咲耶とクロガネと料理
「クロガネはん、今から言う事を頭に入れておきーや。 まあ、簡単やから失敗とか……焦がすお人も多少はいるらしいけど、クロガネはんなら大丈夫やろ。」
材料を次々集めながら、クロガネに料理の手ほどきをする狐の子。
「まず、パンを漬ける液やけど、卵・牛乳だけなんやけど、蜂蜜を入れたりするのも有りやな。で、液に厚めに切ったパンを浸しておいて、熱したフライパンにバターを少し溶かし、卵液に浸しておいたパンを両面に少し焦げ目がつくくらいに焼いたらできあがりや! どうや、簡単やろ?」
材料を集めながらの料理の手ほどき。だが、普段から料理をやり慣れていないクロガネには、多少の心配があるのも事実。以前、こっそりと料理の練習をしていた時、誤って鍋を焦がして肉料理を駄目にした苦い思い出があるのだ。そのせいからか、多少の弱気発言をしてしまう。
「この料理は本当に簡単なんですよね?」
「大丈夫って、しんなら弱火でじっくりと焼けばいいんや。最初から強火とかしたら失敗してしまうかもしれんよ。まあ、そんなに心配なら、ここで練習していく?」
「良いのですか? そうしてもらえると私も助かります。」
渡りに船とはこの事だろう。狐の子の提案に、直ぐに飛び付いた。
「でもクロガネはん。上手く作れるようになりたいのはこの料理だけやの? カザミにいみたいに上手に作れる方がカッコいいをやないん?」
「それが一番なんですがねぇ……」
どこか遠くを見つめるクロガネ。自分自身も上手くなりたいと思ってはいるが、人それぞれ得意不得意というものがある。
料理はクロガネにとって、不得意であった。
「ならウチが教えてもいいわ。まあ、お代は高うなるやろうけど。どうする?」
「あなたはカザミから色々教わっていたんでしたね。」
クロガネは自身との葛藤の末に、その申し出を受ける事にした。
「カザミの縁者に教わるのは、良い気はしませんが、背に腹は変えられません。お願いしてもよろしいですか?」
「流石クロガネはん。話が分かるお人や」
そう言って狐の子は、自分の要求をクロガネに伝えるのだった。




