもご主人様かぁ、私もリョウ様のメイドになってご主人様って呼んだら昨日のフィア様みたいになるのかな。えへへ〜。


「もうそれはいいから、早くしないと時間が無くなるわよ」


「はーい」


 私は気を取り直してリョウ様の為に料理を作っていった。愛情たっぷり注いじゃえ〜。


 昨夜からの出来事でテンションの高いイヴであった。







 リョウ様方が食事を終えてお茶の時間。私達は後ろに侍っていた。屋敷のメイドとしていつでも指示に対応出来るように、とは建前でリョウ様の近くにいたいだけだ。当然皆んなも一緒にいる。


「へぇ、王子様と親友くんね。〜若いな、それでその強さか」


 話題は王都のSランクパーティーであるアレックス殿下とその親友のディック・カーマイン、カーマイン子爵の長子だ。私も伯爵家の娘だし2人にも一度は会った事がある。


 殿下は聡明な方だし、カーマインさんは少し暑苦しい感じかな。でも目の奥が()()()()()()()()みたいな雰囲気?自信?みたいなのがあったんだよね。顔は良いけど私は断然リョウ様が大好きだ。


「まぁ1週間もあればダンジョンは攻略出来るだろうしな」


 え? ダンジョンを1週間で攻略!?


 リョウ様からとんでもない発言が飛び出した。そもそもダンジョンって深い階層は攻略されてないよね?


 一度潜ればまた来た道を戻らなきゃいけないのがダンジョンだ。つまり行きと帰りで何日もかかる為その間の食料や物資を持って活動する必要があるのだ。そしてダンジョンの階層はもしかしたら100層を超えるかもしれないとまで言われている。普通に考えるなら不可能だろう。


 そもそもSランクパーティーである殿下ですら3年掛けて40層までしか進んでいない。未知の領域である1階層を攻略するのがどれ程大変か判ると言うものだ。


 私は素直に凄いと思った。だって本当の事なんだから。その証拠にリョウ様は普段となにも変わらない気負いもない口調で当たり前の事を当たり前に言ってるだけなんだもん。


 出来て当たり前。フィア様達も当然という風でリョウ様の発言を聞いている。


 だけど納得のいかない人がここにはいたようだ。


「恐れ入りますがリョウ様、貴方はリュードのダンジョンを1週間で攻略すると言うのですか?」


 執事のミスマルさんだ。この人は真面目が取り柄だからなぁ。


 でもなんで分かんないかな?リョウ様なら絶対出来るんだよ。なんて思うのは惚れた弱みかなぁ、なんて。えへへ〜。


 真面目なのは良いと思うよ、でもこの後ミスマルさんは信じられない事を口にしたんだ。


「リョウ様、そんな出鱈目を仰るとは。冗談にしてもたちが悪いですよ。私も侯爵閣下からこの屋敷でのお嬢様の生活を任された身、貴方はお嬢様に悪影響を与えます。即刻この屋敷を出て行きなさい!」


 ちょっとこの人何言ってんの!?


「ミスマル! 貴方は何を言ってるんですか!」


 お嬢様! ミスマルさんにもっと言ってあげて下さい!


「お嬢様は騙されているんです。さっきから聞いていればお嬢様を呼び捨てにして、尚且つありもしない出鱈目を吹き込みお嬢様をダンジョンに連れて行こうとするなんて考えられません!」


 なんて失礼な奴! ミスマルさんがこんな人だなんて知らなかったよ。もう絶対口なんて聞いてやるもんか。


「ミスマル、貴様死ぬか?」


 ほら、シェリーさんも怒って殺気を振り撒いてる。メス犬は主人思いなんだからね!


「シェリーさん迄彼の味方をするのですか、信じられません」


 こっちが信じられないよ。


「いい加減にしなさい!ミスマルさん、貴方は何を言ってるんですか!」


 リアさん!流石我らがメイド長、私達の声を伝えて下さい!


「リアさん?」


「貴方誰に言っているのか分かっているのですか! ここはもういいですから貴方がさっさと出て行きなさい! 戻って来なくても結構です!」


 よく言った! 流石メイド長だよ、ただのドスケベメイドじゃないんだよ。


 私達はうんうん頷いてミスマルさんを冷めた目で見た。自分が言った事を自覚してもらわないとね。


 その後お嬢様にもお叱りを受けて、流石に落ち込んだようだが当然の事だ。大いに反省して貰いたい。


 だけどリョウ様は自分があんな言い方をされて責められてるのに、ミスマルさんを庇ってお嬢様を宥めるなんて優し過ぎます。


 ううん、リョウ様はミスマルさんの事なんてなんとも思ってないんだ。何を言われても揺らがない絶対の自信がリョウ様にはあるんだ。


 ああ、素敵過ぎます、流石私の旦那様です!


 ますます惚れちゃったよ、もぅ早くリョウ様の物になりたいよぅ。








 夕方、厨房に入りサラと一緒に夕食の準備を始めたらフィア様達が入って来ました。フィア様がいるって事はリョウ様も帰って来たのかな。


「サラさん、イヴさん、本日は旦那様がドロップしたドラゴン肉を私達で調理したいのですが場所を貸して貰えますか」


 うん? そりゃ場所くらい幾らでも貸すけど、ドラゴン肉?


 ・・え?


 ドラゴン!?


「ドラゴンのお肉ですか!?」


 サラも驚いてるよ、ドラゴン肉ってなんなの!?もしかしてドラゴン倒しちゃったの!?


「はい、ダンジョンでブラックドラゴンからドロップしました、極上肉を超える究極肉です。旦那様が皆さんにもご一緒にと仰いましたので本日はサラさん達も一緒の席での食事になるかと思います」


 いやいやならないよ!そりゃ私も伯爵家の娘だけどここでは使用人だからね、一緒に食べられる訳無いじゃん!?


 って本当にドラゴン倒しちゃったの!?


「そうなのですか?」


 いやいやサラ、あんたも分かってるでしょ。


「はい、旦那様が言えばそうなります」


「ご主人様は是非皆さんにもと仰っていましたから遠慮しないで下さいね」


 フィア様とミィ様から宣言されてしまった。


 え? ほんとに?


「それでは私達もお手伝いさせて頂いて宜しいでしょうか」


 サラは本当に上手いよね。まぁ私も一応貴族のお嬢様だからそれくらい出来るけどさ。


「そうですね、それではこちらの指示に従って頂けるならお願いします」


「わかりました」


 と言う事で、フィア様が取り出したのは巨大な肉の塊。「ブラックドラゴンの肉(究極肉)」だ。


 とんでもなく大きいよ! 重さが100キロもあるみたい。でもこれは、凄く美味しそうだよ。見た目でわかるもん。ほら、サシのきめ細やかさと鮮やかさが違うもん。半分は赤身肉の様だけどこれ、絶対美味しい奴だよね。極上肉の上を行くよこれは。


 まさか自分がお肉で興奮するなんて思わなかったよ、サラもテンション上がってるし。


 私とサラは興奮しながらフィア様達の指示通りに動き、調理のお手伝いをした。


 側で見てるとわかるけどフィア様達の調理スキルはプロ以上の腕前だよね、私達もそれなりだと思ってたのに子供と大人くらいの差があるもん。本当にリョウ様のメイドさん達は完璧超人だよね。それにスタイルも良いし顔も可愛いしで私達の立場がないよ。


 ミィ様なんて私と身長がたいして変わらないのになんでそんなに大きいの!?


 不公平だよぅ!


 うぅ〜


 地味にダメージをくらいながら私とサラはドラゴン肉という高級貴重食材の調理を手伝ったのだった。







 食事の準備が終わる頃にエミリアさんという方が丁度屋敷に来ました。


 どうやらリョウ様が呼んだみたいで美人さんだ。冒険者ギルドの職員さんみたいでフィア様の元後輩らしく仲が良い様子なんだけど、言葉がふにゃっとしていて見た目とイメージが違うのが変に違和感を感じる人だ。フィア様の言葉は少し強めでなんか警戒してるようだけどどうしたのかな。


 リョウさんとお嬢様を呼んで食事会となったんだけど、セリーナさんとセレーナさん、そしてシャルロッテさんの様子がおかしい。


「みんなどうしたの?」


 私が問いかけるとセリーナさんとセレーナさんがうっとりした様子で言う。


「玄関でリョウのをお迎えしたら頭を撫でて頂いたんです」


「はい、とっても気持ち良かったです」


「「!」」


 私とサラはどうして私じゃないの!と悔し涙を流す。続けてシャルロッテさんがリョウ様と2人でお茶を楽しんだと嬉しそうに話すのだ。またもやずるい〜、と膝から崩れ落ちる。


「うぅ〜ずるいよ〜」


「みっともないわよイヴ。次は私達の番なんだから」


 直ぐに立ち直りサラは励ましてくれた。そうだ、私達はフィア様と一緒に調理したんだ。リョウ様が喜んでくれたら褒めてくれるかも!



 そしてリョウ様やお嬢様と一緒の席に着き(ミスマルさんもいるよ、口は聞かないけど)リョウ様の声でドラゴンのお肉を手に取った。


「んっ〜〜〜!?」


 びっくりだよ!


 目が開き言葉が出ない程の美味しさ!


 凄い!


 凄いよ、ドラゴンのお肉っ!


 私は伯爵家の出で、いつも高価な物を食べてる訳じゃないけど極上肉を食べる機会は何度かあった。


 でも!


 こんなに美味しいお肉は初めてだよ!


 サラ達も言葉がないみたい。そうだよね、これは私達が口に出来るようなお肉じゃないもん。


 王様に献上したら爵位や領地も簡単に貰えちゃうよ。


 あれ程リョウ様を警戒していたミスマルさんも取り憑かれたようにドラゴン肉を口に運んでいる。だって凄く美味しいもん。


 これでリョウ様が本当の事を言ってるって分かったでしょ。


 でもリョウ様に謝るまで許さないんだから。



 山盛りに用意されたドラゴン肉のフルコースは全て私達の胃袋に簡単に処理されてしまった。


 もう幸せで夢心地だよ。


 あれ、でもフィア様達はそんなに食べてなかったような?


 もしかして私達が夢中になって食べ過ぎちゃった!?


 焦った私はフィア様に訊ねるとフィア様は笑顔で答えてくれた。


「充分頂きましたよ。それに余り食べ過ぎると夜のお勤めに影響が出ますから」


 その言葉に私は愕然とする。後ろで気になって耳を傾けてるみんなも同じだ。


 そんな!?


 こんなに美味しい物を食べて自我を失わないどころかリョウ様の事を考えてたなんて。


 これがリョウ様のメイドなんだ。


 私達はリョウ様の事が大好きだけど、まだ自分の事しか考えてなかった。


 でもフィア様達は違う。


 フィア様達はリョウ様が何処でも一番なんだ。常にどんな時でもリョウ様の期待に応えられるのがリョウ様のメイドなんだ。


 私はリョウ様がエミリアさんを連れて行くのを悔し涙を流しながら見送った。


 そして決心したんだ。私もフィア様を見習って本物のメイドになろうって。次はきっと私の番かも知れないから。





 勿論その後はみんなで様子を見に行ったよ?


 いつ呼ばれてもいい様に侍ってるのがメイドの勤めだもん!


 私も早く呼ばれたいよぅ!



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