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第102話 わがままを言う姫

「ええ、まあ……軽くですけど」


 ラーナは照れながらそう言った。 


「食べたのならいいけどな。神前。アタシはおやつが食べたい。なんとかしろ」 


 突然のかなめの一言。誠は先週整備班の新人が買ってきた(げっ)(ぺい)が厨房の冷蔵庫にあることを思い出して立ち上がった。


「ああ、誠ちゃん私のも!」 


 アメリアも叫ぶ。誠はそのまま厨房に飛び込んだ。


 食事当番の管理部の面々が冷たい視線で大きな業務用冷蔵庫に飛びつく誠を迎えた。


「相手が女性ばかりで……うらやましいねえ」 


 洗い場で背中を向けている菰田の言葉に肝を冷やしながら誠は月餅を取り出すとそのままカウンターに走った。先ほど慌ててかなめが湯飲みを返したことと、カウラの湯飲みが無いことを思い出した誠はそれをトレーに乗せると急ぎ足でかなめ達の所に辿り着いた。


「ご苦労」 


「ありがとうな」


 当然のことのようにかなめは受け取った。カウラはすぐさまポットに手を伸ばした。


「本当に……神前曹長、いつもお疲れさまっす」 


 そんなラーナの気遣いの言葉を聞いて誠は苦笑いを浮かべた。


「いつものことですから」 


「そうだな、いつものことだ」 


 かなめはそう言うとうまそうに月餅を口に運んだ。


「そう言えば機動隊のパスでサーバーにアクセスするんだよな。機動隊の部隊長権限でどこまで入れるんだ?」 


 カウラにポットから番茶を注いでもらったものに手を伸ばしながらかなめがつぶやいた。


「まあ現場の責任者クラスとなると捜査権限も限られてくるでしょうからある程度限定されるでしょうね……でもねえ。かなめちゃん。何の為にかなめちゃんがいるのよ。そういう時は……強引にね」 


 アメリアは恐ろしいことを平然と言ってかなめに目を向けた。


「おい、アメリア。アタシを犯罪者にしたいのか?それにアタシはハッキングはあまり得意じゃねえんだ。まあ、生身のテメエ等と比べたら比じゃねえのは事実だけどさ」 


 アメリアの明らかにハッキングしろと言う態度に苦笑いを浮かべるかなめ。だが冷たくなった番茶を啜りながら誠はどうせ証拠が見つかるまで止めてもかなめがやたらとアクセスする光景を予想して苦笑いを浮かべた。


「じゃあ、皆さんいいっすか?」 


「茶ぐらい飲ませろよ」 


 月餅を頬張りながらかなめがつぶやいた。アメリアはそれを見て呆れたように大きくため息をついた。


「なんだよその態度。潰すぞこのアマ」 


 アメリアとかなめの掛け合い漫才を見ながら仕方が無いと言うように笑うカウラと誠は立ち上がった。かなめも湯飲みを置くとそのまま静かに立ちあがった。


「神前、かたしておけよ」 


 かなめはそういい残してラーナ達と一緒に食堂を出て行った。置き去りにされた誠は厨房の当番の同僚達から冷ややかな視線を浴びながら仕方なく湯飲みを手に洗いものの棚に運んだ。



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