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第144話 低威力の法術師

「低威力で高精度の兵器みたいなもんだからな、今回の法術師は。法術師のいない地域ではまるで役に立たないんだから地球での勢力争いに夢中な連中にはリスクに見合う見返りは無いだろうからな。そうなると食いつくのは遼州での活動を優位に進めたい『廃帝』と東モスレムのイスラム過激派連中……それに遼州圏の覇権を握りたいゲルパルトのネオナチくらいのものか?いや、いまだに遼州圏に領土的野心を隠さない米帝あたりが絡んでいても不思議は無いか」 


 そう言いながらかなめは後部座席の自分の隣に誠を無理矢理引きずり込んだ。


「まあ遼州での利権獲得を目指す国なら手を出すんじゃないのか?」 


 カウラの言葉にかなめはしばらく考え込む。


「いっそのこと杉田のじいさんにどこの国が動いているか教えてもらうか?土下座でもすれば教えてくれるかもしれねえぞ」


 冗談めかしてかなめはそう言った。


「馬鹿なことを言うな。車を出すぞ」 


 いつの間にか覚えたカウラの苦笑いが誠の目に飛び込んでくる。ヘッドライトに照らされた駐車場。車は静かに走り始めた。


「サスが厳しいセッティングだな。ケツがいてーや。西園寺。いつもの奴は無しにしろよ。今は非常時だ」 


 ランはいつもはアメリアが座る助手席からかなめに声をかけた。


「なんだよいつものって……」 


 かなめに小さな体をよじってランがにらみつけて来る。呆然と誠は二人を見つめていた。


「神前のビールにウィスキーを突っ込んだりすることだ」 


 ランはきっぱりとそう言い切った。そうなると必ず全裸になる誠は顔を真っ赤にして俯いた。


「ウィスキー?アタシはウィスキーは飲まないぞ」 


 かなめはとぼけてそう言った。


「洋酒は全部ウィスキーなんだ!アタシがそう決めた!上司の言うことは絶対!それが社会の常識だ!」 


 ランは無茶苦茶な理屈でそう叫んだ。飲むと暴れる、脱ぐ、そして吐く。誠の酒癖の悪さは有名だった。当然かなめは面白がって遠慮しながら飲む誠のコップに細工をする。そして出来上がった誠は何度となく全裸で寝ているところを目撃されていた。


「僕もお願いしたいんですが……さすがにいつ出動がかかるか分からないので今日はそれはまずいんじゃないかと」


 誠はこの本来は持ち場を離れるべきでない時期に飲みに行く違和感からなんとか離れようとそう言った。 


「何が?」 


 かなめは相変わらずとぼけていた。カウラは苦笑いを浮かべながら大通りへと車を進める。次第に冬の空は黒味を帯びて町を闇へと導いた。


「なんだか不気味な感じがしないか?この街全体が今日はおかしな感じだ」


 いつもは科学信奉者のカウラがそんなことを口にした。 


「なんだよカウラ。ずいぶん感傷的な物言いじゃねえか。オメエも少しは進歩したんだな」 


 かなめは冷やかすようにカウラに口を出す。


「そりゃーねーぜ、西園寺。ラスト・バタリオンにも心がある。アメリアを見てみろ!あんなAI未だに開発されてねーぞ!まーあんなにサボったりふざけたりするAIなんて開発されてもすぐに消去されるだろうけどな」 


 人造人間の話題が出るたびに嫌な顔をするランが振り返る。かなめは隣で小さくなっている誠を突付きながら苦笑いを浮かべていた。


「でもこの街に例の犯人がいるんだ。しかも誰にも知られず次の悪戯を準備している……」 


 誠はカウラが言うように今日の街はおかしな雰囲気があるような気がしてきた。


「悪戯?そんな簡単なものかよ……人が一人死んでるんだぜ。悪戯なんて言う生易しいもんじゃねえ」


 かなめは街の雰囲気より事件の本質に関心が有る様だった。 


「簡単に感じる人種もいるんだろーな。それに人が死んだのは事故程度に感じているんだろうな、今回の犯人は。今回の犯人には確たる思想は無い。私はそう踏んでいる」 


 加速する『『スカイラインGTR』』の中でランは真剣な表情を浮かべてそうつぶやいていた。



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