咲耶と仕事に夢中の2人組
「クルード、石の砕き具合はこのくらいでよろしいですかな?」
少し離れた場所でお互いの仕事をしていたクルードとカンザール。
自分の役割である「黒曜石を砕く作業」をやっていたカンザールだが、少し不安になりクルードの助言を求めてきた。
「んーー、ああっ、大丈夫じゃ。拳くらいの大きな石を、庭の掘った底の部分に満遍なく敷き詰めるんじゃ。その上から一層土を被せ、一旦作業を止める。その後は……」
「咲耶様のお力添えをお願いするのですな」
クルードのイメージが分かったカンザールは、黒曜石を砕く作業を続ける。
だが、簡単に砕くと言っても、ドワーフの様に力がある訳ではないエルフのカンザール。そこはクルードのとっておきの小道具で砕く事が出来た。まあ、あまり力を入れすぎると、粉々になってしまうという難点がある代物だが、軽く叩いて割る作業であれば、今のカンザールには宝刀に匹敵する道具であった。
「よしよし、黒曜石の方も大分増えてきたようじゃな。ワシの方も急いで作ってしまわんとな。何のために彼奴らに急ぎで黒曜石を取りに行かせたのだ?と、文句を言われかねん」
クルードは体に似合わない素早い動きで、積み上げられたレンガの山と巨大なプランター予定地を行ったり来たりしては、丁寧な仕事をしつつも素早く外枠を組み上げてゆく。
レンガ同士の接着剤替わりを天馬の里で貰い受ける事ができ、地球のセメントを使わずに出来るとクルードは喜んでいた。
この世界ではただの道端に生えている名もない雑草のようだが、クルードにとっては酒に匹敵ーいや、酒が一番、鉱石が二倍、三番目くらいにはしても良い位の嬉しい出会いだった。
ハンマーと蚤を器用に使いレンガを敷き詰めては貰った植物の液剤を塗りレンガ同士を積み重ねる。
上から軽く叩いて空気を抜き、自分自身よりも高い壁を築いてゆく。
一面ずつ積み重ねる作業は、朝からぶっ通しで行われた。朝食をとりにこない事に不審に思ったクロガネからお小言を言われたが、今の2人には些細な事であった。
早く外枠と底になる部分の黒曜石を準備し終えなければ、植樹や植物を育てる事が遅れ、延いてはこの街の食糧事情の改善が遅れることとなるのだ。
「師匠。俺も手伝うよ?」
「いや、お前は樹々を育てる事に集中してくれ。幼い苗をいきなり植えると、予測出来ない事態を引き起こすかもしれん。それに、いまの内から樹々と親睦を深め、こんな風に育っていけと念じてゆけば、それに近い樹となるのだろう。お前の頑張りに掛かっている、頼んだぞドゥーロ」
「わかったよ、師匠」
今朝交わした会話を思い出し、一心不乱に黒曜石を砕くカンザールだった。




