第190話 一人前になった誠
「ここで僕の能力をハッキングしたらさらに公務執行妨害がつくぞ」
言い切った誠の言葉に水島は諦めたようにうなだれた。
「神前!応援が到着した!」
背後でカウラが叫んでいた。アメリアも満面の笑みで誠を見つめていた。
「あちらも済んだのか……まあ『廃帝』もあなたの身柄が我々の手に落ちれば引くしか無いわけだけどね」
そうつぶやくと誠はただ呆然と立ち尽くした。
「水島。この馬鹿野郎!かけさせやがって!……といつもなら貴様を半殺しにする隊員の西園寺は今は休眠中だ。貴様ついているな」
カウラはそう言うと手錠を掛けようとしたがすでに誠がそれを済ませているのを見て驚いた表情で誠を見つめた。水島は手を差し出したアメリアに引き起こされながらただ誠を見つめていた。
「あんたさえいなければこんな事にはならなかったんだ……」
誠の顔を見上げた水島の目は憤怒に満ちあふれていた。だが誠にその怒りにいい訳をする気力は無かった。それ以前に不意に訪れた眠気が誠を襲った。サイボーグのチタン製の頭蓋骨に突き立てられた刀に手を伸ばそうとするがその手は意識のコントロールを失ってそのまま空を切った。
「神前!」
カウラの声が耳の奥で遠くに聞こえるように感じながら誠は意識を失っていった。
「大丈夫ですよカウラさん。いつもの事ですから……」
誠は力を使った反動のもたらす眠気に打ち勝とうとなんとか抵抗してみたがそれは難しかった。
「誠ちゃん。立派になったわね……静かに眠りなさい」
アメリアのそんな言葉を聞きながら誠は深い眠りの中へと堕ちていった。