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第174話 再会と逃走

 東豊川を流れるゆたか川の下流へ向かう堤防沿いの道をヘッドライトを灯したカウラの『スカイラインGTR』が走っていた。


「ラーナ。間違いはねえんだな?」 


 かなめは通信端末に映ったラーナのそばかす顔を見ながらそう言った。


『はい、反応は旧東豊川病院跡で途切れたっす。再びの法術発動の気配はないっすからから……』 


 ショットガンを肩に担ぐようにしてかなめは狭いカウラの車の後部座席にふんぞり返っていた。誠は身を小さくしてショットガンに何度となく頭をぶつけながら黙って座っていた。


「かなめちゃん。もう少し詰めてあげてよ。誠ちゃんが苦しそうじゃない」


 助手席でゆったりと座っているアメリアはそう言ってかなめの方を振り向いてきた。 


「は?いいんだよ。これで少しは体がやわらかくなるだろ?こいつにはもう少し柔軟性が必要なんだ。このくらいのことには耐えてもらわねえとな」 


 かなめは当然のような顔をして屁理屈をこねる。誠は苦笑いを浮かべながらかなめの言葉にうなずいていた。


「それより……間に合うのか?水島とか言うおっさんが人斬りに真っ二つにされた状態で見つかっても事件は解決したことにはならねえぞ」 


 かなめは人斬りが水島を斬ることを予想していた。


「間に合わせてみせるさ」 


 かなめの疑いを愚問だと言うようにカウラは何もない堤防沿いの道に車を走らせた。フロントガラスには近辺の地図とラーナから送られてきている法術反応のデータが表示されていた。


「廃病院で鬼ごっこ。こりゃあ楽しくなりそうだ」 


 かなめは戦闘の前の凶暴な瞳を誠に向けてきた。


「不謹慎ね、かなめちゃんは」


 アメリアはすっかり銃を撃つ気満々のかなめに声をかけてきた。


「そう言うオメエも顔がニヤけてるぜ。戦闘用の人造人間の闘争本能でも出てきたのか?」 


 そう言うアメリアの顔にも笑顔が浮かんでいた。


「まあ否定はしないわよ。でもまあ……辻斬りの犯人に茜ちゃんより先にお目にかかれるとは……運がい良いのか悪いのか……」 


 振り向いたアメリアの目がぎらぎらと光るのが誠の目からも見て取れた。


「あのー。嵯峨警部は?」 


 誠の言葉ににんまりと笑うかなめがいた。その姿に誠の背筋が凍りついた。それは戦闘狂モードのかなめの顔だった。


「ラーナの奴が連絡済だ。今のところアイツが動いた気配が無いところから見てアタシ等が本当に例の辻斬りかどうか確認するまで動けない状況なんだろ」 


 かなめの脳内に茜から連絡があったらしい。


「まーそれは残念。みんなまとめて捕まえちゃいましょうよ」 


 能天気にアメリアはそう言って腰の銃に手をやった。


「クラウゼ。気軽に言うものだな」 


 カウラは軽口を言うアメリアを口ではたしなめていた。だがそのバックミラーに映る彼女の顔は楽しいことが待っているとでも言うように微笑みに満ちていた。誠はそんな雰囲気に飲まれないようにと唇を噛み締めて銃を握り締めた。


 急カーブを切った『スカイラインGTR』の中で誠は思いきり顔面をショットガンに打ち付けた。


 そして車は急に停まった。川べりに立つ巨大な廃墟が見えた。こんなところがあったのかと地元出身ではない誠は度肝を抜かれた。



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