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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 低殺傷兵器  作者: 橋本 直
第四十九章 意味を持つようになった鍛錬
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第197話 寮生全員の鍛錬

「なんですか……寮の全員ですか?」


 いつも出勤時にはジャージを着ることにしている誠である。おかげで二度手間にはならなくて済むがこの夜明け直後の早朝からのランニングにつきあわされるとは思っていなかったのでただ呆然とやる気をみなぎらせているかなめを見つめるだけだった。 


「これから忙しくなった時を考えたら当然だろ?法術がらみとなれば茜の法術特捜や県警の法術部隊じゃ遅すぎることは分かったんだから」 


 かなめは格好だけはジャージを着ているが、彼女が走ることは誠も想像はしていなかった。


「でもかなめちゃん。それと私達の早朝強制ランニングと何か関係があるわけ?」 


 アメリアは相変わらず不満そうにつぶやいた。隣のカウラはかなめがマメに非番の隊員までたたき起こしたことに呆れるように静かに番茶を啜っていた。


「なんでもそうだが体力が重要だぞ。今回の事件で分かったろ?」


 かなめはそう言って得意げに自分の思い付きを自慢して見せた。 


「誰かはかませ犬になって蜂の巣にされたもんね」 


 皮肉たっぷりにアメリアはそう言ってかなめをにらみつける。


「アメリア……死にたいか?そんなに……」 


 かなめはそう言うとアメリアにとびかかった。


「苦しいわよ!かなめちゃん!」 


 かなめは口答えをするアメリアの首を握って振り回した。その様子に苦笑いを浮かべながら厨房から菰田が顔をのぞかせた。


「簡単なものしかありませんけど。豆のスープと黒パン。そしてベーコン」 


 菰田は明らかにカウラに向けてだけそう言った。


「それだけありゃ十分だ。とっとと食うぞ」 


 かなめはそう言うと先頭に立って朝食を乗せるトレーに手を伸ばした。


「朝食!」 


 さっと飛び上がりアメリアがかなめからトレーを奪った。そして何事も無かったようにお玉を手にした菰田の前に立った。


「テメエ……」 


 かなめは反撃の機会をうかがっていたアメリアの奇襲に明らかに不満そうにそう言った。


「ぼんやりしているからでしょ?この前だって簡単に片腕斬られて腹に銃弾を受けて……」


 アメリアは早速ベーコンを口に運びながらそう言った。 


「オメエなら大丈夫とでも言うつもりか?」 


 箸をおいて明らかに頭に来たという表情のかなめがアメリアに反撃した。


「そこまで言うつもりは無いわよ……でも今も現にこうしてトレーを奪われたわけだし」 


 アメリアの言葉にかなめ言葉を飲んだ。その様子を見ながら笑顔のカウラが一番早く菰田達から朝食をトレーに受けて一番手前のテーブルに着いた。


「カウラちゃん贔屓してもらってよかったわね」


 アメリアは皮肉のつもりでそう言った。 


「早く食べろ。ランニングをするなら食べてしばらくは動かない方が良いんだろ?」 


 菰田の事は眼中に無いカウラは、平然と食を進めた。かなめとアメリアは顔を見合わせると並んでいた島田達整備班員ににらみを利かせてそのまま割り込んだ。


「神前!オメエも早く食え」 


 かなめの言葉に苦笑いを浮かべると誠はそのまま列に並ばされた。


「でも……ランニングから帰ってから食事の方が良いんじゃないの、ホントは」 


 アメリアの何気ない言葉にかなめの頬がぴくりと震えた。


「考えてなかったみたいだな……」 


 カウラは呆れたような顔をしてかなめを見つめた。


「一応俺達は生身なんで……食べてすぐに運動すると腹痛を起こすかも知れませんよ」 


 カウラと島田の言葉が呆然と立ち尽くすかなめに止めを刺した。


「うるせえ!朝食は大事だ!後で出勤の準備の時間が無くなると困るだろ?」


 相変わらずかなめの言うことは無茶苦茶だった。


「言い訳ですね」 


 かなめの理屈をそう切って捨てると菰田はさっさと黒パンを口に投げ入れた。それを見ながらアメリアは何事も無かったかのようにカウラの隣に座って食べ始めた。


「早くしなさいよ。冷めちゃうわよ」 


 アメリアのちゃっかりした態度に切れそうになるかなめを見ながら誠も彼女の正面に座ってスープをすすることになった。


「なんでこんな事に……」 


 誠の愚痴にただカウラとアメリアは苦笑いで答えることしかできなかった。



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