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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 低殺傷兵器  作者: 橋本 直
第三十八章 ようやく見つかった目撃者
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第164話 急展開する事件

「取れたっす!取れたっすよ!ついに取れたっす!」 


 誠よりも二つ年下の割にはいつも落ち着き払っているラーナの歓喜の声に一気に部屋の緊張が高まった。


「なんだ?何が取れたんだ?」 


 まるで子供のようにモニターを指差すラーナにかなめが驚いて声を掛ける。その表情が眠そうな気配を一気に消し飛ばしてシリアスなものに変わると部屋の空気が一変した。


「元旦の東宮神社の放火!目撃証言が取れたんすよ!確かにその時に水島は現場にいたそうっす!」


 そばかすの目立つかをを輝かせてラーナは誠達を見回した。


「一件だけか?偶然と言われたらおしまいだぞ」 


 待ちかねていた事実だがカウラはまだ冷静を装っていた。だがラーナの言葉は続く。


「それだけじゃ無いんす!豊川市での最初の自転車の転倒事件の現場、次の北川町でのぼや騒ぎ、そして駅前の殺傷事件の現場でも……」 


「それどこの証言よ?それだけ証拠が揃ってれば東都警察が動いてるでしょ?」 


 アメリアのたしなめる声もラーナの笑みを止めることはできない。


「同盟司法局法術特捜を舐めてもらっては困るっす!この情報は司法局の独自捜査で東都警察も千要県警も知っちゃいねえっす!情報ソースは秘匿事項なので明かせませんが目撃者の身元は確かっす。裁判での証言の約束も取れるっす!」 


 ラーナは得意げに胸を張った。カウラとアメリアはただ呆然と新事実に目を見張るばかりだった。ただかなめだけは一人うなずいて納得が言ったような表情を浮かべていた。


「西園寺さん……?」 


 煙草の箱をポケットにしまったかなめの顔には戦場に向う時の惨忍な笑みが浮かんでいた。


「なあに、情報収集を行う必要のある機関はどこでも独自の情報ルートは持ってるものだ。まあ……茜が一から作ったにしては準備が良すぎるから叔父貴のコネクションからの情報だろうな。なら精度は確かだ」 


 かなめの一言がただ立ち尽くしていたカウラとアメリアの目に生気を戻した。二人は顔を見合わせてとりあえず椅子に座った。


「これで引っ張れるぞ……どうする?」 


「待ちなさいよかなめちゃん。情報が確かで起訴して勝てるのは分かっていても……逮捕令状は?裁判所の命令書は?」 


 アメリアも興奮しながらも必死に落ち着こうとしていた。その声はいつもの余裕のある彼女らしくもなく上ずっていた。アメリアの珍しい鋭い目つきに刺激されるようにラーナのキーボードを叩く速度が加速した。


「地裁には嵯峨警部の顔が利きますから……なんとかうちにも令状がとれるとおもうっす」


 ラーナは確信を込めた調子でそう言い切った。 


「頼むぞ茜、希望の星だよ……これでこの退屈な蟄居部屋ともおさらばだ!」 


 満面の笑みで叫ぶかなめにさすがに不謹慎だと言うようにカウラが白い目を向けているのがおかしくて誠はつい噴出していた。


「そうだな……これで我々の勝ちだ」 


 これまでは黙っていたものの豊川署のやり方に我慢ならならなかった。そんな気持ちがありありと分かるような薄ら笑いを浮かべながらカウラはラーナの手つきを眺めた。


 誠は自分には少しばかり女性恐怖症の気があるのではないか。その顔を見て背筋が寒くなる自分を感じながらそんなことを考えていた。



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