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第130話 レアな法術師の末路

「僕の行動はすべてお見通しという訳か……弁解するだけ無駄か」 


 キャシーの登場で水島は自分が丸裸にされた事実を認識した。


『そうですわね』 


 突然頭の中に介入してきた思考に水島は驚いて手にしていた本を落とした。すぐ拾い上げながらもその目は口を閉じている少女に向かっていた。


『あなたにはもう選択の余地は無いんです。分かりますか?あなたはすでに人を一人殺している。この国の法律では殺人の最大量刑は死刑です。そのことは法律を勉強なさっている以上ご存じですよね?』 


 キャシーの目は冷たく水島を見つめていた。はじめてみる感情の死んだような女性の目に水島はただ呆然と座り込んだ。誰もが奇異の目で見るが立ち上がる気力は沸いてこなかった。


『演操系の法術は使用するタイミングによっては前回の様な悲劇につながります。きちっとした訓練とそれを行なえる組織。それが今のあなたには必要なんです。幸いあなたはその組織である合衆国と接点を持つことが出来た。ならばあなたはその幸運を手放すのは愚かなことだと理解すべきです』 


 キャシーは口も開かず視線を水島に定めたまま彼の脳裏に向けて語りかけてきた。


「米軍につけと言うのか?」 


 ようやく言葉を搾り出した水島を断罪するようにキャシーがうなずいた。だが水島は彼女が明らかに不自然な存在だと言うことに気づいていた。それは隣でガムを噛むクリタ少年にも言えた。


『実験動物にされる……ごめんだよそんなのは』 


 もう何を隠しても仕方がない。水島は諦めて米軍に付かない最大の理由を送った。


『何度も言っているではないですか。あなたには選択の余地は無い……まあ考える時間は必要かもしれませんが』 


 それだけ脳に直接語りかけたキャシーは足早に図書館の外へと続く廊下を歩いていた。そのぶっきらぼうな態度に辟易したような表情を浮かべた後、クリタ少年はにんまりと笑ってそのまま少女の後に続いた。


 気を締めていなければそのまましゃがみ込んでしまうところだった。水島は気を取り直して落ちたバッグにキャシーから渡されたノートなどを入れて一息ついた。誰も水島が恐怖に震えるような脅迫を受けていたことなど想像もできないと言う表情で人々は通り過ぎていった。


『米軍でモルモットになるか……東和で犯罪者になるか……』 


 自分が後戻りできないところに来ていることにようやく水島は気づいていた。そしてアメリカ軍以外にも自分の存在が知られているのかもしれないと想像した。


『米軍が監視してくれているなら安心だな。とりあえず考える時間はくれたわけだ。その間にどう言う要求をしてくるのか確認するのも悪くない』 


 そう思いなおして水島はそのまま荷物が手に図書館の自習室に向けて歩き始めた。



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