第二十七話
朝食を終え、着替える二人を横目に家の縁側へと出てみた。空を見てみると昨日とは一転して生憎の曇り空。でも逆に猫探しをする上では都合がいいかもしれない。
「あ、そうそう」
さっきまでのラフな短パンから細身のジーパンに履き替えながら凛さんは口を開き、途中裾を踏んで転びそうになっていた。
「おっと」
「うわっ、履いてからでいいですよ。」
「サンキュー、ごめんごめん。」
肩を貸してあげて履き終えると凛さんは話を続けた。
「今日明ちゃんだけど、ちょっと来れなくなった。少し熱が出たみたい。まぁ、本人は行くって言って無理やり親御さんが寝かしつけたみたいだけどね。さっき電話があった。」
「熱はひどいんですか?」
「いや微熱みたいだけどまだ小さいからそんなに無理はさせられないからね。」
「そう…ですね。」
「まぁ、後から病院に連れて行くって言ってたからそんなに心配しなくて大丈夫だと思うよ。」
「………」
ずっと一緒にいたのに気づいてあげられなかったな。よくよく考えれば明ちゃんはまだ七歳だ。ミイのことを考えて必死で探すうちに本人が考える以上に身体は無理をしていたに違いない。
そんなことを考えていると千尋ちゃんが肩をトントンとしてきた。私が叩かれた方を振り向くと何かが頬に当たった。どうやらそれは千尋ちゃんの指のようだ。
「むぐっ?!」
「気にすんな。」
「へ?」
「自分のせいだと思っちゃだめ。それを言うなら一緒にいた私達にも責任あるんだからさ。」
「え?」
「どうせそんなこと考えてたんでしょ?」
「…ありがとう千尋ちゃん。私そんなに顔にでてた?」
「うん、バレバレ。ですよね?」
「ま、そういうこと。第一雨音がそんなに悩んでたら雇用者の私は立場ないしね。」
そう言って凛さんと千尋ちゃんは笑ってくれた。
「…絶対に見つけましょうね。」
「おうよ!」
そう言って私達はハイタッチを交わした。
「じゃあそろそろ行こうか。」
「あ、ちょっと待ってください。」
そう言う千尋ちゃんはスウェットに片足突っ込んだままだった。
「…ちひろー、話ながら着替えるということが君には出来ないのかね?」
「まあまあいいじゃないですか。私、なかなかいいこと言ってたでしょ?」
「はいはい、この間にも着替える。」
「うーい。」
そんな二人の様子を私はほほえましく眺めていた。




