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第187話 斃されたサイボーグ

「正面!こちらの場所を特定された!警戒!」


 カウラはそう言いながら銃を構えて周りを見回した。誠もまたカウラの隣でショットガンを構えた。まるでこちらを分断しようとするように一発一発、別の場所からの発砲が続いた。


「痛てえ!」 


 ドアの下。腹部を押さえてかなめが叫んだ。


「当たり前でしょ!こっちに這ってきなさいよ!」 


 アメリアが叫びつつ銃口の光を目印に銃を三発打ち込んだ。北川の銃はサタデーナイトスペシャル呼ばわりされている最低最悪のリボルバーである。弾を撃ち尽くしてとりあえず引いたようで着弾した感触は無かった。


 しかし、その時廊下の奥の黒い塊の方で金属パイプが落ちるような音が響いた。


『銃だ!銃だ!』 


 誠が凝視するとその黒い塊はベッドのクッション部分を積み重ねたもののように見えた。そしてその影で人影のようなものが動いているのが誠にも見えた。


「見つけたぞ。神前、西園寺を何とかしろ!」 


 カウラの言葉に誠は干渉空間を展開した。そしてそのまま床に転がってわめいているかなめに向かった。


 銀色の光の板。誠が作り出した干渉空間に向けて先ほどのベッドの後ろからの三発の銃弾が着弾した。


「カウラさん!拳銃じゃ無理ですよ!」 


 正確な射撃。距離と三発の射撃間隔を計れば銃が苦手な誠でもそれがサブマシンガン以上の火力の火器のものだと言うことはわかる。カウラは誠が言葉をかけるまでもなく、消火栓の影に身を沈めてベッドの向こうのサイボーグだという水島の護衛の射撃に備えていた。


「済まねえ……しくじった!」 


 かなめは腹部から血を流していた。誠はただかなめを守りたい一心で干渉空間を展開し続けた。


「神前……力はとっておくもんだぞ……人斬りが出て来たときに……力がでないとそれこそ洒落に……」 


 かなめはそれだけ言うと動きを止めた。


「嘘……嘘ですよね!」 


 誠は展開していた干渉空間を収束させるとそのまま目を閉じたままのかなめの頬を叩いた。反応は無い。胸を触ってみた。心臓は動いていない。涙が自然にあふれてきた。どうして良いか分からなくなる。明らかにかなめは機能を止めていた。


 そのまま片膝を付いていた姿勢からよろよろと誠は立ち上がった。


「カウラさん……西園寺さんが……」


 無防備に立ち尽くす誠を見てカウラの表情が怒りに震えたものへと瞬時に変わった。 


「馬鹿!脳内の血液損失を防ぐ為に仮死状態になっただけだ!さっさと引きずって来い!」 


 ベッドの裏からまた正確な牽制射撃が二発カウラの手前のコンクリートブロックにはじけた。


 誠はカウラの言葉でようやく我に返り、そのまま干渉空間を展開しながらかなめを引きずり始めた。


 二発銃弾が誠の展開する干渉空間に吸収された時にベッドの裏の敵の動きが止まった。


『相手はベテランだ。テメエの能力が予想以上だってことで弾を節約し始めてやがる』 


 誠がいつもこういう時に付けている感応式通信機にかなめの声が響いた。


「西園寺さん!」 


 耳の通信端末から響くかなめの声に誠は思わず手を止めた。


『さっきは勝手に人を死体扱いしやがって!とっとと運べよ』


 かなめの顔自体は生体機能をオフにしているのでまったくの無表情だが、心の中では笑っているに違いないと誠は思った。 


「早くしろ!北川達も目標を見つけたんだ。動き出すぞ!」 


 カウラが壁際で叫んだ。誠は必死になって動くことの無いかなめの体を引きずって行った。


「いい様ね、かなめちゃん」


 背後の警戒から帰ってきたアメリアがかなめの足を持って誠を手伝った。 


『ぶっ殺す!後で……』 


 身体は動けない割にかなめは雄弁だった。


「威勢は良いのねえ……動けないくせに」


 当然そこでいつも通りのツッコミをアメリアが入れる。


『やっぱりぶっ殺す』 


 動けないかなめの通信に背後を警戒していたアメリアが絡んだ。だがそこに背後からの銃弾が届いてきた。


「来ちゃったわよ!北川と例の人斬り」 


 アメリアは牽制射撃で何とか時間を稼ごうとした。カウラのところまでたどり着けないと悟った誠とアメリアはそのまま手前の病室に入ろうと扉を蹴破った。


 パイプ椅子が乱雑に置かれた部屋がそこにあった。カウラもまた水島をかばうサイボーグの的確な射撃に押されて誠達と合流すべく部屋に駆け込んできた。


「ここでなんとかあの連中がつぶし合うのを……」 


 アメリアがそう言った時、かなめを置いた壁の隣にあったパイプ椅子が半分になった。部屋のあちこちに干渉空間が展開される。


「北川の狙いはこちらか……終わりかもな」 


 カウラのつぶやきがむなしく響いた。それを聞いた時誠の中で何かがはじけた。



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