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第200話 封印された事件

「開いてるよ」 


 めんどくさそうに叫ぶ嵯峨の言葉を聞くと扉が開いた。そこには噂のアメリアの他にかなめとカウラ、そして誠が神妙な表情で立っていた。


「遠くにいても始まらないでしょ。こっち来て良いよ」

 

 入り口で黙って歩哨の真似事をしている技術部員を白い目で見ながら誠達は部屋に通された。


「お疲れ様だね。例の犯人の身柄の確保。結果オーライと言うところか?」 


 嵯峨はそう言ってにんまりと笑った。


「はあ、申し訳ありません」 


 片腕を落とされ腹に七発の銃弾を受けて義体を駄目にしたかなめが渋々頭を下げた。


「それにしてもアメリアまだまだだな。しばらくはここの隊長の椅子には俺が座ることになるわけだ……ああ、面倒くさいねえ」


 椅子に座った嵯峨の見上げる挑戦的な視線にアメリアは余裕の笑みを浮かべた。 


「どうもすみません」 


「分かってるならいいオマエさんのやる気が重要だ。行けるか?」 


 嵯峨の言葉に部屋の中の人々の視線がアメリアに集中する。アメリアは照れたように自分の頬を右手でつつきながら嵯峨を見つめていた。


「できる限りがんばります」 


 カウラは自分の判断の甘さを認識して唇を噛みしめながらそう口にした。


「まあいい返事だ。できないことはやっぱりできないからな」 


 アメリアの答えに満足したように嵯峨が笑った。


「それでさ……今回の件は無かったことになったから」


 嵯峨はまるで何事も無かったかのようにとんでもないことを口にした。


「無かったこと?」


 嵯峨の思いもかけない言葉にカウラが凍り付いた。


「そう……今回の事件……報道されてないじゃん……上の連中は他者の能力を自在に扱える法術師の存在は隠しときたいらしいんだ」


 明らかに上の決定には面白くは思っていない。嵯峨の表情はそのことを示していた。


「隠すだ?何のために!」


 そう言うとかなめは机をたたいた。机に積もっていた埃が舞い、誠は思わずむせかえった。


「そう言うなよ……他者の能力を自在に操れる法術師の存在は俺も知らなかったんだ……不死人以上にレアなスキルだ……それに外交が絡んでくるとなると……」


 頭を掻きながら嵯峨はそう答えた。


「圧力がかかったんですか?地球圏から」


 とぼけた調子の嵯峨にアメリアがいつもには無いまじめな表情でそう尋ねた。


「そう、外交圧力。地球圏最強の国家アメリカ相手に同盟機構もビビっちゃってるの。あそこと手を組むのも敵に回すのも地獄を見るのは目に見えてるんだから当然の事でしょ?」


 平然とそう言う嵯峨の目がいつもの『駄目人間』のぼんやりとした目から怒りに震える男の目に変わっていることを誠は見逃さなかった。



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