第152話 ターゲットが絞れてきて
「いつ見つかってもおかしくないんすから。皆さんも十分注意お願いするっす」
今日も今日とて豊川署の元物置だった部屋である。ラーナの言葉を待たずに誠達はそれぞれの端末にかじりついて警邏隊が車に積んでいるアストラルゲージの検索結果に目を通していた。
「言われるまでもねえよ」
そう言うとかなめは首のジャックに端末のコードを接続していた。
「退屈よね……今日あたり見つかってくれないかしら」
アメリアには他に言うことが無かった。
「言うことはそれだけか。無駄口を叩いている暇が有ったら計器に集中しろ」
不機嫌そうに流し目を向けてくるアメリアにカウラは厳しい視線を送った。誠は苦笑いを浮かべながら目の前のモニターに目を向けていた。平坦なグラフが見えた。時々跳ね上がる数値に驚いて以前の事件の際のデータを引っ張り出すが、すぐにゲージは穏やかに下がってしまう。
「意外と法術師って多いのね。東和は法術適正検査を義務化したほうが良いんじゃないの?」
アメリアの言葉にカウラがため息をつく。誠もただ引きつった笑みを浮かべるだけだった。
「法術検査を受けるかどうかは東和では個人の意思っすから。同盟も東和への内政干渉はできなっすよ」
同盟機構の原則は他国への内政不干渉である。ラーナはその原則を口にした。
「同盟は内政干渉は行わないか……まあ理屈では分かるんだけど面倒くさい原則よね」
ラーナの弱った顔に満足したようにうなずいたアメリアはそのまま画面へと視線を戻した。
「見つかるものなら早く見つかるといいな」
首筋に刺したジャックをさすりながらかなめがそう言った。
「西園寺も良いことを言うもんだな」
かなめもカウラも昨日一日同じことをしていたのを思い出したかのようにうんざりした表情を浮かべていた。
「無駄口を叩くんじゃないわよ」
アメリアが珍しく画面に意識を集中して仕事をしていた。
「一番叩きそうな奴に言われたくねえよ」
アメリアもすでに飽きていた。人造人間とサイボーグ。どちらも忍耐力は通常の人間よりも有るはずなのに明らかにその限界は近くまで来ていることを知って誠はただ苦笑いを浮かべるだけだった。
「神前、飽きねえか?」
一人黙々と画面を見つめている誠に向けてかなめがそう言った。
「これも仕事ですから」
真面目な誠は生返事をするだけで画面から目を離そうとしない。
「ふーん」
まじめにモニターを見つめている誠の言葉にとげのある表情を浮かべながら再びかなめの視線はモニターに向かった。
「また反応だ……どうせまた外れだろ」
かなめは嫌な顔をしながら脳内に展開するデータの照合を行う。
「ちゃんとチェックしろよ」
カウラの声にかなめはうんざりしたような表情を浮かべた。
「隊長命令か……ちょっと待て!」
かなめが突然立ち上がった。その叫びに全員が立ち上がり彼女のモニターに目をやる。時々数値が跳ね上がった。特徴的なアストラルパターンがそこに表示されていた。