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相棒と出撃と賞賛

「っと、俺は朱渇(あかがわ)紅惔(こうや)、いつか一番のパイロットになる男だぜ!」

少年は腕を組み、胸を張っていう。

橙の髪に紅い瞳、頭にはゴーグルをつけ、だらしなく前を開けた軍服をまとい、サンダルを履いている。

「私はシエル・グランブルーヴォラティルだよ、えっと…コーヤ君?」

自己紹介をして、言いにくい少年の名前を呼ぶシエル。

恐らく紅惔は東側の出身なのだろう、西側生まれのシエルには発音が難しい。

「違う違う、こ・う・や、ほれ!」

「こ、コーヤ?」

しどろもどろになりながらもう一度シエルは言う。

結局同じで、流石に紅惔もあきらめたようだ。「…もうそれでいいよ」とため息をつく。

「ところでお前、夢とかないの?俺みたいにさ!」

コーヤは無垢な笑みでシエルに聞く。

その問いにシエルは戸惑い、少し焦る。

「笑ってもいいよ…鳥になること、それだけ」

複雑な笑みを浮かべ、シエルはか細く答える。

だが、返ってきた言葉は彼女が思っていたものと違った。

「へぇ、面白い夢だな!どっちが先か競争だ!」

真剣な眼差しで答えるコーヤ。

「え?・・・わらわ、ないの…?」

ずっと皆に馬鹿にされ続け、けなされてきた夢が、受け入れられた事実に。

だが事実とは思えないほどの事実に、ただ呆気にとられた。

「?なんでだよ、なんか変な夢か?」

首を傾げ、不思議そうに聞くコーヤ。

もはやおかしく思えてきたシエルは口元に指をあて、くすっと笑った。

その様子を見て、コーヤもはははッと笑った。

だが、そんな和んだ場はサイレンとともに終わりを迎えた。

ウゥ~~…という危険を知らせるサイレンが鳴り響き、シエルたちは身構えた。

『東の空から敵機51機襲来、クロウレイヴン隊は皆出撃しろ』

ノイズとともに、無線機からヴァッサの声が聞こえてくる。

そして二人はほぼ同時に駈け出した。


格納庫から次々に黒い機体が飛んでいく。

クロウレイヴン隊には36機所属しており、そのうち6機、3ペアずつで次々に出撃する。

そして最後の隊、6班にシエルはいた。

合図と同時に、6機が動き出す。

どんどん加速していき、上昇する機体。

「…!いた!」

黄色の派手な機体、計9機を発見する。

そして相手の機銃が火を噴き、隣の黒い機体をかすめる。

それを幕切りに、シエルは急旋回しながら相手の搭乗席めがけて機銃から二発玉を打つ。

見事に弾が当たり、黄色い機体は煙をあげながら下へと落ちていく。

(まず、1機…!)

重力に耐えて歯を食いしばりながら、すぐ隣にいた機体をにらむ。

レバーを強く握る手に汗がにじんで、湿っている。

照準器で相手を狙う、少し反射して見える私の目はまるで獲物を狙う鷹のようだった。

がっと力強くレバーを引き、弾を発射する。

これもまた見事に相手の右翼に直撃、更に落下先にいたもう1機にあたって2機撃墜。

だが機体の後ろから、弾が飛んできた。

他の5機はそれぞれ1機ずつ相手に交戦している、つまり後ろには1機しかいない。

「なら…!」

速度を下げ、機体を上昇させる。

そして空中で1回転し、相手のがら空きの背中に爆撃をお見舞いする。

火を噴き海へ落ちていく相手、そして大きな水しぶきを上げ、見えなくなった。

『全機の撃墜を確認、総員帰還せよ』

ノイズが混じりながら、無線機からヴァッサの声が聞こえる。

終わったことに安堵しながら、ほかの5機と合流する。


班ごとに6列別れて並び、敬礼する。

「よし、全員帰還できたようだな、よかった・・・では解散」

皆別れて、それぞれ行動し始める。

外にさっさと出て行ったり、自分の機体を確認したり、皆それぞれだった。

「シエル、お前すげぇじゃん!」

後ろから急に声をかけられ、びっくりするシエル。

声を発した主は後ろに並んでいたコーヤだった。

「そ、そうかな…」

照れながら頬を指でかくシエル。

「いや、ほんと凄いよ!」

またもや後ろから声をかけられる。

声をかけたのは同じ班のハイル・ワースクレピスだった。

ひょろっとした黒髪の少年で、眼鏡をかけており、コーヤとは正反対の印象だった。

気が付くといつの間にか同じ班の皆に囲まれていた。

「べ、別にあれぐらいできるでしょ?」

照れながら冷たい態度をとるハイルのペアの金髪の少女、ニエナ・カインド。

「「え~、凄いと思うけどなぁ」」

それを聞いて同時に喋る二人の少年、双子のラース・ガンティングと弟、ハース。

どちらも小柄だが、ラースは紫髪、ハースは緑髪だった。

「い、いや、本当そんなんじゃないよ、ヴァッサさんとかすごいじゃない?」

頭をぶんぶんと振って否定するシエル、そう、彼女にとっては何の造作もない事だ。

かなり経験を積んだパイロットしかできないような急旋回中の爆撃が造作もない事なのだ。

だがやまない賞賛。いや、それが普通なのだが。

「と、とにかく、早くご飯食べようよ、ね?じゃあ、お先に!」

賞賛の嵐に耐えきれなくなったシエルは、その場から逃げだした。


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